アメリカ政府の債務上限問題や金融不安問題によって大きく値を下げていたドルが、ここ最近は強烈な高値になっています。ご存知のようにドル価格と金価格は大きく相関しており、金の投資家にとってはドルの強さは気になるところでしょう。
この記事の要約
今回の記事では、毎度のことであるが金相場の基本の「キ」、金の価格構成要因から説明。
その価格構成要因とはすなわち、
【1】ドル
【2】金利
【3】GDP(国内総生産)
+需給
であり、今回は【1】ドルの要因に関して。
ドル価格、すなわち「ドル×金利」で成り立つドルインデックスが2022年10月を境に、ドル優先の上昇から金利中心の下落に変化。
そして現状、金利の上昇によってドルインデックスが上昇している。
これは、6月1日に迫るアメリカ政府の債務上限問題に端を発していることは言うまでもない。
つまり、今後のドルは債務上限問題の成り行き次第。
この点を踏まえた上で、ドルの見通しを考えていきましょう。
ドル価格と構成要因

ドル価格の主な構成要因は何かといえば、「雇用」になります。
雇用が良ければドルは強くなり、悪ければドルは弱くなるのが基本です。
そして、私たちが普段見慣れているドル価格は、ドルインデックスという指数で示されます。
これはドル単体の価格ではなく、「ドルインデックス=ドル×金利」であり、同時に「雇用×金利」という意味も成り立ちます。
大事なことは、ドル単体の価格を示すものはなく、毎日公表されている価格、しかもリアルタイムで表示されるのは、ドルインデックス以外には「ない」ということです。
ですので、通常、ドル価格というとドルインデックスを示します。
アメリカの雇用情勢
ドルは雇用ということで、アメリカの総雇用人数を見てみると、以下のグラフのとおり過去最高になっています。

さまざまな雇用指標がありますが、政治家やFRB(連邦準備制度理事会)が気にするのはこの総雇用です。
理由は、政治家にとって経済成長こそが支持の基盤であり、その雇用が過去最大ということは、その政党を支持することとほぼイコールだからです。
一方のFRBにとっての仕事とは、金融の安定化と雇用の安定と法律にて定められており、雇用の安定を望むのは正しい方向性です
従って、この雇用状態は政府、FRBにとっては理想的な情勢といえます。
ドルインデックスと雇用の関係性
その結果、ドルインデックスは以下のようになっています。

青棒線が総雇用、黒点線がドルインデックスです。
最近を除き、2013年から2020年に始まったコロナショックまでは、総雇用が増えるたびにドルが上昇し、コロナショックによって雇用が壊滅状態になるとドルは大きく低下しています。
その後、雇用が回復するに従い、ドルは上昇しています。
ところが、ここ最近はそうでもありません。
雇用は変わらず右肩上がりですが、ドルは下がっています。
雇用優先のドル上昇から金利中心のドル下落に
この意味は以下の、ここ1年のドルインデックスを青線、10年債国債利回りを緑線で示したグラフで説明ができます。

2022年10月までドルインデックス、10年利回りともに上昇しましたが、10年債が政策金利を上昇させているのにもかかわらず、金利は横ばいからダウントレンドを形成しています。
これは、ドルインデックスの構成要素「ドル×金利」のうち、金利の上昇が収まったので、ドルの上昇も止まってきたということになります。
つまり、2022年の10月まではドル(雇用)優先のドル上昇でしたが、それ以降は金利中心のドル下落に変わってきているのです。
一番右端の緑と青の線は大きく上昇しており、金利の上昇によってドルインデックスが上昇していることがわかります。
これは、6月1日に迫っているアメリカの債務上限問題に端を発しています。
議会が債務上限問題に応じなければ、米国債がデフォルトする可能性があり、結果、債券の利払いが停止する可能性があるという、米国債への信認問題から金利が上昇しているのです。
利払いが停止する債券を好き好んで買う投資家はおらず、その買い不足を補うために金利が上昇します。
ここで最近のドル上昇、つまりドル建ての金価格の下落が説明できます。
今後のドル価格および金価格の展望
今後のドルは、債務上限問題次第ということは、上記の説明でわかるでしょう。
つまり債務上限問題が難なく終了すれば、金利はアメリカへの信認(利払い)を許容するので低下します。
同時に円建て金価格に関しても、米国金利上昇からドル円が円安になっているのですから、円高になっていく可能性があります。
ただしドル建て金価格は、ドル安に転じる可能性の方が大きいので、上昇する可能性が高い、ということになります。
現状のアメリカは雇用は好調で、今後もドル高になるでしょうが、金利の低下を考えてみてください。
金利の低下は、インフレが終息している可能性があることがあります。
下記のグラフは、青棒線がインフレレート、黒点線が10年国債利回りです。

多少前後はありますが、インフレ率が下がってくると、利回りも低下しているのがわかるでしょう。
ここ最近の金利上昇は、債務上限問題だと上記で説明しました。
その前は、金融不安になります。
ということは、インフレ率が低下する限りは、金利は下がるので従前どおりドル安になる可能性が高い、ということになります。
結果として、金の価格は上昇気味ということになります。
















