古くから人々を魅了してきたラピスラズリは、地域により呼び名を変えながら、その美しさを夜空にも例えられ珍重されてきました。 そして現在もなお、ラピスラズリが人々を魅了し続けている事に変わりはありません。 今回はこの青の石『ラピスラズリ』について、産地や特色、真贋方法や『良い物』『悪い物』を詳しくご紹介します。
天上の青『ラピスラズリ』の青

ラテン語でラピスは「石」、ラズリは「青」を意味する『ラピスラズリ』(lapis lazuli)。
日本では和名を『瑠璃』(るり)と言い、古くから珊瑚と並び親しまれてきました。
しかしながら中世ヨーロッパまでは「ラピスラズリ」とは呼ばれず『サファイア』と呼ばれています。
古来より日本では瑠璃色(るりいろ)、ヨーロッパではウルトラマリン、と美しい名前で呼ばれてきたラピスラズリの美しい青。宝石や顔料の材料としてのラピスラズリの歴史は世界最古ともいわれており、紀元前3100年頃からエジプトでは装飾品として使われながらツタンカーメンのマスクの顔料や、フェルメールの名作「真珠の耳飾りの少女」の絵具に使われた事でも良く知られています。
長く人々を魅了してきたラピスラズリのその深い青色は、地域によって呼び名を変えながら、その美しさを夜空にもたとえられて珍重されてきました。同じ青い宝石であるサファイアのような透明感はないけれど、その深く澄んだ色、なにより産地がアフガニスタンの一部地域に限られてきた希少価値によって、より一層貴重な存在だったのです。
ラピスラズリの性質

ラピスラズリは、単体の鉱石ではありません。
ソーダライト、アズライト、パイライトなどの鉱石の微細な結晶が不純物としてミックスされて出来ています。ラピスラズリの青の色の主成分はアズライトによるところが大きく、平均して3~40%の成分がアズライトです。ラピスラズリは、これら各鉱石のミックスの度合いによって微妙にニュアンスが変わり、それぞれ魅力のある石になるのです。
また、硬度がそれほど固くなく(モース硬度: 5 ~ 5.5)、水晶よりも柔らかいので、ブレスレットなどに他の石と組み合わせる時には、間にシルバー(モース硬度:2)などのビーズを挟む事が多くなります。
ラピスラズリの産地
残念ながら日本では産出されないラピスラズリですが(日本では岩群青と呼ばれるアズライトが豊富にあった)、世界の中でも産出される地域はごく限られています。現在三大産地と呼ばれるアフガニスタン、チリ、ロシア以外には、北米やカナダで少量見つかる程度です。
【アフガニスタン】
古代より最大のラピスラズリの原産地だったアフガニスタンが、現在もラピスラズリ産地として世界で一番の産出量と品質を誇っています。特にバダクシャン州のヒンドゥークシュ山脈にあるサリ・サング(サーレサン Sare Sang)鉱山で採れる石が最高品質とされています。完全に均質な群青色のラピスラズリはこの地方でしか見つかりません。
1984年のアフガニスタンの内戦では、政府は大量のラピスを西側諸国へ売却し戦費を稼ぎました。その結果供給過剰にて市場に安価に出回ってしまった為、現在の低価格での相場推移を築いてしまっています。
【チリ】
長くアフガニスタンがラピスラズリの供給地としてオンリーワンの地位を誇ってきましたが、近頃はこのチリで取れるラピスラズリがミネラルショーでよく見かけるようになりました。
アルゼンチンとの国境にあるコキンボ地方に数万トンの埋蔵量があるとされる巨大ラピスラズリ鉱脈が見つかったのです。アフガニスタン産とは異なりパイライトを多く含み、金のチップ(パイライト)が含まれる石を好むコレクターから人気を呼んでいます。
【ロシア】
シベリアのバイカル湖地方にラピスラズリの大鉱脈がある可能性が高いといわれています。
かつては女帝エカテリーナ二世も開発に力を入れたバイカル湖エリアのラピスラズリは、アフガニスタン産に比べると暗めの色、パイライトが含まれない事が特徴です。
チリやアフガニスタンほどには、安定供給出来る鉱床は見つかっていないようですがトータルしての埋蔵量はほかの二つのエリアを凌ぐ可能性があり、世界三大ラピスラズリ産地の一つになっています。
ラピスラズリとよく似た石

