マーケットでは静かにアメリカの銀行が破綻。
大きな銀行なのか、それとも影響が小さいのかわかりませんが憶測を呼んでいます。
この記事の要約
今回の記事では、米SVB(シリコンバレー銀行)破綻の影響は小さいものと考える。
その理由は、この銀行はシリコンバレーを中心とした銀行であり、貸し出し先の多くがその周辺の新興企業であるということ。
また、その中には未来のアップルやインテルのような企業があるやもしれず、買収したがる金融機関、投資家は非常に多いということ。
この一連の流れを受けて金価格が大きく高騰したのは、結局のところ金がお買い得の状態になっていたから。
今回は、その解説を行います。
SVB破綻と言われても…
SVBが破綻、米当局の管理下に-過去10年余りで最大の米銀破綻
引用元:ブルームバーグ
「全米13位の銀行」
これを聞いてもこの銀行が大きいのか小さいのか、日本で暮らしている我々にはわかりません。
「日本で13位の銀行ってどこ?」と聞かれ、即答できる人は銀行関係者でもほとんどいないでしょう。
13位ってなかなか微妙な順位です。
また、何の規模で13位なのかわかりません。
おそらく預金残高の面で13位と考えるのが通常ですが、もしかしたら資産規模や貸し出し残高かもしれません。
銀行の健全性を測る上では、自己資本比率になるでしょうが、破綻したのだからそれ以前からそれほどよくないことも明白です。
要はわからないだらけですが、週末はこの破綻の懸念だけで金利は急降下。
ドルは雇用統計を受けて上昇という形になっていますが、「ドル×金利」の実質のドル価格は大きく降下しています。
そのためドル高・円高・金高の典型的な「リスク回避」相場ではなく、ドル安・円高・金高というような形です。
つまりこの状況から見ても、マーケットはSVB破綻にどう反応してよいのか迷っている状態だと言えるでしょう。
SVBの今後

日本では平成の初期に山一證券や日本債券信用銀行、日本長期信用銀行などが破綻し、大きな混乱を招きました。
その反省から金融庁は、定期的に銀行の資産査定や監査に入るようになり、破綻を未然に防ぐ体制が整っています。
アメリカでも事情は同じで、1980年代に信用組合や金庫が大倒産時代を経て、FDIC(連邦預金保険公社)が発足しています。
つまり定期的に銀行検査を行い、破綻しそうな銀行を査定しているのです。
今回の場合、査定の結果なのか、増資の結果なのかはわかりませんが、以前から経営不安はささやかれている銀行でした。
そしてこのSVB銀行の破綻は、リーマンショック以降、最大の倒産と騒いでいます。
しかし、よくよく見るとその前の破綻はフレディマックやファニーメイというような大規模な住宅専門銀行であり、規模が違い過ぎます。
ファニーメイやフレディーマックは、全米の住宅ローンを扱う会社であり、その資産規模はSVBと雲泥の差。
比べる方がおかしい、というような銀行です。
イエレン長官の発言とFDICの声明
ここで重要なことは、イエレン米財務長官の以下の発言です。
イエレン米財務長官、銀行システムの「強靱さ変わらず」-波及懸念せず
引用元:ブルームバーグ
「波及は懸念していない」とのこと。
そしてFDICの声明になります。
引用元:ブルームバーグ
これは破綻したSVBの預金保険機構は13日の午前中までに顧客の銀行預金には出し入れが自由になる、と表明していることが大事です。
これによって、預金が保護されているということを発表しています。
日本では1000万円以内の預金は保護対象ですが、FDICが保護する預金の上限額は通常は1口座あたり25万ドル(約3300万円)と太っ腹。
ただ今回はそれを上回る分も特例で保護するようです。
SVB破綻が大きく波及することがない根拠

まず、この銀行がシリコンバレーを中心とした銀行であり、その周辺の新興企業を対象に多くの貸し出しをしている、ということが大きな混乱には波及しないであろう、ということが根拠になります。
例えば今、話題のchatGPTの開発企業がシリコンバレーの中に埋もれていて、その融資がSVBによって行われていたらどうなるでしょうか。
不良債権だらけの銀行なのでしょうが、その中から将来のアップルやインテルになるような企業があった場合、争奪戦になるでしょう。
その可能性は宝探しのようなもので、倒産したSVBを買収したがる金融機関、投資家は非常に多いと思います。
ゆえに当局の関係者は13日までには全面売却か、一部売却で話はまとまるだろうと話しているのです。
つまり、倒産したSVBの資産を借金を含めて引継ぎ、アップルやインテルのような企業があれば、それだけで元が取れるのですから、今、資産を精査している形なのでしょう。
いずれにしても引き合いは止まらないと思います。
だから大きな混乱にはならないであろう、ということです。
今後のマーケットへの影響

SVBの破綻懸念から投資家は一斉にリスク資産の代表格である株式を売却し、債券を買う(利回りは低下)行動になります。
さらに昨今のFRB(連邦準備制度理事会)による国債買取オペレーションによって、ドルが大量にばら撒かれていることからドルが信用できないということから金を買うことになります。
この状態でも暗号資産はそれほど上昇しないのは、投資家の暗号資産への不信感もあるでしょう。
実際このSVBの破綻は、暗号資産の交換所への融資から悪化したとのことです。
そういう理由で金が高騰しました。
引け後にカルフォルニア金融規制当局とFDICの共同声明で破綻が発表されましたが、13日午前中までには破綻処理は終了する見込みとの発表で、週明けのマーケットはそれほど影響が出にくいと考えることができます。
ただし、13日午前中までに破綻処理が完了しない場合、マーケットが大きく荒れる可能性があります。
金はなぜ高騰したのか?

金の価格はこの一連の流れを受けて大きく高騰しました。
その幅は正規取引の範疇で2%です。
たった2%かと言われる方は多いと思いますが、1800ドルの2%というと40ドル近いので1000ドルの2%とはわけが違います。
1000ドルの2%は20ドルですが、1800ドルとの値幅が違うのは明かなことです。
ただ、これには裏があります。
つまり、金の価格はここ最近のドル高によって3月8日には去年と比較して5.64%も高かったものが、3月10日には去年比で1.07%のマイナス、3月11日、破綻懸念の引けでは1.40%の割安となっています。
この割安というのは、需給がルーズになっているという意味です。
米中冷戦が拡大する中、金の需給がこれほど弱くなるとはあまり考えられず、金はお買い得の状態になっているということです。
前年比で高いときは5〜7%高い状態が最近では常態化しています。
ということは、1830ドルから5〜7%高い状態までは金の価格は上昇するということです。
値段で言えば、1920〜1960ドルまで上昇する可能性があるということになります。
こういうマーケットは通常、SVBの処理が迅速に済めば、金の価格も下がるものですが、金の価格が割安過ぎるのであまり下がらない傾向になるでしょう。
このことは株価なども同じです。