円建て金とドル建て金で、実は価格が上昇した理由が異なります。つまり、下落のタイミングも要因も異なるというわけです。
この記事の要約
今回の記事では、ドル建て金と円建て金を両国通貨の実質実効為替レートを紐解きながら、価格の上昇理由が異なることを解説。
- つまり、ドル建て金価格がGDPや需給によって上昇したのに対して、円建て金価格の上昇は通貨安による。
- ドル建てで注目すべきは、ドルの価値。
- 円建ての場合は、金融緩和やゼロ金利の解除のタイミングに要注意。
- ドル建ての金が上昇したからといって、そのまま円建てが上がるわけではない。
それでは、順を追って見ていきましょう。
実質実効為替レートとは?
現在の米ドルの実質実効為替レートは、106ドルです。
まず実効為替レートとは、ドルに対する円の価格であるドル円レートなどと異なり、比較対象がないドルそのものの価値になります。
これに「実質」を加えると、金利などの影響を含む、という意味になります。
仮にインフレ率3%、金利が5.3%であれば、実質の金利は「5.3-3=2.3%」。
この2.3%が実際のインフレ率であり、インフレ率3%とは名目インフレ率と言います。
金利も同様で、5.3%は名目金利ということです。
アメリカの実質実効為替レート
アメリカの実質の実効為替レートは2010年代半ばから上昇しており、2020年2月のコロナショックで落ち込んでもすぐに切り返しています。
アメリカの緩和量は以下のとおりになります。

これは、ドルの供給を増やしてもそれ以上にドルの需要があり、結果としてドルの価値が上昇している、という意味です。
ここで考えてほしいのは、金の価格構成要因
【1】ドル
【2】金利
【3】アメリカのGDP(国内総生産)
+需給
になります。
【1】のドルが上昇しているのであれば、金の価値は下がるのに、反対に上昇しています。
さらに2023年は4.5%も利上げをしたので、さらに金価格は下がるはずです。
しかし、実際にはドル建て金は上昇しました。
この要因は何といえば、まず前回、アメリカの金輸入が増えていることを解説しました。
そして、アメリカ経済はコロナ復興です。
【3】GDPの上昇と+需要の超過によって、ドル建ての金の価格上昇なされていることがわかります。
円の実質実効為替レートについて
次に円の実質実効為替レートを見てみましょう。
1995年に円の実質実効為替レートは大きく上昇しました。
これは前年に、山一証券や北海道拓殖銀行の破綻などによる平成金融不況から、大きく円が売られた結果、その安定があったために大きく戻したのです。
その後、ずっと下がり続けています。
円建ての金価格の構成要件は、
【1】円
【2】金利
【3】日本のGDP
+需給
なので円建て金価格は、円の値下がりによってグラム1万円を超えたことがわかります。
ドル建て金が下がる時とは?

ドル建て金価格がアメリカのGDPや需給によって上昇したのに対して、円建て金価格は通貨安によって上昇しているのです。
上がっている原因が違えば、下がる原因も違ってきます。
ドル建て金の下落は、ドルの下落、需要の減退、GDPの鈍化によって起こる、と想像がつきます。
アメリカの金価格上昇は需要がメインであれば、その需要が減退するのはドルの価値が下がるときです。
ドルの価値、つまりドルの計算式は「ドル×金利」です。
昨今は、この金利の上下動から金を含めたマーケットが上下しています。
FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、「金利引き下げ検討をしている」と言っています。
もたらされる結果は、金の高騰であり、金の投資人気が減退するわけがないのです。
ゆえにドル建て金は上がり続けるだろう、と予測することができます。
大量の緩和を続ける限り、ドル建て金価格が下がるわけがない、ということです。
これはダイヤモンド、白金(プラチナ)やパラジウム、銀、そのほかブランド品でも同じになります。
円建て金が下がるケースとは?

一方の円建て金は、円の価値が反転上昇した時に下がるでしょう。
円の価値がここまで下がった理由は、ゼロ金利と異常な緩和です。
岸田首相も緩和、ゼロ金利の解除を言い、日銀の植田総裁、内田副総裁もそれにならう発言をしています。
その解除は一般的には3月会合と言われていますが、リファスタでは懐疑的です。
しかし、間違いなくどこかでやるでしょう。
そうなると、自動的に円建て金価格は下がると予測がつきます。
ドル建てと円建ての関係性と展望

ドル建ての金価格が上昇したからといって、そのまま円建てが上がるわけではありません。
きちんと計算すれば、円建て金価格の換算式「円換算金=ドル建て金価格÷31.1035×ドル円レート」のとおりにマーケットが動いていることが確認できます。
ドル建て金価格が10%上昇して、円が5%上昇すれば、差っ引きで円建ての価格は5%上昇することになります。
「ドル建て金価格上昇>ドル円レート上昇」か「ドル建て金価格上昇<ドル円レート上昇」かを都度見極めなければならないということです。
どちらにしても、アメリカが利下げをすれば、金上昇の余地はまだあります。
今の状況では、ドル円でドルを買い、そのドルで金を買った方が良い。
なぜなら円が高くなっていけば、日本には外国人がいっぱい投資をしてくれます。
現在の株価は前年比で33%高いので、そのうち12〜13%は円安要因で上昇しています。
外国人からすれば、残りの20%に通貨高で10%上がってくれた方がより儲かります。
現状の円安は非常に好ましくなく、円高になっていけば、日本の景気はもっとよくなるのではないでしょうか。