今回は「銅の値上がりで5円玉、10円玉がプラスチックに?」というテーマでお届けいたします。
1. 銅の価格上昇と硬貨製造の現状
近年、世界的なカーボンニュートラルの推進により、銅の需要が飛躍的に増加しています。
洋上風力発電や電気自動車(EV)の普及が進む中、銅は「新しい石油」とも言われており、パナマの大規模銅山の閉鎖など生産停止による供給不足に旺盛な需要が相まって、その価格は9年前の約2倍にまで上昇しています。
皆さんは「銅」と聞いて何を思い浮かべますか?
そう!5円玉や10円玉などの硬貨です。
この影響で、5円玉の製造コストは額面の94%、10円玉は80%近くに達していると言われており、硬貨の原材料費が額面を超えるという状況が生じています。
2. 過去の硬貨問題:100円玉の例
1980年代、米国の石油王による銀の買い占めが原因で銀価格が急騰しました。
当時、日本の100円硬貨には60%の銀が含まれており、大量の100円硬貨が国外に持ち出されて溶解され、銀として売却される事態が発生したそうです。
この経験を踏まえ、大蔵省は100円玉の材料を白銅に変更したという過去があります。
今回も同様に、現在の5円玉や10円玉の材料費が額面を上回ると、新しい材料への変更が検討される可能性があると言えるでしょう。
3. 硬貨にプラスチックを使用する可能性
利点と課題を簡単にまとめてみました。まず「利点」です。
コスト削減:
金属よりも安価な材料として、製造コストを削減できる可能性があります。
軽量化:
金属硬貨に比べて軽量であり、運搬や取り扱いが容易になる。
耐久性:
特殊なプラスチックは、腐食に強く、長期間使用可能な耐久性を持つものもあります。
デザインの自由度:
プラスチックは成形が容易で、複雑なデザインや高度な偽造防止機能を追加することも可能性としてはあると言えるでしょう。
次に「課題」です。
環境への影響:
プラスチックの使用は環境負荷を増やす可能性があります。リサイクル可能な材料の使用や生分解性プラスチックの導入が検討されるでしょう。
耐久性の問題:
金属に比べると、プラスチックは物理的な摩耗や損傷に対して弱い可能性があります。
偽造防止:
硬貨の偽造防止機能をプラスチックで実現するのは技術的に挑戦が伴うかもしれません。
文化的な受容性:
硬貨は歴史的・文化的に金属であることが多く、プラスチック硬貨が受け入れられるかどうかは不確定です。
4.プラスチックを硬貨を導入している国の例
いくつかの国ではプラスチックを硬貨に使用している、または試験的に導入している例がありますので簡単にお伝えします!
オーストラリア:
オーストラリアは、プラスチック紙幣(ポリマー紙幣)の先駆者として知られていますが、一部の記念硬貨や試験的な硬貨にプラスチック材料を使用したこともあります。ただし、現在は主に紙幣でポリマーを使用しており、硬貨に関しては金属が主流です。
カナダ:
カナダでも、試験的にプラスチック硬貨が製造されたことがあります。これは主に偽造防止技術やコスト削減の研究の一環として行われましたが、カナダも主にポリマー紙幣を使用しています。
ニュージーランド:
ニュージーランドも、オーストラリアと同様にポリマー紙幣を導入しており、プラスチック硬貨の試験を行ったことがあります。ただし、一般的には金属硬貨を使用しています。
トランスニストリア(沿ドニエストル共和国):
トランスニストリアは、モルドバからの独立を宣言している地域で、プラスチックのルーブル硬貨を使用しています。これらの硬貨は色鮮やかで軽量であり、ギターピックのような感触があるそうです。
いくつかの国では、プラスチック硬貨の試験が行われましたが、広く流通させるには至っていない場合が多いです。これは、耐久性、偽造防止、文化的受容性などの課題がまだ完全に解決されていないからでしょう。
5.まとめ
プラスチック硬貨の使用は、技術の進展や環境意識の高まりに伴い、今後さらに研究が進む可能性があります。特に、リサイクル可能なプラスチックや生分解性プラスチックの開発が進むことで、実用化の可能性が高まるかもしれません。
プラスチックを硬貨に使用することは技術的には可能ですが、実際の導入には多くの課題が伴います。コストや環境への影響、偽造防止策などを総合的に評価し、最適な材料選択が求められます。プラスチックの特性を活かしつつ、これらの課題を克服する技術が開発されれば、プラスチック硬貨の導入は現実のものとなるかもしれません。
プラスチックか電子化か、今後の動向に注目です。