忍び寄るデフレの恐怖を前にそのメカニズムと金相場への影響を知る

前回の欧州の件も同様、世界・世間は今後インフレと叫ばれていますが、実際はインフレになったあとに強烈なデフレになる可能性が大きいことを経済データが示しています。

歴史上、欧米諸国ではインフレを極端に忌み嫌いますが、デフレはそれ以上に悪いという認識です。

さて、デフレのメカニズムとはなんなのでしょうか?

そして金相場への影響は?

日経平均急騰の背景にある金融緩和の拡大

以下のグラフのように日経平均は8月末の2万7000円から急騰し、9月7日に5ヵ月ぶりに3万円台に乗りました。

参照元:TRADING ECONOMICS

この理由は、以下の日本銀行のバランスシートを見れば理解できます。

参照元:TRADING ECONOMICS

5月から日銀は金融緩和の量を減らしていたのですが、9月6日引け後に発表された日銀のバランスシートは過去最高になっています。

この金融緩和の拡大の見通しがあったからこそ、ファンドは一斉に売りを手仕舞いし、株式をド転買いしたことで日経が急騰している原因と思われます。

つまり、金融緩和が拡大したからリスク資産である株や不動産、金、BTC(ビットコイン)が買いになっているのです。

金融緩和とはそもそも?

2011年3月11日、東日本大震災の発生を受けて帰宅難民となり、都内の地下鉄駅構内で仮眠を取る人々

『金融緩和』とはそもそも何なのか。

これは具体的にどういうことかと言えば、市中にお金をばらまき、資金不足を補うために行われます。

例えば今回のコロナショックのような大きな危機が来ると、主にG7の中央銀行が協調して金融緩和を行います。

これは過去のリーマンショックや南欧債務危機、チャイナショックでも同様の処置が取られました。

もちろん、2011年の東日本大震災でも世界の中銀が日本の景気低迷を避けるために、一斉に金融緩和が行われています。

金融緩和の原理

新型コロナ禍のような危機になると、人は手元に現金を置きたがるもの

金持ち貧乏人の別なく、危機が起きれば手元に現金を持ちたがるのが人間の性です。

今回の新型コロナのように世界的な危機になると、今後稼げなくなる可能性があるので、銀行から当面の資金として預金を引き上げる行動に移ります。

中古品の売買がこういう危機直後に増えるのは、結局むだなものを売却して手持ちの現金を増やし、危機に備えることが目的です。

そして銀行は預金を集め、それを融資に充てるというサービスを行っています。

その利ザヤで稼いでいる銀行は、預金が一斉に引き上げられると融資不足に陥ります。

そこで、中央銀行が民間銀行の手持ちの国債を買い取り、手持ち資金を増やさせるのです。

これにより通常以上の融資ができるようになり、持続的な会社経営が行えることになります。

その際に金利が10%もすれば、借金が雪だるま的に増えるので誰も借りませんので、そこで中央銀行は、金利をゼロもしくは低金利を実現するように利下げを行います。

ゼロか異常に安い金利であれば目先をしのぐために企業はお金を借り、会社の経営を維持・従業員の雇用の確保などを行えます。

結果として経済の低迷を防ぐことができるのです。

これが金融緩和の基本になります。

金融緩和下の今起こっていること

金融緩和によって、コロナの感染拡大による経済の低迷はわずか半年程度で解消されました。

ところが、上記の日本銀行や下記に示すFRB(連邦準備制度理事会)の緩和量は、その後も増加の一途を辿っています。

参照元:TRADING ECONOMICS

以前にも示したように、FRBは9月12日の週は前の週の倍以上の緩和を行うと発表されています。

本当は緩和拡大!?ジャクソンホール会議でのテーパリング発言が金に与える衝撃

つまり、上記のグラフは8月29日が過去最高になっているのですが、9月5日の週はさらに最高額を更新するのです。

結果として金融緩和を増やせば、株価や不動産が上昇するのは歴然です。

ところがここ最近、金もそうですが、過去最高の緩和量を更新しているのに、上昇幅は日経はひどいのですが、NYダウやナスダック、スパイダーズは大したことがありません。

なぜでしょうか?

金やNYダウが大して上がらない背景

まず、以下のアメリカの消費者信頼残高をご覧ください。

参照元:TRADING ECONOMICS

続いて下記は日本の消費者信頼残高です。

参照元:TRADING ECONOMICS

消費者残高とは、簡単に言うと預金です。

つまり預金量がここ最近増えているのです。

各国の政府、中央銀行は景気が回復してきていると説明していますが、その説明が正しくて景気が回復する見込みがあれば、人々は預金を食い潰し、消費に回す傾向があります。

しかし、実際に消費者残高は増えつつあるのです。

なぜ消費者残高が増えているのか?

