ここの最近のドル建て金相場のトレンドが今までとは異なることを再三にわたり指摘してきました。そしてまたここに来て、おかしな動きになっています。
この記事の要約
今回の記事では、現在の金相場の構造的な欠陥について解説。
- 金の一番の特性とその特性に基づいた金の本来の価格決定メカニズムとは?
- その本来の形とは異なる現在の金相場がはらむ構造的な欠陥とは?
- そしてこの構造的欠陥の原因とは果たして何か?
では、見ていきましょう。
金の一番の特性のおさらい
金の一番の特性とは、人類普遍の価値を持っていることに集約されます。
世界のどこの地域においても古代から金は貴重品であり、価値のあるものと認識されてきました。
その一方で私たちが日常目にするお金は、国家による信用保証の世界になり、実はそれ自体に裏付けがありません。
仮にある政府が「明日、倒産します」なんて宣言したら、その政府が発行する通貨は「無価値」になる可能性が高いのです。
こうしたケースにおいて、古今東西かつ過去の歴史から価値を失わない金は、お金の代替手段として成り立ちます。
ゆえに金の価格構成の根本である、ドルが安くなれば金の価格が高くなる、反対にドルが高くなれば金は低くなるという相互作用につながるのです。
これが金価格の基本中の基本になります。
ドルと金価格の関係性の基本
以下は、過去50年のドル建て金価格(緑線)とドル(青線)の関係を表したグラフです。
かつてはドルの価値が高く、金の価値が低かったのですが、2008年を境にドルの価値が低下し、金の価値が上昇していることがわかるでしょう。
しかし最近のドルの価値は、2000年代前半と比較すれば上昇しているのに、金の価値も上昇しています。
これこそが今の金相場の構造的な欠陥です。
ではなぜこうなったのかについて、上記同様に過去50年の米金利(青線)とドル建て金の価格(緑線)の関係を表したグラフをご覧ください。
2008年のリーマンショック以降に金利が大きく下がったと同時に金が急騰しています。
しかし、2020年のコロナショック後に底をついた金利が反転上昇した際には、金の価格は通常下がるはずですが反対に上昇してしまっています。
しかも現在の金利は、リーマンショック前よりも上昇しているのに、金はそれ以上に高いということになっています。
この背景として、今年前半までは需給要因、つまり中国の旺盛な金需要で説明ができました。
ところが今年7月以降に中国の金需要は消えています。
にもかかわらず値段が高いということは、おかしな現象であり、通常バブルと呼んでも差し支えがありません。
そしてこうした実態のない値段上昇は、どこかで大きく下落する可能性があります。
金相場は歴史的な転換点にある?
金利にしても一点底で終わる可能性の方が低いと思われますし、通常これだけの長いスパンであればまた2番、3番底をつけてもおかしくないけれど、金相場の大きなトレンドが変わりつつある可能性を示唆しています。
つまり金利やドルの動きが変わり、今の金相場は歴史的な転換点にあるということでしょう。
例えば、2024年に日経平均株価が1989年以来の高値を更新しました。
これは35年ぶりのことでしたが、金相場は1975年に高値を出して今回の新高値が2022年くらい。
実に47年ぶりでいまだに更新中であり、下がった時の衝撃が大きいことが容易に想像できます。
より短いスパンで金相場を見ると…
では、より短いスパン、まずはドル建て金価格(緑線、右軸)とドルインデックス(青線、左軸)の過去1年の動きを見てみましょう。
基本的に左軸(反転)のドルインデックスが下落すれば金価格が上昇し、ドルインデックスが上昇すれば金価格が下落している関係が見て取れます。
ところが、ここ1ヵ月をピックアップすると事情が異なるのです。
特に9月の終わりくらいから、青線(左軸、反転)のドルインデックスがこれだけ急騰すれば、金価格は大きく急落しなければならないはずなのに、現実は下がっていません。
金価格の矛盾の原因は?
この原因は、いわゆる「トランプトレード」にあると考えられます。
トランプトレードの根幹とはドル安と金利安にあり、これによって恩恵を受けるのは株価と金です。
マーケットは2024年の大統領選挙の勝者をトランプ前大統領と仮定し、トランプ施政ではドル安・金利安を志向するだろうとしているのです。
そしてこの選挙結果のアタリ、ハズレのいかんは問題ではありません。
2016年はトランプ勝利で株価は暴落させようとした人たちもいましたし、2020年の大統領選の場合はコロナショックという見方もできますが、結果バイデン勝利によって暴落していることの方が重要です。
この記事のまとめ
以上、現在の金相場は本来の金の一番の特性である人類普遍の価値を持つことに裏打ちされたドルの価値が上がれば金の価格が下がる、ドルの価値が下がれば金の価格が上がるという関係性から乖離した状態にある。
こうしたケースにおいては、ひと度金が下がるとなれば、衝撃的な急落になるのが必定。
今の金市場は、まだまだ高いように見えますが、実態は何もなく、ただトランプトレードの雰囲気で買われている。
以上が弊社の見解になります。