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アメリカ政府は3月28日、北米で最終組み立てを行ったEV(電気自動車)販売について、4月16日以降の税制優遇を発表しました。
これはアメリカの自動車産業復活の狼煙となる可能性が非常に大きいものです。
この記事の要約
今回の記事では、アメリカ政府による4月16日以降のEV販売の税制優遇は、アメリカの自動車産業、ひいては経済復活の大起爆剤になることが必然。
そしてその自動車産業、特にEVでは燃料電池の触媒に多く使われる白金(プラチナ)とパラジウムの需要が増すことは火を見るよりも明らか。
ただしその際に金売り、白金・パラジウム買いになったとすれば、金価格は押し目を形成することもありうる。
その際にカギを握るのは、グローバルサウスと呼ばれる親中国家群。
これら国家の中央銀行が金買いを続けるか否か。
それでは見ていきましょう。
米自動車産業が復活の狼煙を上げる
アメリカの自動車販売は、以下のようになっています。

2020年にコロナ禍によるロックダウンによって大幅に販売が落ち込みましたが、2021年には大幅に回復しています。
しかし2021年中葉からはまた販売が落ち込み、製造業の不振にもつながっています。
今回、インフレ抑制法によってEVなどの自動車販売に7500ドル(約100万円)の税制控除を行うと発表しました。
これによって、自動車販売が大きく回復する可能性があります。
自動車産業は「産業のコメ」

自動車は非常に裾野が広い産業であり、例えば日本の場合、GDP(国内総生産)の構成のうち、自動車関連が2〜3%を占めると言われています。
そして就業人口6000万人のうち、200〜300万人が自動車関連産業と言われています。
これほど広範な産業は他になく、一般的に自動車産業は産業の「コメ」と言われるくらい重要な産業です。
昨今では、「産業のコメ」として半導体に注目が集まっていますが、自動車は国の成長にとってのコメ、半導体は技術力にとってのコメと言うこともできます。
このような自動車産業に税制優遇を行うということは、販売好調を後押しすると予測することができます。
そして一般的な家計では、不動産に次ぐ大きな買い物は車です。
住宅の場合は家具や家電などの耐久消費財需要を引き起こしますし、自動車の場合、各種修理やメンテナンス、ガソリン代などで大きな需要を生み出します。
結果、家計支出には自動車の割合が大きく占有され、国の成長を後押しするものになります。
そのくらい自動車関連産業というのは、主な自動車製造・販売国であるアメリカ、日本、ドイツ、韓国にとって重要な産業になるのです。
米自動車販売と製造の現状
以下のグラフは、アメリカ国内の自動車在庫になります。

アメリカでは、コロナ禍が始まった2020年当初、自動車在庫はありました。
しかし、コロナ禍以前よりは少ない状態です。
さらに2021年中葉以降は全く在庫がなく、自動車価格が高騰していたことは記憶に新しいことです。
この原因は、サプライチェーンの混乱にあるでしょう。
自動車会社は、新興のテスラを例に取ると、最終組み立ては中国内の工場で行っています。
これは、中国国内に燃料電池など原料となる素材が豊富にあり、そちらで製造した方がコスト的に安く済むからです。
その安いコストで組み立てたものをアメリカや日本に輸出して稼いでいるのです。
中国で自動車を製造する理由

中国で自動車を製造する理由は、人件費ではなく、燃料電池などのEVの心臓部であるモーターの調達コストが安いためです。
イーロン・マスクが天才と言われる所以は、100万円程度の製品を1000万円で販売する能力があるからです。
そして、その上に自動車は何万というパーツからなり、その調達は日本や韓国、台湾から逆に輸出を行い、それを最終的に中国で組み立てるという流れになります。
そのサプライチェーンがコロナによって混乱したため、自動車の製造が思うようにできなくなっていたのです。
日本も去年の10月に海外渡航制限を解除、中国も3月から解除し、コロナによる移動制限やサプライチェーンの混乱も収束しました。
アメリカ政府がEVなどの自動車販売支援のために、税制優遇を4月16日から開始するとなれば、おそらくアメリカで自動車が爆発的に売れることになるでしょう。
他の産業の動向
下記はアメリカの全産業、ビジネスの在庫になります。

