現在の金の価値を考える | 金が使われない世界はよい社会なのか?

読者の方から、当コラムは「金が使われない社会がよい社会と定義していたような気がしますが、金の価格が上昇するということはあまり今後もよくない世界が続くのか」という内容のご質問をいただきました。今回は、この回答をしていきます。

金が持つ二大特徴

1社の独占販売によって、価格は維持されるような傾向が現在でも維持され、価格形成の不透明さがあるダイヤモンド

金の特徴はなんと言っても、世界のどこに行っても、通貨単位は違えど実際には同じ価格で販売されていることです。

NY市場が引けた値段に、グラム換算(1トロイオンス31.1035グラム)してドル円レートを掛け合わせれば日本円建ての金価格になります。

香港や韓国で購入した金を日本に持ち込み、売却をすれば消費税10%分を稼ぐ、こういう詐欺がはやるのも、金が世界のどこに行っても価格が同じという特徴があるからにほかなりません。

そしてもう一つの特徴は、光輝く石であるということです。

宝石の代名詞でもあるダイヤモンドも世界の人を魅了しますが、価格はバラバラです。

同じ光輝く石の中でも唯一、明瞭な価格を提示しているのが金になります。

これらは、日本人でもアジア人でも、欧州・欧米・アフリカのどのような人種でも、共通の普遍的な価値をもたらすから価値があるのです。

人間の飽くなき欲求と金の関係

トルコのイスタンブールのグランバザールで公開された金塊

こうした価値がある金をお金に変換することは、特段不思議なことではありません。

金が人間の向上心を掻き立てる現金として流通すると、その価値はまた飛躍的に上昇します。

つまり、お金であらゆる贅沢をすることを知っている人たちは、金をかき集めようとするのです。

そこに需給問題が発生します。

金は有限の資源であり、供給に対して多くの需要があるから価格が上昇するのです。

人類の富への追及とは無限のものであり、金の価格はこの理屈で言えばまさに青天井になります。

しかし実際、金の価格は2020年8月に2070ドルの史上最高値を出し、現在は反落して1700ドル前後です。

人間の飽くなき欲求というものが存在し、天井価格を知らないのであれば、まだまだ価格が上がるのに、実際には上がらないということになります。

金そのものの価値とお金として価値

西オーストラリア州のカルグーリーにある金採掘現場

1972年のニクソンショックによってお金の裏付けは金に保証されなくてよい、つまり金の自由化が世界で行われました。

お金とは、そもそも「金」そのものだったのですが、これ以降は政府保証で発行するものになり、お金と金の価値が分離されたのです。

だからと言って、金の価格が下がるということにはなっていません。

なぜなら、金にはお金の価値と同時に、光輝く石を嫌いな人を探すのは大変なくらい価値があるので、価格は下がるどころか上昇しました。

例えば、日本の人口は第二次大戦後は3000万人程度でしたが、現在は1億2000万人と4倍、10億人以下だった世界人口も今や70億人を突破する勢いです。

一方で金の供給は、多少は技術の進歩によって増えましたが、それ以上にこの数十年で世界の人口が激増したのですから、金の価格が下がるわけがありません。

この金そのものの価値とお金の価値を分けて考えなければいけない側面があるのです。

なぜ金の価値は上昇するのか?

さまざまな通貨は、各国政府の信用のもとに発行されている

ニクソン米大統領が金と現金の交換を停止したのは、ベトナム戦争の戦費がかさみ、これ以上の借金を重ねるには、金とドルの関係を非連続的にする必要があったことが要因でした。

それまでは、持っている金に対して応分のドルを発行できたのですが、それが限界を超えてしまったので、だったら切り離せばいいという考えです。

その後も日本のバブル崩壊や先のリーマンショック、今回のコロナショックなどが発生し、世界の政府は、とんでもない額の借金を重ねることになりました。

今の世界の債務は天文学的な数字になり、その借金は、政府によって発行されたお金です。

その返済は可能なのかというと、絶対に大丈夫と断言できる人は存在しません。

万が一返済できなくなれば、その国のお金は紙切れになる可能性があります。

借金を正確に返済できない国を人が信用するかの問題です。

その上で、我々の生活に必要なお金が紙切れになる可能性があるのであれば、現金を持たずに金を持とうとします。

それが金の価値の上昇につながるのです。

現在は現金が供給過剰ゆえに…

現金の価値が下がれば、当然ビットコインなどで資産を持とうとするのが人の心理

コロナ禍において、各国の政府は借金を重ねて必要以上にお金を大量発行しています。

それがいわゆるヘリコプターマネーというものです。

この行為は、需給で言えば供給過剰という状態を示します。

であれば、現在の現金の価値は誰が見ても急落しているのです。

急落しているものを長く持ち続ければ損をしますので、今、皆さんは株を買ったり、ビットコインを買ったり、不動産を買って、現金を持つのを避けようとしています。

だから現在、株価も金価格も急騰しているのです。

金が持つ2つの欠点

アタッシュケースに金塊を入れて持ち歩くなんて、重いし場所を取るし危険だから嫌だ!