ラピスラズリとよく似ているとされる石は、実は多くはラピスラズリを構成する鉱物です。
似ているのも当然ですね。
【ソーダライト】
ラピスラズリとよく似た群青色が美しい石ですが、砕くとその美しい青色を失い白い粉末に代わる性質があります。
そのため顔料に使う事ができず、ラピスラズリの構成成分でありながら、ラピスラズリほどの価値を認められませんでした。またソーダライトの色素成分は直射日光その他の環境の影響によって退色します。産地はブラジルなど。
【アズライト】
非常に美しい濃い青色を持ちながら、そのもろさ(モース硬度:3.5~4)のために、アクセサリーに加工される事はほとんどなく、稀に特殊処理を行ったネックレスなどを見つけられる事があります。主に顔料として珍重され、日本画の材料にもなっています。産地はモロッコ、ナミビアなど。
【デュモリチェライト】
まだ流通量は少ないながらも、その深い青はラピスラズリ以上ともいわれる美しさです。産地はブラジル、マダガスカルなど。
偽物ラピスラズリの見分け方

日本でもとても人気のある石であるラピスラズリは、残念な事に本物のラピスラズリに見せかけるために加工された偽物ラピスラズリが多く流通しています。
しかしショップ側も次にあげたような加工をした石をそのままラピスラズリとして販売する事は少なく、「ハウライトラピスラズリ」や「練りラピスラズリ」といった名称で店頭に並べる事が多いようです。しかし、ガラスビーズと値段が変わらないようなあまりにも安価なものは、一度は店員に確認してから購入する事をおすすめします。
【着色・染色】
偽物ターコイズにもよく使われるハウライトという白石があります。
この石自体は柔らかい白が美しい石なのですが、表面が微多孔質になっており、非常によく染料の色が定着するため、偽物石のベースとなってしまう石なのです。このハウライトを深い青に染めてラピスラズリとして安く販売される事がありますから要注意です。
石が着色されているか否かの見分け方はマニキュアの除光液(アセトン)で拭ってみて、色が落ちるようであれば着色されています。お客さまの許可を貰い、リファスタの真贋にも用いられている手法です。
【練り】
「ボーンズ」とも呼ばれる練り加工はラピスラズリ以外にもターコイズで非常に多く見られます。樹脂などでラピスラズリの石粉を固めたものです。
【張り】
薄いターコイズの板を安価な材料の上に重ねたものです。ターコイズのジュエリーには面が平らなデザインが多く、またラピスラズリはフラットデザインも多い事からこの張り加工が簡単に出来る事でよく使われる手法です。
良いラピスラズリ・悪いラピスラズリの選び方

