高騰する金相場について、今回は国家的な視点から価格崩壊のシナリオについて言及します。
この記事のまとめ
【前編】では金のマーケットに参加する当業者、商業筋、我々投資家の行動パターンや思惑が重なる中、今後どのように今の金相場が崩壊していくかについて解説しました。
今回は、金保有国や行政的視点から金相場崩壊のシナリオをシミュレートします。
- 西側諸国と東側陣営、両者の金保有にかける本気度の違いとは?
- 金市場への国家介入の可能性の有無は?
- 具体的な行政介入の例と経験から導き出せるその影響とは?
それでは、順を追って説明をしていきます。
西側諸国にとっての金保有

金本位制度の時代は1970年代に終了しているので、金という商品は各国の戦力的な物資ではありません。
ただしアメリカや日本、ドイツ、イギリスなどはいまだに政府保有の金を抱え、その量はアメリカが世界一です。
自分の財産が増えていくことに対しては何の文句もないでしょうが、急減すると黙っていない可能性があります。
とは言え国家の備蓄金は過去の遺物なので、それほど大きい声は出ないでしょう。
西側諸国は万が一に備えて金を備蓄していますが、東側陣営はそうではありません。
最近は中国が大幅に金を買っており、アメリカに次ぐ保有量を抱えています。
ほかにロシア、インド、メキシコ、トルコなど、金の保有を抱えている新興国が多い状態です。
東側陣営にとって金急落は死活問題

東側諸国が金を保有する目的は、米ドル支配から逃れるためで、新しい戦略物資として中央銀行が金を購入しています。
これらの国にとって、金の価格崩落は喫緊の問題です。
長らくインフレに苦しむトルコは、金保有がなければ通貨安がますます進行します。
ロシアはSWIFTからの排除によってドル決済圏からつまみ出され、ドル以外の代替として金を購入しているわけです。
中国にしても、現在の米中関係からアメリカに経済的に頼れば自身の首を絞めるかたちになるので、ドル支配から離脱したいというのが本音でしょう。
これらの国は、金急落の可能性にはかなりの神経をとがらせていると言えます。
金市場への国家介入の可能性

1950年代にアメリカでは、ハント兄弟による銀の買い占め事件が発生しました。
日本でもフォード社によるパラジウム買い占め事件がありました。
いずれも急騰した後に急落の道をたどったので、今のように金が急騰しているときに東西両陣営が合わせて金や銀市場に介入する可能性は否定できません。
具体的には、取引所によって値段変動の禁止が通達され、先物市場の残った限月は全て納会するまで値段変動が許されず、その後10年間、パラジウム相場はまるで動かなくなりました。
またハント兄弟は破産し、銀相場は数年にわたって低迷しました。
つまり意味不明な高騰は後に崩落を招き、結局は多くの金を抱えている新興国の財産の毀損につながるので、高騰している間でも国家による介入はあり得る話なのです。
行政による建玉調査の可能性

金市場は日本もそうですが、私設市場ではなく国家が管理している市場なので、行政はおかしな動きが続くと介入してきます。
例えば東京商品市場は農水省や経産省の管理なので、問題が起これば両省庁の監査などが入ることになります。
具体的には、先物市場には最終的に建玉調査が入ります。
先物市場には一人の委託者に対して最大の建玉制限があり、その制限を超えている委託者がいないかの調査です。
昔は一人の委託者がいろいろな名義を使い、建玉制限を超えて買っていたことが多々ありました。
現在では、おそらく法人名義にすればどこの誰が制限を超えて建玉を行っているかわからない状態です。
しかし経験則で言えば、建玉調査が行われた際には市場が大急落を起こすものです。
建玉調査から金相場崩壊への流れ

この建玉調査によって急落したところを、それまで買い占めを行っていた投機筋が再び買い占めを行うことになります。
要は役所の調査などではわからないと割り切っているのです。
ただ、その急落場面で買う委託者は決まっているので、何度も行えばだんだんと判明してきます。
通常であれば普通の投資家は買えませんよね、その場面では。
さらには買い占めを行う投機筋は、行政のほかに売り方にも警戒しなければいけない状態になってきます。
価格が上昇すればするほど需要は減少するので、売り方は減ってきます。
今までは1トンでよかったものが、値段が上昇すれば2トン、3トンと金の売り物が増えるので、それ以上の買い占めを行わないと値段を維持することができません。
そのうちに資金が枯渇するという流れです。
日本では投機目的の銀行融資は禁じられているので、いずれ買い方が負けることはわかりきっています。
欧米の銀行もリーマンショック以降、相当厳しくなっているので同じ結果になるでしょう。
この記事のまとめ
以上、具体的に売り物が増え、国家が介入し、行政も介入するとなると、金や銀の高値維持は難しくなってきます。
現在の金は、まだ急騰とまでは言えないかもしれませんが、この状態が続けばいずれそうなるでしょう。
これで儲かると判断する人の99%は最終的に損をします。
この段階になれば、プロとプロとの戦い。
素人では太刀打ちできません。
十分に金で儲けた人は適当なところで撤退し、白金(プラチナ)やパラジウムを買った方が賢いでしょう。
という内容の記事でした。

