コロナ直後は在庫が枯渇しかけましたが、今は金融緩和、利下げなどで製造業が大きく製造し過ぎてしまい、在庫が過剰になっている状態です。
この在庫の多さには自動車が含まれていないのですから、どれだけ今回の金融緩和によってアメリカの製造業が製品を作り過ぎてしまったかがわかるでしょう。
その結果、ISM製造業の景況感は以下のようになりました。

このグラフは50以上が好景気、以下が不景気という単純な見方になります。
コロナ直後はロックダウンなので製造はできませんが、その後の金融緩和と在庫不足によって大きく製造業の景況感は改善しました。
しかし作り過ぎた結果、どんどんと下がっていくのがわかるでしょう。
また、総雇用は以下のようになっています。

コロナ直後にレイオフが続きましたが、その後は順調に回復しています。
考えていただきたいのは、これらの数字には自動車産業は含まれていない点です。
理由は上記の自動車在庫でわかるように、サプライチェーンの混乱によって自動車が製造も販売もできないのに従業員を雇うかということです。
ところが、サプライチェーンの混乱も収束の兆しが見えてきたので、ここからアメリカ政府は自動車産業の復活を掲げたというのが正解の解釈になると考えています。
米自動車産業の復活は米経済復活の起爆剤!
製造業の雇用者数は、先月までは以下のようになっています。

2月の雇用統計は26.5万人増えましたが、内訳の製造業はマイナス4000人という状態です。
これは上記で示したように、製造業が作りすぎたこと、そして自動車業界は製造したくても製造できない状態が続いたからです。
ここから「産業のコメ」と言われる自動車産業が復活したら、雇用や景況はどうなってくるでしょうか。
世の中はこれから不景気と騒いでいますが、今でも総雇用は過去最高なのですが、さらなる雇用増が期待できます。
景況も製造業の中でも自動車は大きな地位を占有するので、大きく改善することになるでしょう。
自動車産業の復活は、アメリカの景気を立ち直りを示唆するビックイベントなのです。
飛躍が予測される白金とパラジウムの需要
まず、白金やパラジウムの使用用途の大きな部分は、自動車産業です。
白金やパラジウムは今の環境規制の中の排ガスで、触媒として使用されています。
そして昨今のEVでは、心臓部分である燃料電池の触媒に多くの白金やパラジウムが使用されます。
つまり、アメリカで自動車販売が正常化するのであれば白金、パラジウム需要が大きく増すことを意味するのです。
具体的には、以下の金と白金の価格の1年間の動きをご覧ください。

同じような動きですが、2023年に入り金が続伸しました一方で、白金は安いままです。
これは、米中を筆頭とする自動車販売大国の販売不振が挙げられるでしょう。
今回、アメリカの販売再開によって白金の需要が大きく回復すると見込まれます。
金売り、白金・パラジウム買いの可能性も…

大事なことは、白金は需要不振によって価格が低迷しましたが、需給の引き締まりとともにおそらく高騰すると思われます。
その場合に予測されるのは、金に向いていた需要が白金やパラジウムに振り向けられる可能性です。
つまり金売り、白金・パラジウム買いになる可能性を否定できません。
ただし、これは一般的にグローバルサウスと呼ばれる中国圏内の国家の中央銀行が今年も買わなければ、という前提条件のもとにです。
今年の場合、親中国家のシンガポールが多くの金の買い付けを行っているので、どうなるかはわかりません。
言えることは、西側の投資家は白金などの需要がそれほど大きくないので、金にその投資を振り向けていたことがあり、それが白金やパラジウムなどのPGM(白金族)に向けられると、金が押し目を形成する可能性もあるということです。















