目次
- イヴ・クラインのアートスタイル
- 表現形式
- 表現ジャンル
- イヴ・クライン作品の特徴と魅力・評価ポイント
- 特徴と魅力
- 評価ポイント
- イヴ・クラインのプロフィール
- 「エポック・ブルーの源泉ニースの海を見て育った」幼少期
- 「柔道とアートに目覚めた」青年期・学生時代
- 「本格的に創作活動をスタート」創作初期
- 「青の時代そしてヌーヴォーレアリスム」創作中期
- 「あらゆる表現スタイルに挑戦し早すぎる死を迎えた」創作後期・現在
- イヴ・クラインの代表作
- 「人体測定」
- 「ブルーモノクローム」
- 「空虚 (第一物質の状態における感性を絵画的感性へと安定させる特殊化)」
- イヴ・クラインの市場価格・オークション落札情報
- 「EPONGEBLEUE SANS TITRE ブルースポンジ」 22,005,000米ドル
- 「UNTITLED ANTHROPOMETRY (ANT 163) 人体測定」 1,935,000米ドル
- 「Le Rose du bleu」 23,561,250ポンド
- 「Barbara (ANT 113)」 15,597,500米ドル
- イヴ・クラインの作品と出会える場所
- 東京富士美術館
- 福岡市美術館
- イヴ・クラインの最新トピックなど
イヴ・クラインのアートスタイル
表現形式
- 絵画
- 彫刻(造形)
- 建築
- 家具デザイン
- 映像
- 音楽
- インスタレーション
表現ジャンル
- コンセプチュアル・アート
- パフォーマンスアート
- ポップ・アート
- ヌーヴォー・レアリスム
イヴ・クライン作品の特徴と魅力・評価ポイント
「イヴ・クライン/Yves Klein」とはどのようなアーティストだったのか?
そして作品の特徴と魅力をひもといてみました。
特徴と魅力
イブ・クラインは34歳の若さでこの世を去った早世のフランス出身のアーティストです。
実はクラインがアーティストとして活動した期間は
(はじめての個展を開催した)1955年から
(心臓発作のため死去した)1962年まで
のわずか7年間に過ぎません。
早すぎる死がイブ・クラインの存在をより特別なものにしたのでしょうか?
その影響は全くないとはいえませんが、彼が模索した新しい創造スタイル
(既存のアート作品や技法を否定したヌーヴォー・レアリスム)
そしてその試み
(ヌードの女性たちをブラシのように「人体測定」などのパフォーマンスアート)
(無音と連続音を組み合わせたシンフォニー音楽)
当時のアート界に衝撃を与え、若い世代を中心に鮮烈な印象を残したことは事実です。
イブ・クラインのアート界、そして次世代のアーティストへの影響力の大きさは活動期間の短さを考えると驚くべきものでした。
母国フランス以外にも、ヨーロッパを中心にイブ・クラインをリスペクトするファンは多く、日本でも年定期的に特集個展が開催されています。
たとえば2017年に「国立国際美術館(大阪)」で開催された企画展「四次元の読書」です。
会場となった地下の図書エリアでイヴ・クラインの「Symphonie monoton-silence」が流れました。
20分の持続音と20分の沈黙からなる40分の楽曲は、「音」がその後訪れる「沈黙」へのプロローグのようにも聞こえ、来場者を別次元へ誘いました。
※この作品にはクラインの早すぎる死と関わった逸話があります。
もともとはオカルト志向があったクラインが参加したイタリア映画「世界残酷物語」のために作られた映画音楽でした。
しかし、なぜかさわりの部分以外は採用されず、映画の中ではすぐに別の甘いメロディーに変更されてしまいました。
試写会でそれを知り激怒したクラインは、怒りのあまり心臓発作を起こしてしまったことが死因になった、といわれています。
はじまりの予感だけを私たちに残してこの世を去ったイブ・クライン。
彼のめざしたゴールがどこだったのかもはや知る由もありませんが、死後なお人々にみつめ続けられることに値する作品を残したアーティストであることは確かです。
評価ポイント
イヴ・クラインはわずか数年という短すぎる創作活動の中で、いくつもの衝撃的な作品を残しました。
生誕90年を超える今も、彼が行ったパフォーマンスや音楽、そして彫刻などの作品は古さを失わずYoutubeの再生回数は驚くほどです。
