2月4日発表の米雇用統計から見る金相場の展望

今回は、2月4日に発表された2022年1月の雇用統計と金相場の展望について解説します。

例年のアメリカの雇用傾向

ブラックフライデーとは、感謝祭が行われる11月第4木曜日の翌日にあたる金曜日のこと

アメリカでは、春からクリスマスなどのビックセールスの時期である12月までが雇用増大月間になります。

つまり、モノが売れる時期には雇用が増大する傾向があります。

雇用は例年、正確には11月まで増え続ける傾向があります。

これは年末最大のセールスはクリスマスだと考えている人も多いでしょうが、最近ではブラックフライデー、11月の最終金曜日の感謝祭の売上も激増しているためという見方にあります。

つまり、どちらにしろ11月の末から12月にかけてが一番売れ行きがよい、ゆえに雇用が増大するということです。

そして年明けの1月から3月まで雇用が低調という傾向があります。

ただし一番悪いのは1月であり、2月以降は春からの活動再開を控えて徐々に雇用が回復する傾向になります。

ですから2月4日に発表される1月の雇用統計は、年間で最も悪い時期の雇用統計ですので悪くて当然なのです。

1月の雇用統計が注目される理由

悪いのになぜ1月の雇用統計が注目されるのでしょうか。

それには以下の雇用統計の前に発表されるADP社の雇用統計をご覧ください。

ADP社は全米ほとんどの給料計算を委託されており、そのデータを見れば雇用の計算ができるのです。

参照元:TRADING ECONOMICS

グラフから見てもわかるように、コロナショックが2020年2月に発生し、4月には大幅な雇用のマイナスとなりました。

それ以降、2020年12月にマイナスになることはありましたが、マイナスになるのはほぼ初めての経験です。

つまり、コロナショック後に回復してきた経済成長が止まる兆しが見えているという点で、今回のADP統計は注目されたのです。

命題は、本番の労働省発表の雇用統計もマイナスになるのかです。

繰り返しますが、アメリカの景気は景気回復期を終え、再び調整期に入るかどうかにおいて注目されるべきことなのです。

季節調整について

実は、雇用統計の非農業部門の新規雇用者数は専門家の間では実績が図りにくいことからあまり注目されていません。

その理由は季節調整です。

季節調整とは、例えば雇用統計であれば3月から11月までは雇用月間だと上述しました。

その数字が減ったり増えたりすると分析しにくい、平準化しにくいという弊害があります。

そこで季節ごとにいくらか調整をして発表するのです。

その季節調整を前年と比較した場合、前年は過去に前例がない景気の落ち込みだったので、その季節調整がどのようになされているのかが不明になります。

結果として2022年1月だけの数字を見るだけのものではなく、過去の経緯からどのような数字が適切なのかを前提に数字を発表するので参考にならないのです。

例えば日本の個人所得は6月と12月に大幅に増加します。

これはボーナスの支給によるものです。

例えば毎月のお給料が30万円でボーナスが100万円、つまり6月と12月の収入は130万円となり、それをグラフにすると以下の日本の賃金統計のように非常に見にくいものとなります。

参照元:TRADING ECONOMICS

これは季節調整がなされていないものであり、日本人ならボーナスのせいかと考えることができますが、外国人にとっては意味不明なグラフになります。

こういったグラフを防ぐために雇用統計の非農業部門の新規雇用者数は、以下のアメリカの雇用統計の非農業部門新規雇用者数のように季節調整をして平準化するようにしているのです。

