目次
5月3日まで、アメリカのFOMC(連邦公開市場委員会)が開催されました。
今回のポイントは、この利上げ局面での最後の利上げになるかどうかでした。
この記事の要約
今回の記事では、5月のFOMCのポイントは2点。
1. 声明文の中の「利上げの必要性」という文言が削除された
2. 会議後のパウエルFRB議長の発言、「今後、金融不安などによって融資の厳格化、雇用情勢の悪化によって景気後退が起こる可能性がある」
まず、1については文言は削除されたが、議長は6月のFOMCでの利上げの有無を問われた際、「データ次第」と答え、上げるとも下げるとも現状維持とも答えていない。
つまり、政策金利5.00-5.25の水準までインフレ率が上昇すれば、それ以上の金利にし、逆に政策金利よりもインフレ率が低下することが固定されれば、利下げを行うだろう。
2については、「今後」の可能性については示唆をしているが、現状のことは何も指摘していない。
そして「あったとしても大掛かりなものになる可能性は少ない」と言っていることから、「現状は景気がよい」と認識していると思われる。
結果、実際には景気後退局面の可能性が少ない中、パウエル議長の「景気が悪くなる」発言が独り歩きして金利安となり、金高、株高が進行することになるだろう。
では、それぞれ見ていきましょう。
「利上げの必要性」という文言の削除

まず0.25の利上げは、コンセンサスどおりで驚きはありません。
ご存知のとおり、アメリカはインフレで苦しんでおり、それを回避するために去年の4月から政策金利を引き上げてきました。
これを利上げフェーズと言いますが、「利上げの必要性」という文言が削除されたことによって、今後利上げを行わない可能性がある、ということが重要なポイントになります。
ただし要注意なのは、会合後の会見でパウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長は、「6月のFOMCに利上げはあるのか」という記者からの質問に、「データ次第だ」という従前と変わらない解答をしている点です。
利上げフェーズが終わった、というのは単なる揣摩臆測の範疇であり、今後利下げをするとも金利を維持するとも一言も言っていないことに着目してください。
一方で報道や金融専門家は「これで金利は維持される」、「利下げの時期」と言い始めています。
この言葉にダマされてはいけません。
FRBは利上げも利下げも現状維持の方針も示していない、ということが「事実」なのです。
今後の米政策金利の見通し
今後の見通しを考えていきましょう。
まずは今回、政策金利誘導目標を前回の4.75-5.00から5.00-5.25にした理由についてです。
下記のグラフは年間のインフレ率になります。

3月のインフレ率は年間で5%の物価上昇になります。
経済学では通常「インフレ率<政策金利」にすれば、時間の経過とともにインフレは緩和、終息するとされています。
現在は「インフレ率5.0<政策金利5.00-5.25」となり、理論通り政策金利がインフレ率を上回ったので、「利上げの必要性」という文言を削除したと思われます。
つまり今後、FFレートは5.13程度で推移すると思われますが、政策金利5.00-5.25の水準までインフレ率が上昇すれば、それ以上の金利にすると宣言していると思われます。
反対に、現在5.0の政策金利よりもインフレ率が低下することが固定されれば、利下げを行うことになるでしょう。
利下げを期待し過ぎてはいけない

それでは、直近の見通しについて考えましょう。
4月のインフレ率は5月10日に発表されます。
コンセンサスはまだ出ていません。
このインフレ率に連動するCRB指数(商品市況指数)は、4月の月間は引け値ベース、4月30日で2.50%の上昇、その上に金融不安と債務上限が絡み合い、大幅なドル安になっています。
この結果を考えると、4月のインフレ率は大きく上昇するでしょう。
その場合、3月のインフレ率が5.00なので、この数字を政策金利5.00-5.25とFFレート5.13程度を4月のインフレ率が上回るかの問題です。
おそらく5.13は軽々とクリアして、5.25以上は厳しいという形になります。
仮に「4月のインフレ率5.3%>政策金利5.25」となれば、政策金利がインフレ率を上回らなければインフレは解消しないので、利上げの選択肢が残ってきます。
つまり世間は「利上げ停止」や「利下げ」と騒いでいますが、まだまだ利上げの可能性が残っているということです。
「景気後退が起こる可能性」について