※テートギャラリー(英国ロンドン)提供「人体測定」パフォーマンス
https://www.youtube.com/watch?v=gj9nHa7FtQQ
「インターナショナル・クライン・ブルー」を生み出さずにはいられなかったほど「青」に傾倒したモノクロニズム画家である一方
既成概念を取り払った新しい創作スタイルへの情熱が今なお多くのアーティストを刺激する存在です。
イヴ・クラインのプロフィール
「エポック・ブルーの源泉ニースの海を見て育った」幼少期
1928年 フランスのニースで父フレッド母マリーのもとに生まれる。
故郷ニースの海と空の青色が後の「インターナショナル・クライン・ブルー(IKB)」発明につながった。
書店を経営していた叔母の下で働きながら学費を稼いだ。
「柔道とアートに目覚めた」青年期・学生時代
1942年 国立海事学校(ENSM)、国立東洋言語文化学院(INALCO)で学ぶ。
のちに「ヌーヴォー・レアリスム」グループのメンバーとなる作曲家「クロード・パスカル」アーティスト「アルマン・フェルナンデス」と出会う。
彼らとの出会いによってクラインも音楽と絵画の創作をはじめた。同時に柔道の練習をスタートしたのもこのころ。
1946年 薔薇十字団に入りオカルト・神秘思想に傾倒
このオカルト志向がのちの「世界残酷物語」協力の素地となった。
「本格的に創作活動をスタート」創作初期
1947年 はじめての作曲を手掛ける。
のちの「Symphonie monoton-silence」につながる単音シンフォニーだった。
1948年~1952年にかけてイタリア、イギリス、スペイン、そして日本を旅行。
1952年 東京の講道館柔道研究所で黒帯を取得。
1955年 パリに拠点を定める。最初のアート作品個展を開催。
1956年 ギャラリーコレットアレンディで作品展示。
「青の時代そしてヌーヴォーレアリスム」創作中期
1957年 エポック・ブルーと呼ばれる主に青を使用した「モノクロニズム(単色作品)」彫刻と絵画を発表しはじめる。
「Monochrome Bleu」「Monochrome Pink」ほか。
同年西ドイツのゲルゼンキルヒェンにあるオペラハウスのエントランスホールの装飾プロジェクトに参加。
1958年 パフォーマンスアート「Anthropometries」実行。
ペンキを体に塗ったヌードモデルを「生きている絵筆」として、紙に描画した。
残ったペンキ跡は「人体測定」とタイトルをつけた作品として残した。
1960年 ヌーヴォー・レアリスムグループを結成、宣言書を発表。
主要メンバーは美術評論家ピエール・レスタニがヌーヴォー・レアリスストとしたクライン、アルマンほか9名からなる。
伝統的な絵画技法を否定し、日常の中の素材と従来なかった技法での創作を目指した。
1962年のクラインの死によって解散。
「あらゆる表現スタイルに挑戦し早すぎる死を迎えた」創作後期・現在
1961年 オリジナル絵具「インターナショナル・クライン・ブルー」を開発し特許取得。
同年ドイツの「ハウスランゲ博物館」回顧展を開催。はじめてのアメリカ、ニューヨークでの個展が「レオカステッリギャラリー」で開催。
また建築家「クロードペアレント」ともにパリのシャイヨ宮の噴水、ワルシャワの噴水公園「Les fontaines de Varsovie」の設計に協力。
※火の噴水は現在スペイン「ビルバオ・グッゲンハイム美術館」の敷地内にある。
日の入り前の短時間のみ水しぶきをあげる火の噴水は、当地の観光スポットとなっている。
また家具デザインにも着手。「イヴ・クライン IKBRテーブル」として現在も受注生産ライセンス商品として入手可能。
1962年 映画「世界残酷物語製作」をサポート。
同年心臓麻痺により死去。享年34歳。
この時新婚の妻(彫刻家ロトラウト)は妊娠中だった。クラインははじめての息子イブにあえなかった。
イヴ・クラインの代表作
「人体測定」
クラインの代名詞と呼ぶべきパフォーマンスアート作品。
身体にインターナショナルクラインブルー絵具を塗りつけられた女性たちの身体を「絵筆」に見立てた。
女性たちは床に敷かれた巨大な白い紙の上であたかも動く「ブラシ」のように描画パフォーマンスを披露した。