消費者残高の増加が起こる理由には、以下の2つのケースが考えられます。

【1】景気が回復しているといっても実際の景気はあまりよくないから、消費を控える傾向にある

【2】金融緩和をしすぎた結果、順調な経済によって消費を既にしてしまい、買うものがなくなってきている

まず【1】に関しては、特にアメリカでは物価が上昇しており、今後も物価が上昇する可能性が高いので、将来に備えて貯蓄をしよういうと意識が芽生えている可能性。

そして【2】に関しては、モノが溢れ返っていても、すでに去年に今後どうなるのかわからないことから買い控えをしていたものを、すでに買ってしまった傾向がある可能性。

例えば現在、高級時計や高級外車がバカのように売れている状態で、これは買うものがないからこういう嗜好品が売れていると判断してもよいでしょう。

両方に言えることは、経済は完全に回復してはいないのに、カネ余りになっていることが確認できるのです。

今の状態は金融緩和のしすぎ

何だかんだ言って、日本経済をデフレより脱却させた安倍前首相の功績は大きい

日本がバブル崩壊から20〜30年デフレになった理由は、【2】が主な原因です。

すなわち、石油ショック前まで日本は債務がなかったのですが、それ以降「不景気だ」「円高だ」と言ってじゃんじゃん金融緩和を行いました。

その結果、在職中に亡くなった小渕首相は「平成の借金王」と自虐したものです。

安倍前首相もアベノミクスと称して、大規模な緩和を行ったのは記憶に新しいことでしょう。

つまり、銀行は潤沢にお金を貸してくれるので、回収の見込みのない資金にもそのお金を貸しつけ、不動産バブルが崩壊したのです。

その結果、都市銀行や住専などの不良債権が天文学的な数字になり、不景気となってまた緩和をするという悪循環です。

そして、日本政府の借金が増えすぎ、民主党政権が誕生したのですが、反対に緩和をしなければいけないときに緩和をしなかったことから余計にデフレが進行しました。

最終的には安倍前首相が適切に緩和を行ったので、ようやくデフレから脱却したのです。

つまり、今の状態は金融緩和のし過ぎなのです。

気づいたときにはデフレの循環に…

金融緩和を続けた結果、お金はあれど買いたいものがない状況になり、余ったお金は貯蓄へ…

世界最大規模の金融緩和が行われている中、人々は去年買えなかったものをすでに買った状態であり、もう買うものがないと貯金に走っているのではないでしょうか。

一方で企業は、金利も安いし、金融機関の審査も不景気のときよりも甘いので、さらなる事業拡大を目指して設備投資をします。

しかし華々しい計画の割りには売れないと、時間が経過するごとに気づくことになります。

つまり商品やサービスの供給は潤沢なのに売れない、これがデフレなのです。

金融緩和はもう必要がないというときにさらに金融緩和を行い、カネ余りの経済にしようとすると必然的にデフレになるということです。

そして、消費者が財布のひもを固く閉めているときに、一生懸命供給を行い、経済が真綿で首を絞めるように悪くなってくる。

気づいたときには不景気の循環、デフレの循環から抜け出せなくなるのです。

かつて日本経済がはまった流動性の罠にはまっているのです。

流動性があっても消費がなければ、経済は活性化などしません。

終着点はデフレの循環です。

金相場を目先と長期の視点で見ると…

デフレになったら金はどうなる?

今はインフレ懸念ですので、金の価格構成要因からいえば、ドルは値下がりします。

また、インフレということは金利が上昇しますが、金利を中央銀行は低く抑えているので、金が強いことになります。

そして、デフレとは通貨の価値が強いということなので、金の価格は弱くなります。

金利は物価が下がるので、金の価格は強いことになります。

しかし、インフレを促進するために最終的には金利を上げざるを得ないでしょう。

となると、金価格は暴落することになります。

これが長期の展望です。

目先は、日米ともに金融緩和を行っているので金は買いです。

しかし、金融緩和を行うということは通貨が弱くなるということですが、実際は通貨の価値が9月6日まで上昇をしているので、金の上げ幅が皆さんには物足りないと感じることになります。

この記事のまとめ

今回の記事では、実際にはあまり景気がよくはない今、金融緩和をしすぎた結果、すでに買うべきものを買ってしまった消費者は消費を控える傾向にある。

よって企業の商品やサービスの供給は潤沢なのに売れず、気づいたときにはデフレの循環へ…。

金相場の目先は、日米ともに金融緩和化で通貨が安くなることから金は買い。

ただし長期的に見てデフレ突入後を考えると、インフレ促進のために最終的には利上げせざるを得ず、金利高は金の下げ要因なので金は暴落。

こういう内容の記事でした。