世界一の金保有を誇るアメリカ。この潤沢の保有金を連邦準備銀行(FRB)に預入することで、債務上限を回避するというウワサがあります。
この記事の要約
今回の記事では、アメリカが債務上限問題解決のため、準備金を担保に連邦準備銀行から借入するという説に関して、その真偽や金価格への影響も含めて解説。
- 準備金の役割とアメリカの歴史に根ざした準備金事情とは?
- 準備金の価値を70倍にする市場価格への評価替えとは?
- 借入や評価替えの金価格への影響は?
それでは、最初に、国家はなぜ金を保有するのかの説明から始めましょう。
そもそも準備金の役割とは?

日本でもアメリカでも、ある程度の外貨準備を持っています。
外貨準備とは、日本であれば円安が止まらない場合にこれを阻止するための介入資金です。
最近では、トルコやアルゼンチンなどでキャピタルフライト(資産流失)が起こりました。
万が一のときの保険に外貨準備があるのです。
最もポピュラーな外貨準備は米ドルおよび米国債になります。
他にIMF(国際通貨基金)が定めたユーロ、スイスフラン、円、ポンド、人民元なども扱われます。
その中には金も含まれ、それを金準備と呼ぶのです。
金本位制とアメリカの準備金

アメリカが世界一の金保有を誇るのは、金本位制度の名残です。
ゆえに中国がいくら金の保有を増やそうと、やはりアメリカになります。
金本位制とは金と通貨を紐づけし、通貨に万が一のことがあれば政府が通貨と金の交換を保証するという制度です。
以前はイギリスが世界一の金保有国であり、基軸通貨はポンドでした。
貿易赤字を大量に抱えた結果、アメリカに金が流入し、ドルが基軸通貨となりました。
これが今も世界最大の金の現物取引市場がロコ・ロンドンである理由になります。
準備金の評価替えとは?
金本位制度が崩壊する以前、アメリカの金平価は42ドルでした。
金平価とは、金の販売価格のことだとお考えください。
今の市場価格は3000ドル目前ですから、驚くほど安い価格と言えます。
そしてアメリカが保有する金の評価は、今もこの42ドルなのです。
現在、債務上限問題を抱えるアメリカには、この金の評価を時価に評価替えしようという動きがあります。
民間のシンクタンクの計算によると、金を時価評価に評価替えすると、現状の110億ドルから7500億ドルへと約70倍の資産が増えるそうです。
これを連邦準備銀行に担保として預入し、借金を行うことで債務上限を回避しようという狙いがあります。
しかし、これには短期的な効果しかありません。
税収が膨らまないと借金の総額がGDP(国内総生産)比で増えることになり、再び債務上限のスパイラルに陥ることになります。
今の外貨準備では米ドルを守れない?
アメリカの外貨準備の推移を見てみましょう。

今の40億ドルに1億1000万ドルの金評価増があれば、外貨準備は大きく膨れ上がります。
次にアメリカのGDPの推移をご覧ください。

GDPは1980年代から現在5倍超ですが、外貨準備は当時の3倍にしかなっていません。
つまり1980年代に比べて、アメリカのドル防衛力は弱っていることになります。
この外貨準備を増やすためには、金の評価替えをすれば解決します。
しかし現状の評価替えの趣旨は、その金を担保にお金を借りて債務上限問題を回避することにあります。
そして、この評価替えをベッセント財務長官は否定しています。
市場はその方向性で動いていることは、最近の金利低下が象徴しています。
評価替えの金価格への影響は?
この評価替え問題は金のマーケットにどう影響するでしょうか。
現状で言えることは、42ドルの評価が2500ドル程度になっても、その金が実際に市場に出てくるわけではないので影響はないということです。
ただし、この金を連邦準備銀行に預入して借金をした場合は、むしろ財政緩和であり、金にとっては買い材料になります。
問題は、これを米財務長官が否定しているという事実です。
トランプ大統領に忠誠を誓わなければ財務長官になれないのですから、大統領も連邦準備銀行に預入して借金するという方針に反対なのでしょう。
つまり現実味がない説をマーケットが取り上げて、自ら右往左往しているだけに過ぎないのです。
この記事のまとめ
以上、確かにアメリカの準備金を時価に評価替えすると外貨準備高が激増することは確かだが、これを担保に借入をするとなると話が変わってくる。
この場合、バラマキと同一の効果、つまりはドル安になるため金の価格にポジティブに働く。
しかしながら、財務長官が否定していることであり、現実味があるとは言えない。
こうした情報に惑わされないよう注意してください。

