金の欠点として、持ち運びに不便な点が挙げられます。

現在、日本の税関に大量の金を持ち込もうとすれば、消費税を払うよう促されますし、いちいち金の延べ棒を持って買い物などできないから現金が誕生しました。

その上を行くのがビットコインで、スマホの中にかさばらずに持ち運べます。

もう一つの欠点としては、金に利子、配当がつかないことが挙げられます。

株式を保有していれば、その会社が好業績であれば利子という配当が投資家にはもれなく与えられます。

ですから、金利が上昇すると利子が付かない金よりも株式ということになるのです。

要するに、金は資産運用の面では不利であり、現金としても不便だということになります。

金の価値を総合的に整理すると

以上の説明から、金の価値を以下のようにまとめることができます。

【1】人類共通の普遍的な価値
【2】お金の代替としての価値
【3】金利がつかない不利の価値
【4】持ち運びに不便な価値

現在の金の価値の構成は【1】の普遍的な価値、【2】のお金の代替、つまり現金の価値が下がっていることと、政府の借金が膨らみすぎて信用できない価値、【3】は資産運用に不利という価値、【4】はビットコインなどの新規の通貨が出てきたことの価値の総合ということになります。

実際に2020年8月に史上最高値になったのは、金利が最低になったことが原因であり、それ以外の価値はまだ存在することは確かでしょう。

これが暴落するのには、ビットコインの価値の剥落や現金の価値の上昇、金利の高騰などがあります。

価格が下がれば、人は金に対して興味を失うので、これは最終的な価値になります。

借金が膨らんだ政府のお金は誰も持ちたくない

2020年の日本は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、さまざまな支援金や給付金が登場した

このうちで、絶対に実現しないものは、コロナ禍がある程度ワクチンによって収束しているのに、自民党やそのほかの野党が援助だの補助だのと今回の衆議院選挙でも騒いだことを見れば歴然でしょう。

つまり、援助や補助というのは国家の財政から支出するものであり、そのお金は二度と返ってきません。

岸田政権は人材を雇う企業には減税をすると言っていますが、雇われる人数が多ければ多いほど、一時的に減税によって政府の収入減になるけれど、長い目で見れば、雇用が増えれば多くの人が税金を払うかたちになるので儲かることになります。

ところが寄付や援助、補助は使った切りで、その年のGDP(国内総生産)にはある程度は寄与しますが、翌年以降の税収増は見込めないお金になります。

こんなことばかりやっていると政府の財政は、年々悪化します。

増え続ける政府の借金と上昇を続ける金

ニクソンショックの時にたった1トロイオンス18~35ドルだった金が現在1700ドルに…

借金の膨らんだ政府のお金は、誰も持ちたくはありません。

これだけ最悪な財政状況であれば、通常は金利が異常に高いのが経済原理です。

しかし、日本銀行が金利を低く抑えているので、金利がつかないのであれば株式に投資をしようというのが今の流れになります。

現在の金価格の高騰は、どう見ても政府が借金を重ねたせい、つまり必要以上にお金を発行しすぎた結果です。

ゆえに金価格の上昇は、借金が膨らんだという意味とイコールの関係になります。

一方で、その借金のおかげでニクソンショックから50年たった現在は当時よりも豊かな経済を実感できている点も注目してほしい事実です。

いずれにせよ、この借金が増大するだけ増大すれば、ロクなことにならないのは自然現象としては当たり前でしょう。

ところが為政者たちは、今までさんざんに借金を増やしても債務不履行にならないのだから、今回のコロナショックも無尽蔵に借金を増やしても大丈夫と勘違いしています。

現状で政府の借金が減ると思うか?

2021年11月、新型コロナ感染が急激に収まった東京の様子

借金返済のために働かなくてよいという安心感は、借金をしたことがある方なら誰でも理解できるでしょう。

つまり金の価値が下がるということは、政府の借金額が減ることを指しています。

しかし、新型コロナがワクチンによって低減したら成長軌道を整えることが先決なのに、いまだにばらまきを続ける日本やアメリカ。

国家の借金が減れば、金の価格も下がる、そして税金も減る、そういう意味なら金が下がる世界は素敵だと言えるでしょうが、多分借金が減っても増税の嵐でしょう。

今の金価格とは借金が背景の部分がほとんどであり、その借金が減れば金の価格は下がる、一方で皆さんが光り輝く石が好きなのは今後1000年後も2000年後も同じ、ゆえに金は価値は失わないということです。

誰もが日本政府の借金の多さにうんざりしていて、これが金投資ブームの根拠ですから、金が下がった方がよいということになります。

この記事のまとめ

今回の記事では、「金が使われない世界はよい社会なのか?」について考えた。

金には、人類が普遍的に持つ光り輝くものが好きという価値のほか、金利がつかないことや持ち運びに不便なことというように不利な価値もある。

しかし、今の金の価値を高めているのは、お金の代替としての価値。

すなわち、日米をはじめ各国政府がどんどんと借金を重ねていくことに起因する価値がその大部分を占めている。

ゆえに今、金の価値が下がるということは、政府の借金が減るという意味とイコールと言える関係。

そういう意味でなら、金が下がる世界は素敵だと言えるであろう。

こういう内容の記事でした。