金相場の基本がわかれば、なぜこのインフレが当面続くかがわかる!

当コラムは、世界のどこよりも早く今回のインフレの可能性を指摘し、インフレが落ち着きそうなときにもインフレは続くと主張してきました。

実際に、8月26日のジャクソンホールでのパウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長の発言は、インフレ継続の可能性を指摘しています。

では、なぜインフレ指数が低下した現在、インフレが進行すると言えるのでしょうか。

金相場の基本は商品相場の基本

タイのバンコクの中華街、ヤワラートのとある金ショップ

金の価格を綿密に計算すると、世界中どこに行っても同じです。

香港でキロ300万円で、東京ではキロ500万円であれば、皆が香港で買った金を東京で売却して200万円の差益を得るでしょう。

日本では消費税を売却時に差し戻すことになるので、その10%の差益を狙う輩が海外から金を持ち込む理由にもなります。

これが例えばレアなアニメや漫画、アートでも同じ価格ではない場合、保有者は高値が付く地域に行って売りたいと考えるのが人情でしょう。

結果、質・量が同じであれば、世界的に同じ価格に平準化されるのです。

金融市場で東京とNYの価格が違えば、東京売り-NY買いや東京買い-NY売りを行い、価格が同じになれば手じまいをして儲けることでしょう。

この場合は、東京やNY市場の信用取引、先物市場を利用することになるので、移動の交通費がいらない、手間がかからない合理的な市場になります。

つまりこういった市場にある商品は、瞬時に世界で価格が一緒になり、価格差を利用した商売ができなくなるのが基本なのです。

ロシア制裁と欧州ガス不足の犯人はアメリカ?

2022年8月、ロシア軍のイスカンデルミサイルによって破壊されたウクライナの首都、キーウのホステル

現在、欧州ではロシアのウクライナ侵攻を原因として天然ガスの供給が不足しています。

商品相場の基本からいえば、足りなければ安い地域から持ってくればよいとなるでしょう。

ところが天然ガスは、産出時には気体だという商品特性を持ちます。

金であれば航空便でも、実際に人が持ち運んでもよいでしょうが、気体は持ち運びが困難です。

ですからロシアから欧州へのガス供給は、パイプラインを通して行われます。

ところがウクライナ侵攻を受けて、欧州がロシア産天然ガスの供給を断るという制裁に出ました。

結果として、ドイツを筆頭にガス不足に陥っています。

持ち運びが困難なガスは、冷凍圧縮して運べばいいのですが、そのコストと冷凍設備に莫大なコストがかかります。

もちろん、ロシアから送管されるドイツにも冷凍されたガス(LNG)を気体に戻すインフラが必要になります。

つまり、安いロシア産のガスを使っていたドイツからすれば、ただでさえガスが高い上に、インフラを整備する余地などないという事。

その高いガスの出し手は、アメリカやその同盟国であるカタールになります。

結局、アメリカは自分たちのガスを売りたいがために、ドイツにロシア産ガスの購入を断らせたことになるのです。

代替品を持ってくるのにしても、さらに高いので持って来ようがなく、この冬の寒さを凌ぐためにはそれを輸入する必要があるのです。

天然ガス市場に起こっている負の連鎖

ペルシャ湾上にあるカタールの油田上の巨大貯蔵タンカー

金融市場について考えてみましょう。

ガスの主要市場はニューヨーク・オランダ・イギリスにあります。

この中で一番高いガス市場はオランダであり、次いでロンドン、NYです。

投資家は一番安いNY市場のガスを買い、オランダ市場でガスを売るという行為に出ます。

しかし、オランダのガスは代替品の輸入が見込めないので一方的に上昇するだけです。

そこで投資家は、NY市場でガスを買い増し、オランダ市場で売っていたガスを買い戻すことになります。

この結果、当然NY市場が急騰し、オランダ市場もますます高くなります。

少しでも安いガスを求めてイギリス市場にも投資家が流れるので、さらに高くなるという連鎖になります。

さらに大きい投資家は、天然ガスの産地に行ってガスを買いつけます。

となると世界の産地にモノがなくなる、アメリカがロシアからは買うなと命令する、そのアメリカも有名な産地ですが、環境問題が先鋭化して買えない状況です。

カギを握るイラン産天然ガスと金相場への影響

イランの天然ガス貯蔵タンク

カタール産天然ガスは昔から高く、制裁解除になってイラン産原油が市場に戻るのであればOPEC(石油輸出国機構)は減産を行うとしています。

なぜ、ここでイラン産原油のことを書くのかといえば、イラン産の原油は埋蔵量が多いのですが、それ以上に多いのが天然ガスの埋蔵量なのです。

つまりガスの供給余剰はカタールとアメリカとロシアにあるのですが、イラン産のガスも供給可能という意味になります。

その意味がわかっていない方々が原油のみを取り上げて話しますが、イランは現状では原油生産ではなくガス供給として注目を浴びているのです。

しかしそのイラン核合意への復帰は、現段階で五分五分というのがよいところ。

おそらく部分合意ではガスの供給は認められない可能性の方が高いでしょう。

つまり物流の面でも金融市場の面でも、この秋冬にガス不足が解消される見込みがありません。

金は価格が世界同一のままでしょうが、いつドルの上下による価格決定からガスや石油、穀物のように需給相場に移行するかわかりません。

このままドルが高い状況であれば通常相場になりますが、世界が金を巡って争奪戦を広げれば、需給相場に移行する可能性があるといえるのです。

この記事のまとめ

今回の記事では、金価格に代表されるように、本来は金融市場における商品の値段は世界で同一であることを確認。

しかしながら天然ガスの価格は、気体であるという特性がある上に、ロシア産の供給が欧米の制裁によってストップしている状況。

ガスの主要市場であるNY、オランダ、ロンドンでは、代替品の輸入が見込めないこの状況下で、高騰のスパイラルにある。

現在アメリカの制裁下にあるイラン産が、核合意が果たされ市場に戻れば状況は変わるかもしれないが、その可能性はよくて五分五分。

こうしうた状況下で、インフレが収まろうはずがない。

また金相場も同様に、世界が争奪戦が繰り広げるようなことに慣れば、需給相場に移行する可能性があるといえる。

こういう内容の記事でした。