中国最大手の不動産業者である恒大(英名:エバーグランデ)グループが8月17日午後、NY連邦裁判所に破産法の申請を行いました。
この記事の要約
今回の記事では、8月17日午後、中国最大手の不動産業者、恒大グループがNY連邦裁判所に破産法の申請をした影響について解説。
債務額は約22兆円と莫大な額に上るが、7月の報道で返済が難しい状態であったことはすでにマーケットでは織り込み済み。
欧米や日本などの西側には、大きなお金を貸し込んでいる投資家や金融機関がいないと見込まれるので、影響を受けるのは主に本拠の中国。
加えて、日米とも景気はよくなっているので影響は軽微だろう。
問題となるのは、連鎖倒産が起こるか否か。
金利の高騰で現在は株価や金価格にとってはネガティブだが、投資家はリスク回避の行動を取るので、債権買いによる金利下落からの危機時のパターンで金買いへ。
では、詳細を確認していきましょう。
恒大グループ破産法適用申請について

まず破産、倒産に関してアメリカでは民事再生と破産の2種類があり、民事再生がチャプター11、破産法適用がチャプター15に分かれます。
民事再生には債務を整理して出資者を募り、事業を再スタートする可能性がありますが、破産には事業継承の可能性がなく、断絶という意味です。
今回、エバーグランデはNY連邦裁判所にチャプター15の適用を申請しているので、出資者は債務整理をした後、残った資金を分割で受け取るという意味になります。
チャプター15を申請したのは、エバーグランデがドル建て債券を大量に発行し、その債務不履行が現実に起こっていたことが主な理由になります。
エバーグランデは2021年に経営危機が伝えられ、コロナ禍の混乱がこれに拍車をかけました。
格付け会社フィッチも、エバーグランデ発行のドル建て債券に対してデフォルト認定を行っています。
つまり事実上は倒産していたのですが、債務整理と新たな出資者を募ることができず、今回の倒産申請に至ったと思われます。
莫大な債務額と連鎖倒産の恐怖

エバーグランデの倒産は、ほぼ認められるような状態であるので、債務確定までは時間を要するものの、マーケットへの影響は限定的と思われます。
その理由は、今年7月に報道された日本円で22兆円程度とされるエバーグランデの債務額です。
日本のGDP(国内総生産)が500兆円であることを踏まえると、いかに天文学的な債務額であるかがわかるでしょう。
日本の1兆円企業であるトヨタ自動車でさえ、1兆円を売り上げるのに四苦八苦しています。
ゆえにこのような額の返済が想定しにくい状態であったことは、マーケットでは織り込み済みということです。
むしろ厄介なのは、エバーグランデに貸し付け、ないしは社債などの出資者の中に経営不振の会社があるかでしょう。
つまり、エバーグランデからの出資金や貸付金の返済が滞ることによって、連鎖倒産が起こるか否かですが、次回の公判は9月以降に設定されることになりました。
もちろんその前に、連鎖倒産が公表されることもなくはない状態ですが。
他国ではありえない中国当局の行政指導

アメリカ時間の8月17日、株式市場の引け後にエバーグランデ破産法適用申請は発表されました。
その前日にアメリカの大手投資銀行、ゴールドマンサックスが中国株の売り推奨を発表しています。
一方で現地中国では、規制当局が各証券会社などに「株式を売り越ししないように」という窓口指導を行っています。
日本の窓口指導とは、法的拘束力を持つ行政指導のことで、絶対に従わなくてはいけないものですが、中国ではどういったものか判然としません。
しかし、日本の金融庁が証券会社に「株を売り越しにするな」という行政指導はありえない話です。
株の売買は個人、法人の自由に一任されており、それをとやかく言うのは裁量権の逸脱に当たり、訴訟を起こされてもなんら不思議ではないと言えます。
仮に日本の金融庁がそんな指導を行えば、敗訴は間違いありません。
恒大破産申請の金利への影響

エバーグランデ問題など関係なく、主に西側の先進国の金利市場は8月17日の場中まで上昇傾向にありました。
アメリカの10年債は新高値を記録し、日本の10年債も6月末につけた0.65の金利と面を合わせるかたちで高騰していました。
この事実に関して金融メディアや専門家は、株価にとっても金にとってもネガティブと解説していますが、これは表面上のことを捉えているに過ぎません。
確かにこの金利上昇の側面から見れば、株価や金の価格にとってネガティブなことは事実です。
ただし、債券の仕組みをよく考えてください。
金利が上昇ということは、債券の「価格」が下がっているという意味です。
これは、債券の需要が少なく供給が多いという意味であり、投資家のほとんどは債券を売って他の何かを買っているか、何かを買う準備をしているということになります。
おそらく、8月17日まで価格が低調となっている株価や金や資源、不動産を買う準備をしているのでしょう。
その前まで、日本でガソリン価格が高騰していることからもわかるように、貴金属などを除くエネルギー市場の高騰が一番顕著でした。
順当に行けば、買うのは資源ですが、株式や債券市場からすれば規模が小さく、おそらく今後、株式市場に流れると考えるのが順当なところ。
金や白金などの貴金属は、そのおこぼれにあずかることになるでしょう。
つまり、今の金利上昇はそれほど悲観する要素でもないのです。
投資家はリスク回避の行動へ

まず、エバーグランデ破綻申請によって起こることは、リスク回避の行動です。
つまり、株式や金などのリスク資産から安全資産である債券が買われます。
上記の説明で、8月17日までは債券市場から資金が逃げていたのが、今度は逆流して債券買いに投資家は走ることになります。
これを受けて債券の価格は上昇しますが、今度は金利が下落することになります。
となると、今まで金利の上昇を嫌気して買いが続かなかった株式市場が、今度は金利の下落で買いになるか、というとそうでもありません。
なにせ22兆円もの債務が全部消し飛べば、やはり経済にお金が回らなくなり不景気になります。
ただし、主に中国本土には大きな影響を与えるでしょうが、欧米や日本などの西側には、それほど大きなお金を貸し込んでいる投資家や金融機関がいない、と見込まれます。
加えて、日米とも景気はよくなっているので、影響は軽微になるでしょう。
仮に経営不振の会社がエバーグランデに貸し込んでいれば、日米で連鎖倒産が発生する可能性もありますが、おそらくアメリカ当局と話し合いの末、その可能性を排除した上で倒産申請を行っているはずです。
つまり株価は一瞬下がるかもしれませんが、またアップトレンドに乗っていく可能性の方が大きいということになります。
危機時のパターンで金上昇へ
それよりも、大きいのは金になります。
22兆円もの負債を抱えた企業の倒産ともなれば、自分の会社も関連する会社も大丈夫かという疑心暗鬼が生まれます。
そうなると、金利は下落するわけですから、景気に関係なく金の上昇が一番早くなるのです。
これは、リーマンショックやコロナショックでも観察されました。
つまり金の価格構成要因は、
【1】ドル
【2】金利
【3】GDP
+需給
今まで【2】金利の上昇によってドル建ての金価格は下押したのですから、金利が下落する見込みになれば、金の価格は反転するはずです。
次に【1】ドルは、金利の上昇によって上昇していたので、金利が反転すれば下がることになります。
+需給はいつも言う通り強く、【3】GDPは以下のとおり順調に伸びています。

こうなるとエバーグランデの破綻を受けて、金の上昇は株価よりも早く先行することになります。
株価が上昇すると、金利もドルも上昇して押し目を形成する、ということです。
これが危機時のパターンになります。
ただし、このパターンだけを覚えても仕方がありません。
なぜそうなるかを理解すれば、次なる危機が起こっても順当にステップを踏むことができるでしょう。
















