【金価格の下落要因】である現在のドルの強烈な強さについて

今回は、金価格の構成要因の一つであるドルが大きく上伸している理由および金価格への影響について解説します。

アメリカの雇用にリンクするドルの上下動

ドルがアメリカの雇用にリンクしていることは、以下のグラフをご覧になれば明白です。

参照元:TRADING ECONOMICS

青棒線の雇用が伸びるとドルが強くなり、2020年2月の新型コロナパンデミックが起こると雇用が急落してドルは安くなりました。

米雇用の動きとドルの動き

では、実際にアメリカの雇用が日々どのように動いているかを解説しましょう。

8月18日発表のフィラデルフィア連銀指数の中の雇用指数は、以下のとおりです。

参照元:TRADING ECONOMICS

2022年6月と比較して2022年7月のフィラデルフィア連銀の雇用指数は、7ポイント上昇して24.1と雇用の改善が見られます。

さらに毎週木曜日に発表される失業保険申請者数も以下のようになっています。

参照元:TRADING ECONOMICS

7月に入り雇用が悪化したのですが、8月の第1週までは悪くなる傾向があったのにもかかわらず、第2週に入ると改善が見られることになりました。

失業保険申請者数の4週平均では、8月18日に発表された数字は減少しています。

参照元:TRADING ECONOMICS

これらの結果を受けて、ここ1カ月のドルインデックスは以下のような動きになっています。

参照元:TRADING ECONOMICS

指標の発表が多くあった8月18日以降、ドルが急騰していることがわかります。

ドルの需給とドル価格の関係

2020年4月以来、金融緩和を拡大してきたアメリカの中央銀行、FRB(連邦準備制度理事会)は、2022年4月以降その縮小を行っています。

これはドルの需給がパンデミック以降緩和されたのですが、2022年4月以降は需給がタイトになっていることを示しています。

参照元:TRADING ECONOMICS

以下のグラフは直近1年間のドルの需給です。

参照元:TRADING ECONOMICS

以下のグラフを見れば、青棒線が上の方に行っているときにドルの需給は緩和、つまりドルが安い方向に行き、緩和を縮小するとドルが高くなるという、需給の法則通りになっています。

参照元:TRADING ECONOMICS

金利の動向もドル価格に影響

金利の計算式は「ドル×金利」であるため、金利が上昇すればさらにドルは高くなります。

米国債の金利を反映し、資金の最大需要がある住宅ローン金利は以下のように動いています。

参照元:TRADING ECONOMICS

黒点線のアメリカ国債10年物利回りと、青棒線の住宅ローン金利が相関していることがわかるでしょう。

住宅ローン金利が上昇している現在、住宅は販売不振です。

以下のグラフはアメリカの新築住宅販売になります。

参照元:TRADING ECONOMICS

以下のグラフはアメリカの中古住宅販売です。

参照元:TRADING ECONOMICS

よく数字を見れば、住宅販売の最新のデータは7月なのに対し、住宅ローン金利のデータは8月17日が最新になります。

住宅ローン金利が上昇するのは、すなわち住宅の販売戸数が8月に入り回復していることを意味し、おそらく販売件数は回復していくことになるでしょう。

ゆえに金利も当面は高いといえます。

さらに「ドル×金利」でドルの実質価格が求められるので、ドルも金利も今後は高いと予測することができるのです。

金価格への影響

金価格の構成要因は、

【1】ドル
【2】金利
【3】GDP(国内総生産)

です。

ドルも金利も強いということは、金価格にネガティブな影響を与えることになるでしょう。

実際に1800ドル近辺だったドル建て金価格が、8月21日現在1780ドルくらいまで下がっています。

さらにGDPは弱いと言われているので、価格構成要件全てが悪い状態です。

つまり、金は急落場面があるかもしれないと合理的に予測できるのです。

一方でドル高は相対的にユーロ安、円安といえます。

すなわち、日本円建て金価格は円安の影響でそれほど下がらないと予測できるでしょう。

インフレとFRBによる利上げの影響

2022年8月23日、キーフ。ロシアの侵攻下で行われたウクライナの独立記念日

重要なのは、天然ガスの価格がユーロ安とウクライナ侵攻に伴うロシア産ガスの供給の不安定化によって、今年2月の侵攻開始時よりもすでに高くなっているということです。

不需要期にガス価格がすでに高値を越えているということは、この冬はさらなる価格上昇が予測され、欧州ではユーロ安も相まってエネルギー危機が発生すると予測されます。

去年も欧州で夏場にエネルギー危機が発生し、その結果がアメリカにも飛び火して世界的なインフレになりました。

今年も同じようなパターンになるでしょう。

つまり、FRBはCRB指数などのインフレ指数が停滞していることによって、幾分安堵していると思われますが、インフレに対する懸念は解消できない状態にあると思われます。

この結果、9月の利上げは0.75か0.5かという議論が今起こっていますが、有無を言わさず0.75の利上げになるだろうと予測できるのです。

この記事のまとめ

今回の記事では、米雇用の改善とFRBによる利上げによって、今のドル高も金利も9月以降にさらに上昇すると見込まれることを解説。

その結果、金価格が下落、しかも状況次第では急落する可能性があることは言うまでもない事実。

さらに金利が上昇すれば企業の活動は停滞し、GDPにも悪影響を及ぼすことに。

まさに金価格が下がる条件が下がってきた状況にあると言える。

こういう内容の記事でした。