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FPもまた「人生の迷い人」
ファイナンシャルプランナー(FP)といえば、お金やライフプランの相談に乗り、冷静に解決策を示すプロフェッショナルというイメージがあります。確かに、クライアントからの依頼に対して的確なシミュレーションを行い、将来に向けた安心を届けるのが私たちの仕事です。
しかし、先日50代〜60代の独立系FPが集まった会で痛感したのは、「自分の人生となると、FPもまた悩む存在である」という事実でした。
知識や情報が豊富であるがゆえに、かえって選択肢を絞れない。老後の暮らしに関する決断は、ときにクライアント以上に迷いを伴うのです。
仕事の悩み:「何歳まで働くべきか?」
まず多くの話題にのぼったのが「働き方」。
- 「この先も一生働き続ける」
- 「資産的には十分だが、仕事が舞い込むと断りきれない」
- 「体力・健康次第では70歳前後まで」
価値観は人それぞれですが、日本人の平均寿命が80歳後半に達する中で「60歳で引退」という以前の標準モデルは現実的ではありません。年金や金融資産に余裕がある人でも「社会とのつながり」を求めて働き続けたい人もいます。逆に、離婚や住宅ローンの事情から「働かざるを得ない」ケースも増えています。
住まいの悩み:「どこで暮らすのか?」
老後の生活設計を大きく左右するのが住まい。
- 郊外の持ち家に住み続けるか
- 都心にコンパクトに移るか
- 将来は子ども世帯と同居するのか
住宅ローンが残っている人も少なくなく、80歳まで返済が続くケースも耳にします。離婚を経験した人にとってはさらに悩ましい問題です。持ち家か賃貸か、老後にローンを抱えるべきか、というのはFPであっても簡単に答えが出るものではありません。
教育費の悩み:「孫にどこまで出すべきか?」
子育てを終えた世代に訪れる新たな悩みが「孫の教育費」。
- 「自分が親から援助を受けたから、孫にもしてあげたい」
- 「逆に親からはもらわなかったから、子ども夫婦に任せたい」
- 「子どもがいないため、自分には縁のない話」
教育費の援助は金額もさまざまで、塾代から大学資金まで、援助しようと思えばきりがありません。気持ちと経済的な余裕のバランスを取るのが重要です。相続・贈与の税制も関係してくるため、一概に「援助すべき」とは言えない課題なのです。
離婚経験者の悩み:「結婚指輪やアクセサリーをどうするか?」
ユニークな悩みとして盛り上がったのが「離婚した相手からもらったアクセサリーや結婚指輪をどうすべきか」というテーマ。
- 「縁起が悪いから即売却」
- 「気に入っているなら残してもよい」
- 「金相場が上がっているから、さらに値上がりを待つ?」
と意見はさまざまでした。人がモノを手放せない心理(サンクコスト、所有効果)は行動経済学でも知られています。しかし実際には使わない指輪やアクセサリーを持ち続けても意味は薄いもの。「思い切って売却し、金ETFに組み替える」という結論に至ったのも印象的でした。
ちなみに筆者自身も、片方だけ残ったピアスを処分する決心をしたほど。売却先として「リファスタ」など専門業者を活用すれば、大手よりも高値で売れることもあります。
老後生活の現実:「一生働かないといけないのか?」
FPの会話の端々から浮かび上がったのは、「老後生活において完璧なモデルは存在しない」という現実です。
- 十分な資産があっても「働きたい」人もいる
- 離婚や住宅ローンで「働かざるを得ない」人もいる
- 孫がいるかいないかで「教育費の支出」も異なる
- 手元にあるモノや資産をどう扱うかも人それぞれ
つまり、FPだからといって「老後の答え」を持っているわけではありません。むしろ、迷いながら選択を重ねる点では、誰もが同じ立場なのです。
FPも「人生の選択を続ける一人の人間」
ファイナンシャルプランナーは専門知識を持っていますが、自分の老後や暮らしの選択になると迷うもの。何歳まで働くか、どこで暮らすか、孫への援助、離婚後の資産整理──答えは一つではありません。
だからこそ、読者の皆さんにお伝えしたいのは「完璧なライフプランは存在しない」ということです。情報に基づきつつも、自分や家族の価値観に合わせて最適解を探し続ける姿勢こそが大切です。FPもあなたと同じように悩み、答えを模索しているのですから。