参照元:TRADING ECONOMICS

日本の賃金と比較して非常に見やすいグラフになっています。

景況によって雇用が増減していると分析すればわかることになります。

つまりアメリカの雇用統計、非農業部門の新規雇用者数はあまり参考にならないのです。

そして、季節調整されていないものが以下のアメリカの失業率になります。

参照元:TRADING ECONOMICS

月日が経過するごとに失業率は減っており、これは雇用が増加していることを意味します。

実際に雇用されている人の人数は以下のグラフでわかります。

参照元:TRADING ECONOMICS

コロナショックで雇用者数は激減しましたが、月日が経過するごとに雇用者数は増えています。

2020年12月にADP雇用統計は減っていますが、グラフで見ればあまり違いはわかりません。

なぜなら、2020年12月の雇用減はわずかに7万5000人だからです。

ところが今回の2022年1月の雇用減は30万人であり、2020年12月と比較すると4倍もの雇用者が減っていることになります。

これだけの減少は経済が回復してから初めてのことであり、これが1月単月だけではなく今後もしばらく続くかどうかの問題になります。

1月の雇用統計の注目点

ADPとは、アメリカの給与計算代行サービス大手のオートマティック・データ・プロセッシング社の略

非農業部門新規雇用者数は参考になりませんが、ADPのマイナス30万人は参考になります。

ほぼこの数字が失業率に反映されます。

この失業率の計算はアメリカの総人口3億5000万人に対して、労働参加率は65%程度になり、総労働人口は2億人です。

この0.1%が20万人ということになり、昔、雇用統計が毎月20万人増えればアメリカの景気は好調と言われたのは、失業率が0.1ポイント改善することを意味します。

今回、前回の失業率は3.9%だったので30万人の雇用減になり、失業率は4.0%か4.1%になるはずというのは発表前からわかります。

新規雇用者数は参考にならないので無視するのです。

ですから、雇用統計はもう発表前から悪化というのは決まっていたのです。

本来ならそんなに悪い失業率ではないのだが…

以下のグラフは、アメリカの失業率の推移です。

参照元:TRADING ECONOMICS

仮に失業率が4%になったとしても、パンデミック前と比較すると悪いですが、それほど悪い数字ではないことがわかります。

なぜなら、アメリカで完全雇用と言われる水準は4%前後だからです。

ところが史上空前の好景気と言われたトランプ政権では失業率が最大で3.4%まで低下していたので、そこから比べると4%という数字は悪いという比較対象の問題になります。

バイデン大統領はトランプ前大統領を強烈に意識しており、結果としてトランプ政権よりも労働者を多くしたい、そして中間選挙や次期大統領選挙において民主党を有利にするためには「トランプ以上に」と意気込んでいるのです。

しかし、こういう自ら設定したハードルが自縄自縛になる可能性があります。

2月4日に発表された数字を冷静に見れば、多少の揺り戻しで大きな影響を与えないと思われます。

しかし「トランプ以上」とバイデン大統領が叫びすぎると、この結果は悪かったということになるでしょう。

現時点で2月の雇用統計もあまり期待できないという見方が濃厚なので、このまま行けば景気が再び沈みこむ可能性が大きいです。

金価格への影響

金への影響は価格構成要因である

【1】ドル
【2】金利
【3】GDP

の各々を分析して、最終的な考察に移るということになります。

何度も言うようにドルは雇用とリンクしているのでドル安になります。

インフレがひどくなって行くので金利は上昇、つまり金にはネガティブになります。

ドルは金の上昇要因、金利は金の下降要因、従ってGDPが注目されます。

お給料は5%弱しか上昇せずに物価は7%上昇なので生活は苦しくなる、ゆえにGDPは悪くなるということです。

ただし要因がすべて揃っているわけではないので、若干の売りということに留めるべきでしょう。

この記事のまとめ

金は弱気傾向に

今回の記事では、2月4日発表のアメリカの2022年1月の雇用統計の失業率4.0%について、アメリカで完全雇用と言われる水準が失業率4%前後であることを鑑みれば、それほど悪い数字ではないことを確認。

これを受けて雇用と連動しているドルはドル安に。

金利はインフレから上昇。

GDPは、アメリカの物価上昇率7%に対してお給料が5%弱しか上昇していないことから、悪化。

まだ要因のすべてが揃っているわけではないが、3つの金の価格構成要因のうち2つが金にとってネガティブであることから、少なくとも金は若干の売り傾向にあると言える。

こういう内容の記事でした。