主にドルや金利にリンクしている金や白金(プラチナ)などの貴金属相場。
1月4日の日本の仕事始めの日にかなりその形が変容していることが確認されつつあります。
この記事の要約
今回の記事では、金をはじめとする貴金属の価格構成要因を分析し、本来ならマイナスにならなければならない価格がプラスになっていることを看破。
その誤差の要因は、すなわち需給である。
こうした需給相場の特徴は、高騰し始めると早く、下落はゆっくり。
この購入主体がなんであるのかは、さらなる分析を待たなければならないが、仮に中銀だった場合、売却はありえないので、下がってこない可能性がある。
では、見ていきましょう。
金などの貴金属の価格構成要因
金やそのほかのマーケット商品の価格構成は、
【1】ドル
【2】金利
【3】GDP(国内総生産)
+需給
ということを何度も説明しています。
では、年明け1月4日時点での金価格の構成要因がどうなっているのかを見ていきましょう。
【1】ドル年間比 +8.74 金安要因
【2】金利 年間比 +2.10 金安要因
【3】GDP 年間比 +1.90 金高要因
これを計算すると、
-(8.74+2.10)+1.9=-8.94
この意味は、年間で金は8.94%のマイナスにならなければいけない状態を指します。
ところが金をはじめとする貴金属の現在の年間比は、以下のとおりです。
金 年間比 1.37
銀 年間比 5.50
白金 年間比 11.55
パラジウム 年間比 -7.57参考
銅 -14.24
鉄 -13.26
リチウム 87.21
チタン 26.76
正常なら金は年間で8.94のマイナスになるはずが、実際は1月4日時点で1.37%のプラスになっています。
この「8.94+1.37=10.31%」の差は需給です。
要は世界の金の需給は10%ほど供給不足状態になっているのです。
白金は11.55割高なので、11.55+8.94=20.49の不足になります。
20%割高でも買っているのですから大相場になるでしょう。
参考としてリチウムの状況
参考に記したリチウム電池の原料、リチウムは87.21割高+8.94=96.14%となり、この意味は100トンの需要に対して約200トンの需要があることを示しています。
食料供給が1割減れば価格は3割上昇、3割減れば価格が5割高になるという法則があります。
この点でいけば、リチウムは倍になっているのですから、生産が足りていない状態です。
このままリチウムの生産が増えなければ、大昔のパラジウム相場、ハント兄弟の銀相場操縦事件のようなことが起こることになるでしょう。
https://resource.ashigaru.jp/rank/lithiump1.html
引用元:資源について
リチウムの生産高1位はオーストラリアです。
このオセアニアが中国サイドに寄るか、欧米サイドに寄るかは重要な問題になります。
そのほか、やはり中国も顔を出していますし、アルゼンチンもワールドカップで優勝しても経済危機と言われますが、この埋蔵量だとアルゼンチンに投資する国や企業は多いでしょう。
貴金属の相場はおそらく、需給相場入りしたような形になっています。
銅や鉄などは非鉄相場といい、この区別をしておかなければいけません。
非鉄相場と貴金属相場は似て非なるものです。
金属ならなんでも買えばよい、というわけではないのです。
金価格が需給に反応している兆候
以下は2022年12月29日からの1週間の動き、緑線の右軸が金価格、青線の左軸(反転)がドルで上下逆になります。
2023年にいきなり青線のドルが急騰しています。
ドルが急騰しても緑線の金は反応せず、むしろ反対に上昇しています。
ドルが上昇すれば本来なら金は下落するのに下がらない、ということは金相場が金利やドルに反応せずに、需給に反応し始めている兆候と考えるのが妥当でしょう。
以下のグラフで同じことを金価格と金利で行ってみました。
金利は左軸を見ればわかるように上下逆になっています。
金利が上昇すれば、金の価格は下がるはずなのが反対に緑線の金は上昇しています。
白金なども結局、同じことになります。
需給相場の注意
下記のグラフのとおり、2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻を受けて、原油価格は70ドル後半から120ドルまで急騰しました。
たった3ヵ月で1.5倍、150%増しの価格になりました。
これは侵攻によって、特に欧州でロシア産ガスが入手困難になるという思惑から高騰したのです。
このように需給相場は高騰し始めると早く、そして下落はゆっくりになるわけです。
この需給相場の今後
上記でリチウムの説明をしました。
リチウムは生産国が限られており、オーストラリアが輸出不能になったら、代替国が生産を担うことができるでしょうか。
原油の場合はロシアがダメであれば、中東やアメリカがあります。
しかし、チタンにはありません。
オーストラリアからの輸出が止まれば、他の国で代替できない構造になっているのです。
金や白金は、このリチウムほど生産地域が限られているわけではありません。
しかし、原油や銅や鉄などと比較すればかなり範囲は狭いと言えます。
リチウムほど劇的な上昇はないとしても、石油よりは余程生産地域が限られているので、上昇スピードは速いということです。
そして、この需給のひっ迫が今のところなんなのか、わかりません。
この購入主体が中銀の場合、売却はありえないので、原油のように下がってこない可能性がある、ということになります。
とりあえずまだ年初ですので、ドル高、金利高になっても金が下がらないことを確認すれば、きちんと買う必要があるでしょう。