今回は、ロシアと中国を中心とした東側陣営のドル決済からの脱却と、これが金の需給に及ぼす影響についてです。
この記事の要約
今回の記事では、中露を中心とした東側陣営のドル決済からの脱却の動きが金の価格構成要因の一つ、金の需給に及ぼす影響について。
- 中露が世界の基軸通貨、米ドル決済からの脱却の動きを見せる背景にあるものとは?
- そもそも米ドルの強さ、各国に与える影響力はいかばかりのものか?
- そして今、中露を中心真とする東側陣営の中央銀行は金を買い付けるべき時にあるか否か?
順を追って見ていきましょう。
ドル決済から脱却するロシア
まずは、以下の記事をご覧ください。
ご存知のように、ロシアは2022年2月にウクライナ侵攻を開始しました。
結果、西側諸国は主な制裁としてロシア産エネルギーの輸入禁止、全世界の銀行でのドル決済システムであるSWIFTからの排除を決定しています。
ロシアはその対抗として、ロシア産原油の決済を全てルーブルに限るという措置を実施しています。
西側としては、ロシア産エネルギーがなくては成り立たない国が多数あるので、その一部の輸入を許可し、ドル建てで60ドルを超える原油に対しては海上輸送保険の再保険を認めない、という制裁も課しています。
東側諸国で、ドルに対抗する決済通貨を誕生させようとするのも無理もないと言えるでしょう。
ちなみにロシアは、ウクライナ侵攻によってルーブル建て取引になったのではありません。
1997年のLTCM破綻によってデフォルトし、その後の石油、エネルギー価格の低迷によって経済的危機に陥った際、エネルギー決済の原則ルーブル建て取引を採用しました。
エネルギー覇権とルーブル決済構想

ロシアはドイツなどの欧州側には、ユーロ建てでの取引を認めていました。
ウクライナ侵攻後はそれもルーブル建てとしたところで決定的な対立となり、西欧諸国はロシアのエネルギーを全面停止となったのです。
一方で、ロシアは世界の原油輸出入市場のトップであり、この地位をバーゲンセールを行うことによって築きました。
ゆえに安いロシア産エネルギーを購入する新興国、第三世界は絶えることはありません。
よってロシア経済が大きく疲弊する可能性は低いことになります。
欧米としては、ウクライナ侵攻の原資を絶つために制裁の完全履行を求めるわけですが、冷戦時代からそんなことはできなかったのに、今できるという道理などありません。
ロシアの新機軸の構想は当然の帰結と言えるでしょう。
基軸通貨ドルの強さ

世界の貿易のほとんどは「ドル建て」決済で行われています。
近年では人民元が貿易決済通貨として台頭していますが、この背景には中国政府の元の国際化計画やIMF(国際通貨基金)でのバスケット通貨での採用などがあります。
しかし2008年のリーマンショックでは、アメリカがデフォルトの危機、つまり世界の基軸通貨であるドルが無価値になる可能性がありました。
結果、ドルの万が一のヘッジとして金が当時の新値を取ったのです。
そこから15年ほど経てば、ドルの立場はもっと弱くなっていても不思議ではありません。
ただし、金融の土壌は大きな事件が起こってもなかなか変わらないという原則があります。
ドルが基軸であるのは歴史上の事実であり、アメリカはそれを離さないように努力しているからです。
例えば、日本や中国などに為替操作国として迫るのは、対象国はアメリカに輸出することによって儲かるので、制裁を課されれば痛手になります。
アメリカはその立場を利用してドルの価値を保持しようとしており、世界各国は、現実的にアメリカ抜きの経済を語ることは困難なのです。
ゆえに、ドル基軸の通貨は続くことは間違いないでしょう。
米中対立は貿易戦争にあらず?

そんな中でも、アメリカに逆らい続けているのが中国です。
アメリカは、中国が貿易黒字の分だけ米国債を購入して、アメリカの赤字を埋め合わせなければフェアではないと考えています。
しかし中国政府は米中対立が始まって以来、外貨準備の中の米国債を極端に減らし、その余剰金を金に振り替えているのです。
それが2024年前半の金相場高騰の理由になります。
外貨準備とは、国から資金が流失した際、自国の通貨の価値を防衛するためにドルを売って自国通貨を購入する、最終的には国の破綻を防ぐ安全装置の意味合いがあります。
しかし外貨準備として米国債を保有していると、ドルが値上がりすれば資産が増えてハッピーですが、反対にドルの信用が落ちると外貨準備の価値も棄損してしまいます。
つまりコロナやリーマンショックのような世界を揺るがす経済危機が起こった際、アメリカもろとも自国も危機になってしまうのです。
一方で金はドルの価値が上昇すれば下がり、ドルの価値が下落すれば上昇するのですから、より良い外貨準備と言えます。
中国のスタンスは極めて合理的と言えますが、アメリカは中国にお金を奪われているという危機感から中国を責めているのです。
すなわち米中対立は貿易戦争ではなく、米中の国力の戦争なのです。
国家が金を持つことの有効性と買付の展望

上述のように中国に限らず、世界の国々は日本を含めてアメリカの景況に左右されます。
今、新興国や第三世界が金の保有を増やしているのは、ドル債券を持つより有効だからです。
つまり合理的に考えれば、金額ベースでは中銀による金の買い付けが増えることになるでしょう。
しかし量はと言えば、今の金価格は史上最高値付近。
当然、金の買付量は減ることになり、あまり金の上昇要因としては働かないというのが現状になるでしょう。
この記事のまとめ
以上、リーマンショックやコロナショックのような事態が起こればドルが安くなり、自国を防衛するための保険と言える外貨準備高が実質減少してしまうという現実。
いざという時に資産が減ってしまう保険など、保険の意味をなさないと考えるのが通常。
各国中銀、特にアメリカと利害の一致しない東側諸国は、金をもっと買い付けたいという意志があることは明白。
しかし現状の金価格は、史上最高値レベル。
買いたくても買えないということで、金の需要は減退、つまり金価格にネガティブに働くでしょう。
という内容の記事でした。



















