金を長期保有することのメリットを10年後を見据えて考える

今回は、金を長期保有することのメリットについて考えていきます。

金の価値を取り巻く背景

新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年2月の上海の様子

金は2020年8月に2,065ドルの高値を出してから、現在は1,750ドル近辺と低迷傾向にあります。

これは、2020年2月に株式市場でコロナショックがあったことを受けて、金融緩和によりドルの供給が増えた結果、金を筆頭に株式や不動産価格が上昇しました。

そして金が高値を出した2020年8月に金利が低下のピークを迎え、金が高値を出し終えたことになります。

株式は値段が下がっても配当という収入があり、不動産は家賃という収入があるのに対して、金は保有していても金利がつかないところに致命的な欠陥があると言えるでしょう。

さて、この金利のことをファイナンスの世界ではフローといい、フローとは資産を保有しているだけで現金の収入があることを指します。

ただ世の中の金融商品は、アメリカを筆頭にほとんどの国の政策金利がゼロかマイナスにあることから、金が相対的に有利になっています。

ですから金利の上昇は、金以外の金融資産にフローがつき、金の価値が相対的に下がることを意味するのです。

人はなぜ金を持つようになったのか?

1963年、南ベトナムのタイニンにおける戦闘の光景

人は資産を持つことによって現金収入を期待するものであることから、今では投資信託や配当金が毎月出るファンドが人気になりました。

一方で、金も負けずに人気があります。

その理由は、配当や家賃収入も魅力ですが、それはある程度の金持ちの発想で、本物の金持ちは毎月のお金に困らないので、一番値上がりする金を購入するからです。

そのくらい金の値上がり益とは壮大なものであり、また火事や盗難などで現物を失くさない限り価値が担保されることに人気の秘密があるのでしょう。

さて、1970年代にアメリカ財政がベトナム戦争によって悪化し、ドルの不信任が起こったことから金の投資ブームが起こりました。

背景にあったのは、ドルが安くなり、アメリカが世界の覇権を維持できないくなるのではないかという懸念です。

1970年代には同じく石油ショックで石油価格が従前の2〜3倍になり、資源価格が高騰したこともあります。

その中で、中国も国家として金の保有を始めたのです。

中国が準備金を増やし続ける背景

北京郊外に残る文化大革命時代のスローガン

1970年代の中国は、文化大革命や大躍進運動の結果、国土は荒廃し、まるで貧困国のようでした。

そんな中、建国の父である毛沢東が亡くなり、次世代の華国鋒を経て鄧小平が最高指導者に就任すると、1970年代から改革開放路線がスタートしたのです。

しかし、その道のりには紆余曲折がありました。

鄧小平時代の中国は、北にソ連、南にベトナムという侵略の恐怖にさらされており、結果として日本やアメリカとの平和友好条約の締結に至ったのです。

ソ連との戦争は巧みに避け続けることはできましたが、南のベトナムがソ連の支援を受けてカンボジアに侵攻したことを受け、鄧小平はベトナムに仕掛けることを決意しました。

この戦争は40日程度という短期間で終了して、結果は成功ということになっていますが、戦果に関しては議論の余地があるところです。

しかし実際この戦争をきっかけにソ連はベトナムから手を引き、今度はアフガニスタンへの南進を開始します。

つまり、短期間で終結させた戦争でも、それなりに中国にはメリットがあったのです。

無論、戦争をすれば戦費は今も昔も天文学的な予算が必要になります。

そこで当時、経済計画を担っていた陳雲政治局常務委員は、国家で金を持つことが時代のトレンドだったので、中国も金の保有を決定したのです

数年後、その金の値段が3倍から10倍になり、改革開放路線で予算不足の財政を助けたのは言うまでもありません。

本来の税収だけでは、改革開放路線は見事に失敗したでしょう。

近現代における金の保有のメリット

現在、中国が準備金を増やし続ける理由は、上述した過去の経験則なのです。

下記は中国の金保有であり、定期的に金を買い付けていることがわかります。

参照元:TRADING ECONOMICS

かつてソ連が崩壊直前に金を大量に売却し、国際市場の金価格が大暴落したことがありました。

中国やロシア、メキシコ、トルコ、インドネシアといった新興国が金の保有を増やすのは、過去に経済が苦境になった際、金の力で助かった局面がたくさんあったからなのです。

今の金

1978年から1989年まで中華人民共和国第2代最高指導者として改革開放政策を推進した鄧小平の記念切手

今、世界で問題になっているのはインフレです。

インフレとは物価の上昇ですから、金利が跳ね上がることを意味します。

金利の上昇は金にとってはネガティブな要件です。

ましてや2020年8月に大きく金価格が上昇したので、現在はその調整過程にあると言えます。

そして金利も今後1年程度は上昇しますし、ドルも今までが安すぎたので上昇するでしょう。

となると、金の価格は当面の間下がるのではないかと長期保有者たちは考えます。

ただし鄧小平という指導者は、スパンを10年後に見据えて中国を指導しました。

そしてこの鄧小平の指導方針は、今の指導者にも受け継がれているのです。

10年後を見据えた金の価値

2021年8月28日、カリフォルニア州サンフランシスコでアフガニスタンの政権に抗議の意を示すアフガンからの逃亡者たち

インフレに関していえば、どう考えても今後10年間にインフレが進行するとは考えにくいでしょう。

理由は、今の世界で慢性的に日常品の不足が起こるとは考えにくいからです。

そして、ベトナム戦争や9.11テロによって、ドルの価値が低下したことも金を押し上げる要因です。

先般アメリカがアフガニスタンから撤退しましたが、その理由はベトナム戦争と同様に勝つ見込みがなかったからです。

アフガニスタン戦争の戦費の赤字は残りますが、今後アメリカが余計な費用を抱え込まないことを考えると、ドルも上昇するでしょう。

となると、金を持っている意味がなくなってしまいます。

中国の金売却の可能性は?

現在の中国の最高指導者である習近平

金の長期保有は、金の価格が上昇することが前提条件ですから、値段が上がらなくては意味がありません。

ただし、鄧小平のように10年スパンで物事を考えると、10年後のアメリカは国力が回復しているでしょうが、ベトナム戦争以前のような力を取り戻すことはできないでしょう。

中国も台頭しますし、日本もこの低迷時代を抜けて明るくなってくることでしょう。

その際、ドルの価格が以前のように高くなるとは考えられません。

今の低金利に関しても、リーマンショックから始まっていると考えると、もう15年も続いています。

つまり10年スパンで、このドル高も従前のようではなく、低金利の時代も終わりを告げるでしょう。

この記事のまとめ

今回の記事では、金を長期保有することのメリットを10年スパンで考えてみた。

現状からある程度の未来を考えると、モノにあふれる今の世の中でインフレが長々と続くはずはなく、アメリカもアフガンからの撤退を受けて余計な費用を抱え込まずに済むことになった。

これを受けてドル上昇となれば金を持つ意味がないが、10年先を見据えてみると低金利も終わり、中国や日本も台頭するであろうからドルも昔ほど強くはならない。

すなわち、次回の金の安値は絶好のしこみどころ!