1月4日に岸田首相が年頭会見を行いました。
相変わらず何がやりたいのかさっぱりわからないのですが、かいつまんでマーケットに関係のあることを拾っていきましょう。
この記事の要約
今回の記事では、岸田総理が掲げる賃金上昇目標5%とは、物価上昇目標を賃金上昇目標で言い換えただけ。
なぜなら物価目標を変更しただけで大幅な円高になってしまうから。
しかし、この実現可能性は限りなく低い。
仮に実現をするためには、もはや大幅な異次元緩和を再びやるしかない…。
大丈夫か、岸田政権。
そして日本。
それでは具体的に見ていきましょう。
岸田首相年頭会見
相変わらず的を射たとは言い難い発言のオンパレードですが、NHKの要旨からマーケットに一番関連があるものは、
「持続可能で格差の少ない力強い成長の基盤を作り上げる。そのために『賃上げ』を何としても実現する」
になるかと思います。
岸田総理の強いこだわり
岸田総理は折に触れて、「賃金上昇5%を目指す」と言ってきました。
下記も年頭会見の一部になりますが、やはり首相は賃金上昇に強いこだわりがあるようです。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA044CP0U3A100C2000000/
引用元:日本経済新聞
この意味とは、実は日銀の物価目標見通し上方修正と関連があります。
下記は日経が12月31日に日銀からのリーク情報を記事にしたものです。
引用元:日本経済新聞
賃金上昇目標5%の意味
物価目標の上方修正と賃金上昇、一見何も関係がないことのように見えますが、実は大きなリンクがあります。
下記は、アメリカの賃金上昇率(青棒線)とインフレ率(黒点線)になります。
もちろん黒点線の物価が上昇してから青棒線の賃金が上昇するのですが、だいたいその動きが近似しているということがわかるでしょう。
以下はこの5年の動きです。
経済学では、賃金上昇と物価上昇はイコールの関係と捉えます。
となると、日銀が次回の金融政策決定会合で物価目標を変更し、そして岸田総理が賃金上昇を言うのは同じことなのです。
つまり、物価と賃金の上昇を強い意思をもって行うということです。
もっと簡単に言えば「デフレ脱却」、安倍総理のときも同じことをやっていましたが、企業の収益回復が賃金上昇、物価高につながらなかったので、さらに推進すると言っているのです。
各国物価目標2%と日本の賃金上昇目標5%
世界各国の物価目標は一律で2%、アメリカで物価が7%上昇しても目標は2%であり、そのほか欧州、イギリス、日本、オーストラリアも2%です。
これには、全世界の物価目標を2%にしておけば為替相場が安定する、という意味があります。
例えば日本が5%に設定し、アメリカが2%に設定するとしましょう。
この場合、投資家は円を買ってドルを売るという行動に出ます。
これは未来の話です。
ところが実際は、日本が3%の物価上昇に対して、アメリカは7%。
現実は、ドルを買って円を売るという行動なのです。
そして、日本の物価上昇が5%になる見込みはほぼ「ゼロ」。
つまり、なりっこない政策を行うと岸田総理は言っているのです。
為替相場は日本の5%を期待して、上記の日銀リーク記事から1月3日以降に大幅円高となりました。
しかし、物価上昇はアメリカの方がひどい状態になることを考えて、再び円安になっています。
日銀のリーク記事が出なかった場合、円高は発生しなかったと考えるのが妥当です。
日銀の物価上昇目標変更とは結局、円高で130円割れを生み出しただけであり、現実を考えるとそんなものになるわけがありません。
日銀が物価目標を変更しただけで大幅に円高になるのですが、岸田総理はどうしてもやりたい、だったら物価目標ではなく賃金上昇と言っただけの話なのです。
大きな目標は物価の上昇、そしてアベノミクスでは企業収益は改善しましたが、本格的なデフレ脱却までは行かず、賃金上昇もうまくいかなかった2点を岸田総理は年頭会見で修正しようとしているのです。
5%の賃金上昇は可能か?
賃金上昇5%など可能性はほぼゼロだと上述しました。
現実にドル円が年間30%以上円安になっても、物価が3%しか上昇しない現状を見れば、無理と思うのが自然です。
企業の10〜12月期のインフレ期待は2.7%です。
インフレ期待率とは、人々が期待するインフレのことを指し、日本の場合、インフレ期待率は発表されていないので正確な数字はわかりません。
ただ言えることは、黒田日銀総裁が言う「デフレマインド」とはインフレ期待率を指しており、フレマインドが蔓延っているということは、皆が物価が上昇しないと思っている、というインフレ期待率のことを指しています。
この状況を転換するためには、物価を上昇させるほかないのです。
岸田総理は物価上昇5%と言いたいところなのでしょうが、世界各国の物価上昇目標が2%なので、物価目標を賃金上昇と置き換えているのです。
つまり岸田政権は、物価目標をなんとしてもやり遂げ、同時に安倍首相のなし得なかった賃金上昇までも行うと宣言しているのです。
具体的な実現方法と金相場への影響
では、具体的にどう実行するのでしょうか。
アベノミクスでは金融緩和を行い、株価は1万円割れが3万円まで行き、為替は100円割れが130円まで行きました。
これで企業収益は回復し、東日本震災でダメだと思われていた日本経済が復活する道筋はできました。
そのほか、物価上昇をする方法があるのかといえば、どう考えてもないわけです。
おそらく、また大規模な金融緩和を行うのであろうという覚悟、可能性を否定してはいけないということになります。
例えば、金価格を上昇させるためには金の禁輸という禁断の手がありますが、禁輸は自由社会では認めがたい政策です。
手っ取り早いのは、通貨の発行を多くして資産価値を上昇させる方法になります。
すなわち賃金や物価上昇をさせるためには、再び異次元緩和しかないのです。
それを4月の日銀総裁のクビのすげ替え時期に行う可能性が非常に高い、ということです。
異次元緩和をまた行えば、おそらく株価も金も白金(プラチナ)もダイヤモンドも何もかも吹っ飛ぶことでしょう。