アメリカや日本では、個人消費がGDPの7〜8割を占有するので、雇用や資金調達の問題は経済指標にはかなり重要となります。
すなわち個人消費が減少すればGDPも低下、つまりは景気の減速になります。
個人消費は、お給料がもらえないのに活発になるわけがないので、雇用によって成り立っています。
ですから、雇用の悪化は短絡的には景気の悪化になります。
そして、その雇用を促進するのが資金調達です。
なぜなら、企業は儲かる見込みがあるから雇用や設備に投資をして、将来の利益を確保するからです。
パウエル議長は金融不安などによって、融資が厳格化しその融資が鈍る可能性を指摘しているわけです。
パウエルFRB議長の米景気に対する認識
パウエル議長が景気の現状をどう認識しているのかといえば、今後悪くなる可能性があり、現状のことは何も指摘していません。
もちろん、雇用や融資が低調になれば経済は悪化するでしょうが、「あったとしても軽微で、大掛かりなものになる可能性は少ない」と言っています。
この説明を紐解くと、どう見ても「現状は景気がよい」と認識していると思われます。
つまり、景気後退の可能性を指摘して株価が売られるのは、マーケットによる議長の記者会見の拡大解釈です。
その上にドル安金利安も進行しているのですから、株価は本来高くならなければいけません。
ただし、金は新高値近辺を記録していることを忘れてはいけません。
さらに雇用は、バカンスの前にピークをつけるのが例年の傾向です。
夏のバカンスは例年5〜7月にピークを迎え、その後減少し、バカンスを終えた9月からまた上昇していく、という傾向があります。
冬のバカンスはクリスマス休暇前、11月にだいたい11〜12月に雇用はピークを迎え、クリスマスからニューイヤーはお休みとなります。
つまりパウエル議長が金融不安や債務上限で雇用が悪化する恐れがあるというのは、雇用ピーク前の4月に言ったとしても、例年の傾向としてそろそろ雇用はピークを迎える前後なのです。
この傾向を知っているという人にとっては、「いつものこと」で片づけられることになります。
以下のグラフはアメリカの総雇用数の推移です。

ここ最近はコロナ禍で上記の説明通りになっていませんが、例年はバカンスがスタートする1〜2ヵ月前に雇用はピークを迎えることが常です。
さらに言えば、金利のピークは5月であり、アメリカで夏のバカンス前に「セル・イン・メイ」と言われるのは、アメリカ人が働く夏前あたりで成長が止まり、その後、秋以降に成長するという意味です。
また、5月にはお金を稼いだアメリカ人が住宅を買うピークでもあり、例年であれば6月以降に住宅の指標が悪化していき、8月に金利が底を打ち、住宅購入も増えていくという傾向があります。
これらを総合すると、雇用や資金調達環境の悪化は例年通り起こることであり、景気後退が起こる可能性も例年通りの傾向であり、特段目新しい話ではないのです。
金価格はまだまだ新値更新の可能性あり!
下記は、青線が政策金利、黒点線がアメリカ国債10年物の市場金利の利回りです。

昨年の10月まで黒点線の市場金利が青線の政策金利を上回っていましたが、2022年末には逆転しています。
金利の上昇は金にとってはネガティブなはずなのに、金の価格が史上最高値を更新するのは、実際のマーケットは政策金利ではなく、市場金利に連動していることがわかります。
この点から言えば、政策金利がいくら上昇しようとも、市場金利がついてこないような状況なので、実質的には「金利安」なのです。
今回の利上げにしても、揣摩臆測は6月のFOMCでは利下げ、ないしは現状維持を見込んでおり、ますます市場金利安に拍車がかかることでしょう。
つまり5月3日の引けでドル建て金の価格は史上最高値目前ですが、今後、金利が下がるようであれば、また新値を更新するということです。
株価も、パウエル議長の「景気が悪くなる」という発言を切り取った記事ばかりなので、金利安によってますます高くなることでしょう。
おそらく議長の言う通り、景気後退局面の可能性は少なく、さらに金高、株高が進行することになると考えます。
ただし、次回のFOMCないしはインフレ率の発表の際に5.3%を超えた場合、それなりのショックが起こる、つまり下押しの可能性があるので要注意です。
















