皆さんはサブスクを利用していますか?正式にはサブスクリプションといい、一定期間、利用できる権利に対して料金を支払うビジネスモデルです。利用者が利用した期間に応じて料金を支払います。もともと、新聞などの定期購読を指す言葉としてスタートしました。
動画や音楽の配信サイトなど、定額でコンテンツを楽しめるサービスが広く知られるようになりました。多くの商品やサービスなどで活用されるようになり、今では「サブスク」という愛称のほうが有名です。
とくにデジタル型サブスクは、物をやり取りする必要ありません。一方、洋服や化粧品、家電、お花、自動車、食品など物をやり取りするサブスクもたくさん提供されています。月々の負担は数百円から数千円程度ですから、気軽に始めることができます。とくに最初の数か月は無料や、初回のみ半額、キャンペーン期間中○○割引など、魅力のあるキャッチフレーズで、つい申し込んでしまう落とし穴がいたる所に設置されています。
気軽にスタートしたのはよいけれど、いつの間にかたくさんのサブスクに契約をしていて、「解約できない」という、罠にはまっていませんか? 行動経済学から、なぜ解約できないのか読み解いてみましょう。
サブスクの罠
解約できない理由のひとつには、解約までたどり着くのが「めんどくさい」というしくみ上の問題もあります。人はわからないことに対して、目を背ける傾向があります。これを「情報の無視」といいます。情報の無視は自分にとって利用しづらいものや、理解できないことを無視することを指します。
たとえば、難しい数式の問題を見た瞬間、理解しようとせず、最初から無視してしまうことです。わたしは洗濯機をネットで検索しているときに、意味が分からなかったり、どれを選んでよいかわからなかったりで、「19年くらい使っている古い洗濯機をまだ使えるから、今度にしよう」と思って調べることをやめてしまったことがあります。洗濯の途中で洗濯機が壊れてしまってからでは、悲惨な目に遭ってしまうのに、つい、先延ばしをしてしまいました。
なかには解約までたどり着くのを難しくするなど、不届きな企業が存在するのも事実ですが、サブスクをやめられない理由のひとつに「現状維持バイアス」が影響しています。現状維持バイアスは、変化を避けて現状を維持しようという心理です。
最初は無料などのきっかけで動画を見るサブスクを始め、利用し放題になれば、動画を満つことが習慣となります。ドラマの続きを見られなくなることを損失として感じてしまい、その結果やめられずにサブスクを利用し続けることになります。
クレジットカードの罠
さらにまずいことは、サブスクの料金をクレジットカードで払っていることが挙げられます。なぜクレジットカードを使いすぎてしまうのでしょうか。それはお金を使っている感覚が乏しいからです。
普段買い物をするときには、クレジットカードで暗証番号を打ち込む、現金や電子マネーなどで支払います。でも、サブスクは一度契約をすると、自動的にクレジットカード支払うことがほとんどではないでしょうか。その料金は翌月や翌々月に銀行口座から自動的に差し引かれます。これではお金を使っている感覚がなくなってしまいます。
さらに、私たちは現在のお金を将来のお金よりも高く評価します。たとえば、今1万円をもらうのと、1年後に1万円をもらうのでは、今、ほしいですよね。今の1万円の価値のほうが高いのです。
反対にお金を払うときのことを考えてみましょう。わたしたちはお金を払うことをいやだなと感じます。今、1万円を払うのと、あとで払うのでは、あとで払う方が嫌だなという気持ちが少ないのです。これが後払いの罠。現金払いしない人はお金を使いすぎる傾向にあります。
クレジットカードを使えば支払いを先送りできるので、お金の時間的な感覚があいまいになってしまいます。さらにポイントがたまるなど、巧妙な罠が盛りだくさん。これらは行動経済学を逆手に取った方法だといえるでしょう。
もちろん、お金は使うために貯めているので使ってよいのです。しかし、何に使ったのかの感覚を鈍らせるような仕組みには注意が必要です。クレジットカードや電子マネーなど、ほとんどの金融技術が私たちにより多くのお金を使わせようとしていることを頭に置きながら、賢くお買い物をしましょう。