あとに残された絵具の軌跡はキャンバスに貼り直されて絵画作品「人体測定」として残されている。
「ブルーモノクローム」
http://www.yvesklein.com/en/oeuvres/serie/5/ikb/?of=9
青に傾倒したイブ・クラインだが、ヨーロッパ人にとって青は聖母マリアを象徴する色であり特別な意味を持つ。
クラインはキャンバス全体を具体的な描写はなく、ただブルー一色に塗りつぶすことで「開かれた窓」「宇宙との懸け橋」など、様々な意味を暗示した。
「空虚 (第一物質の状態における感性を絵画的感性へと安定させる特殊化)」
イブ・クラインのパフォーマンスアートの中で人体測定と並んで物議をかもした作品。
会場となった展示空間(イリス・クレール・ギャラリー)白ペンキ一色の何もない空間だった。
ただし展示会の招待状や、会場の窓、そして来場者にフルまれたカクテルはすべて「ブルー」というアーティスティックな演出だった。
会場が「空虚」なことに腹を立てた一部の来場者からは大クレーム、警察が出動するなどの騒ぎとなったため大きなニュースとなった。
イヴ・クラインの市場価格・オークション落札情報
「EPONGEBLEUE SANS TITRE ブルースポンジ」 22,005,000米ドル
インターナショナル・クライン・ブルー顔料と天然スポンジのオブジェ 高さ112.7cm
2013年5月13~14日 サザビーズ/ニューヨーク
「UNTITLED ANTHROPOMETRY (ANT 163) 人体測定」 1,935,000米ドル
インターナショナル・クライン・ブルー顔料と合成樹脂の紙作品 87.3×45.4 cm
2018年11月14日 サザビーズ/ニューヨーク
「Le Rose du bleu」 23,561,250ポンド
インターナショナル・クライン・ブルー顔料合成樹脂と天然スポンジ、小石のオブジェ 199×153×16cm
2012年6月27日 クリスティーズ/ロンドン
「Barbara (ANT 113)」 15,597,500米ドル
インターナショナル・クライン・ブルー顔料と合成樹脂の紙作品 200×145 cm
2019年11月13日 クリスティーズ/ニューヨーク
イヴ・クラインの作品と出会える場所
東京富士美術館
「青のヴィーナス」
https://www.fujibi.or.jp/our-collection/profile-of-works.html?work_id=3749
福岡市美術館
「人体測定(ANT157)」
https://www.fukuoka-art-museum.jp/exhibition/collection-highlight2/
イヴ・クラインの最新トピックなど
アートに関心が高く身びいきが強いフランス人は、自国出身のアーティストにとても敬意を払います。
特にイブ・クラインは「ハイセンスなアーティスト」と認知され今なお人気は衰えを知りません。
関連アイテムが販売されることも多く、最近では屋内用ペンキが販売されました。
※2018年にフランスの高級塗料会社「Ressource(ルスルス)」がイブ・クライン生誕90周年を記念して「Yves KleinR」ペンキ料コレクションを発表。
もちろんインターナショナル・クライン・ブルー(IKB)もふくまれており話題となった。
下地込みで1リットル100ドルで販売。詳細は下記リンクにて。
https://ressourcepaints.us/products/yves-klein-deep-matte
またイブ・クラインはアートやファッション界のクリエイターたちにリスペクトされる特別な存在です。
たとえば人気デザイナー「ポール・スミス」もイブ・クラインの大ファンのひとり。
何度も自ブランドの商品にインターナショナル・クライン・ブルーを採用してきたほどです。
2019年にオープンした「ポール・スミス大阪店」は、御堂筋沿いでひときわ目立つ鮮やかなブルーのファサードが印象的なショップです。
多くの観光客やSNS好きの人々の間のフォトジェニックスポットとして人気です。
もちろんこのブルーは、ポール・スミスが愛してやまないイヴ・クラインをイメージしたもの。
イヴ・クラインファンなら、ぜひチェックしてみてください。