目次
- キム・チャンヨル のアートスタイル
- キム・チャンヨル 作品の特徴と魅力・評価ポイント
- 特徴と魅力
- 評価ポイント
- キム・チャンヨル のプロフィール
- 幼少期
- 青年期・学生時代
- 創作初期
- 創作中期
- 創作後期・現在
- キム・チャンヨル の代表作
- 「水滴」
- 「水滴 Recurrence」
- キム・チャンヨル の市場価格・オークション落札情報
- 「水滴」 2,860,000香港ドル
- 「水滴A 6」 181,000米ドル
- 「水滴」 4,207,500香港ドル
- 「ENS No42」 3,540,000香港ドル
- キム・チャンヨル の作品と出会える場所
- 東京都現代美術館
- 福岡アジア美術館/福岡
- 大原美術館/岡山
- いわき市立美術館 /福島
- キム・チャンヨル の最新トピックなど
キム・チャンヨル のアートスタイル
キム・チャンヨル 作品の特徴と魅力・評価ポイント
特徴と魅力
韓国最大の島であり人気リゾートとして知られる済州島に、韓国国内の著名なアーティストが集まる「楮旨里(ジョジリ)文化芸術村」があります。
ここには済州現代美術館、そして韓国美術界の重鎮キム・チャンヨルの作品が展示された「金昌烈美術館」があります。
朝鮮戦争中に済州島で暮らした偉大な芸術家に敬意を表して2016韓国政府によって建てられ、キム・チャンヨル自身が絵画220点を寄贈しました。
キム・チャンヨルは「水滴の作家」と呼ばれるほど、一貫して写真と見まごうばかりの「水滴」を描いている作家です。
50年以上も水滴を描き続け、芸術家としての人生のすべてを水滴を描写することにささげてきたように見えます。
しかし「ヨンハプニュース(聯合ニュース 韓国を代表する通信社)」のインタビューで
「私にとって水滴は何の意味もない。(水滴は)思い出を消すためのもの」
と答えています。
キム・チャンヨルが消し去りたかった忌まわしい記憶とは、朝鮮戦争時に目撃した悲惨な光景でした。
彼にとって透明な水滴を描くことは、祖国の内戦で心身ともに負った深い傷を癒す方法だったのです。
「水滴をえがくことは恐ろしい思い出を塗りつぶすこと」
「40年かけて書き続けてもダルマの悟りは得られなかったが美術館を得た」
水滴を描き始めたきっかけはなんだったのでしょうか。
それは留学先のパリで見た朝の光景でした。スタジオでキャンバスに水を吹きかけたとき
「窓から差し込む日光にキャンバスに水滴が輝いて見えた」
「すぐに写真を撮って表現する方法について考え始めた。それが私のライフワークになった」
むごたらしい戦争を体験し(兵士として先頭の当事者でもあった)傷ついた画家を癒す水滴のあと。
画家の人生を去来した幾多の感情、そして流した涙の残した痕跡なのです。
評価ポイント
1972年から一貫して「水滴」という対象を執拗に描き続けたキム・チャンヨルは、国内外の美術市場が認める韓国モダン・コンテンポラリーアートの第一人者です。
「水滴」というテーマで、「世界の無化」を描写する創作姿勢は、日本の禅思想を想起させエキゾチズムの演出にもつながりました。
1960年代から活躍の舞台を海外に定め、主要な国際グループ展に参加したことも功を奏しました。
成功のポイントのひとつが創作活動の早い段階で「水滴」という一つのモチーフに取り組むことを定めたことにあります。
抽象化、ミニマリズム、フォトリアリズムの多様なアプローチで作品世界を深めることにを可能にしました。
また政治的理由から韓国がクローズアップされる時期と海外進出時期と重なったことも幸運でした。
キム・チャンヨル のプロフィール
幼少期
1929年北朝鮮「平安南道(1945年までは韓国領)」生まれる
大家族の長男として跡継ぎとして期待されていたが、レオナルドダヴィンチを知り画家の道を志すようになる。
青年期・学生時代
1949年ソウル国立大学美術学部に入学
しかし翌年1950年から1953年まで続く朝鮮戦争で学業中断。ソウルで戦闘に加わり一時は済州島で暮らす。
大学卒業後は「近代芸術家協会」設立の中心として活躍。