ラピスラズリの青色には、青の色が明るいものと濃い青の色のものがあります。これらの色の違いは、ラピスラズリの価値を決めるものではありません。どちらの色のラピスラズリにも需要があります。
ただまず確認しなければならない事は、『天然の色かどうか』と言う事。
前出のアセトン検査にて着色の有無を確認しなければなりませんが、店頭では難しいかもしれません。その際にはしっかりとした鑑別書付き(中央宝石研究所をお薦めします。)の物を選ぶようにしたいものです。それなりに値段は張りますが、相場に則った価格でしょうし、着色起因の発色では無い為永久的にその青を楽しむ事が出来ます。
※どの宝石もそうですが、信頼できる宝石店と巡り合う事が実は一番大事なのかもしれません。
極端に値段の安いラピスジュエリーは、アクセサリーとして割り切って楽しむ事が出来ればと良いですね。
次にいわゆるジェムクオリティのラピスラズリの条件は、色の濃い薄いではなく「深み」を感じる色合いである事、石全体にブルーが広がっているかと言う事です。
グリーン味が入り出すと低評価、パープル味が噛んだモノがより美しいと判定されます。
またミスカラーとして不純物である金色(黄鉄鉱-パイライト)や白色(方解石-カルサイト)が認められない純粋な青である事も重要です。
ただ例外としてでパイライトの金色がバランス良く入れば好みは別れるものの高評価を受ける時があります。まさに『夜空の星のよう!』と美しさを称賛する場合です。
ただしそれもバランスの問題で、青色が失われて緑色に見えるほど(つまりラピスラズリの青とパイライトの金色がミックスされた結果)パイライトが多過ぎると最低品質のラピスラズリと評価されます。
しかしながらカルサイトによる斑模様や白い筋は、ブルーに同化せず、パイライトの様な相乗効果も無い為に、入るだけで総じて低評価として判定されます。
ラピスラズリは流通量が多く(アフガニスタン内戦時に戦費捻出のために多量に市場に出回った事が原因といわれています)、大型原石が多く見つかるため、石単体の価格は低くなります。そのため「宝石」として見た場合、ラピスラズリの価値は、それほど高くありません。
しかし金(Gold)や白金(Platinum)と組み合わせたハイジュエリー、もしくはハイブランドジュエリーの場合はその付加価値が評価されるので価格は相応に高くなります。
ビーズに加工されたラピスラズリを目にする事が多い日本では、ラピスラズリをジュエリーとして目にする機会があまりありませんが、「三菱ジュエリーコレクション」のような鉱石専門商社サイトに美しいラピスラズリのジュエリーを見る事ができます。
※ただ画面が少々崩れていますね。大手がこれではイケない…
また、人気のティファニーでは、 エルサ・ペレッティ(Elsa Peretti)のバイザヤードシリーズや、ジーン・シュランバーゼー(jean-schlumberger)のエッグチャームシリーズにラピスラズリが使われたものがあります。
その他に指輪の中石の素材として使用されたときのラピスラズリは、球形以外にも、青の美しさを生かすために平面加工されるか、柔らかい硬度を生かして彫刻されるパターンが多くなっています。このような加工技術にもアートとして評価されるのです。
『アウイナイト』との関係

ここでラピスの兄弟石と呼ばれるアウイナイト(HAUYNITE)をご紹介します。
アウイナイトは国内では「アウイン」「アウィン」「アウィナイト」と呼ばれる宝石で、ラピスラズリの鉱物構成と同じ珪酸塩鉱物である事から、「ラピスラズリの宝石」と呼ばれる、ドイツを主産地とする宝石です。
ルビーの章(https://kinkaimasu.jp/colorstone/column/about_ruby/)でも紹介をしましたが、透明感の無い物がラピスラズリ、宝石としてのクオリティを持つモノがアウイナイトと言ったところでしょうか。
現実1ctあたりの値段としては、アウイナイトはラピスラズリの数万倍の価値を持ち、同じ重量であればサファイアやダイヤをも遥かに凌ぐ価値を持ちます。
原石も小粒で産出量も極めて少なく、市場に出回るものは2ct未満で、その中でのジェムクオリティは0.05~0.3ct未満と非常に小さなものばかり。クラリティも多くラピス同様モースコードも5.5~6と脆い為コレクター向きの宝石と言えます。
それでもサファイアには無いピュアブルーを発色する魅力的なジェム。
機会があればアウイナイトもご紹介してきますね。
ラピスラズリのまとめ
いかがでしょうか。
太古の昔からその美しい青を称賛されてきたラピスラズリは、現在の日本でもとても人気の高い石になります。ぜひ、ラピスラズリを見分ける基準を知って、よいラピスラズリと巡り合われる事を願っています。
Q&A
Q金額に納得いかない場合は、査定だけでもよいのですか?
はい、査定は無料ですのでお気軽にお声がけください。店舗はもちろん、メールでもLINEでも査定は受け付けております。
Q買取りをお願いしたいのですが、どうすれば良いですか?
東京:池袋の店舗にお越しいただくか、全国から宅配買取を受け付けております。お品物と身分証明書をご用意ください。
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2025/03/25 18:34
入力元宝飾専門サイト
【選んだ理由】
他店よりお高く買取りして貰えるので。
【担当者へ一言】
いつも丁寧な査定ありがとうございます
愛媛県 女性 40代
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2025/03/23 20:57
入力元宝飾専門サイト
【ご要望・ご指摘】
とにかく早くて良かった。
【選んだ理由】
Youtubeを見たり、ネットで色々検索した結果 良い印象を受けた為。
【担当者へ一言】
早くて丁寧な対応で助かりました。
京都府 女性 50代
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