1958年「芸術インフォーマル運動」に参加。「単色画(ダンセクワ)」前衛芸術家のグループの一員とみなされるようになる
創作初期
1961年パリビエンナーレ参加
1965年サンパウロビエンナーレに参加。有望な韓国抽象画アーティストと注目を集める。
1966年ロックフェラー財団の支援により「アート・スチューデンツ・リーグ・オブ・ニューヨーク」で版画を学ぶ。
ポップアート、ミニマリズムなどニューヨークの美術トレンドに影響を受ける。
1969年パリに移住。球体の描写などニューヨーク時代に影響を受けた抽象作品を残す
1972年はじめて水滴をテーマにした作品をパリの「サロン・ド・マイ(大戦中ナチスに抵抗した芸術サロン)」で発表。
1973年サンパウロ・ビエンナーレで名誉賞受賞
創作中期
1979年デンバー美術館で「錯覚の現実展」開催。
1996年フランスから「芸術勲章」「国家文化功労勲章」を授与される。
この頃の作品には新聞や木の板に水滴を描いた作品が登場。
さらに鉄やブロンズ、自然石に水滴をあらわしたガラスをくみあわせたインスタレーションに取り組んでいる。
創作後期・現在
2009年釜山美術館で個展開催。
2012年韓国済州島に移住。これ以後当地で創作活動を続けている。
同年「国家文化功労勲章」を授与される。
2014年韓国光州美術館で回顧展開催。
2018年ニューヨーク「Almine Rech Gallery」で個展開催。
2018年ニューヨーク「Tina Kim Gallery」で個展開催。
キム・チャンヨル の代表作
「水滴」
ライフワークである水滴をモチーフとした作品。
よく観察してみると水滴には何も映っていない事に注目。
外界が透明であることを提示することで無の世界を表現している。
画家は「無」の透明な状態に戻すことで、自分そして外界の浄化を試みている。
「水滴 Recurrence」
Recurrence(再発)と題されたシリーズ。
水滴と水のにじみ、漢字テキストと水滴を組み合わせた。
キム・チャンヨル の市場価格・オークション落札情報
「水滴」 2,860,000香港ドル
油彩198.5×123.3 cm
2017年4月2日 サザビーズ/香港
「水滴A 6」 181,000米ドル
油彩161.5×130 cm
2007年9月20日 サザビーズ/ニューヨーク
「水滴」 4,207,500香港ドル
油彩257.5x194cm
2008年5月24日 クリスティーズ/香港
「ENS No42」 3,540,000香港ドル
油彩150x150cm
2017年5月27日 クリスティーズ/香港
キム・チャンヨル の作品と出会える場所
東京都現代美術館
「水滴」
https://www.mot-art-museum.jp/
福岡アジア美術館/福岡
「水滴」
https://faam.city.fukuoka.lg.jp/
大原美術館/岡山
「水滴」
http://www.ohara.or.jp/201001/jp/index.html
いわき市立美術館 /福島
「水滴」
http://www.city.iwaki.lg.jp/artmuseum.html
キム・チャンヨル の最新トピックなど
アジアアート界の代表作家キム・チャンヨルの「水滴」には、母国を南北に分断した悲しみのあとを「透明な無に戻す」糸が隠されていました。
その契機となった朝鮮戦争には多くのアーティストが作品の中で異議を表明し批判しています。
パブロ・ピカソの「信川虐殺」も朝鮮戦争におけるアメリカの軍事介入を批判した名作です。
悲しみと怒りの記憶を自らの表現で昇華させた画家は、その後韓国現代アートの先駆者として活躍。
2019年にもニューヨークの有力ギャラリー「Tina Kim Gallery」で取り上げられるなど、つねに世界各国で個展が開催されています。
またキム・チャンヨルが水滴なら、砂を描く画家「キム・チャンヨン 金昌永 Kim Chang Young」も同時に記憶しておきたい作家です。
こちらも「Sharjahビエンナーレ大賞(アラブ首長国連邦(UAE))」受賞し注目されるアーティストです。
21世紀に入ってから勢いを増し続ける韓国抽象アートの有望作家にはこれからも目が離せません。