東京オリンピックが開会しました。
今回は、オリンピック開催となるとマーケットにも影響を与えるということを解説します。
「日経平均が弱い」という声が相次ぐが…
今年2月に最高値を記録した日経平均は4月以降、下値を探っている状態です。
さらに7月に入ってからは、アメリカ市場が最高値を更新する場面がある一方で、日経平均は戻らず安値に低迷したままになります。
これに対して市場からは、「政府や日銀が無策だから」という声が大きいですが、これは間違いです。
確かに日米の経済指標を比較すれば、弱いのは歴然としています。
一番懸念されているのは消費者物価指数、つまりインフレ指数ですが、アメリカが5%を記録しているのに対し日本は1%未満。
この理由は、以下のとおり当コラムで何回かにわたって指摘しているように、去年極端にドルが安かったためです。
インフレ指数は為替レートに遅れて半年後に影響してきますので、現在6月までのインフレ指数が発表され、今後は年明けになってきますので、アメリカのインフレ率は落ち着いてくるでしょう。
相対的に日本はドル安であれば円高であったので、インフレ率の伸びが悪いのではないのです。
ですから日経平均の弱さは事実ですが、これは去年の通貨高の影響を受けた結果であり、円安になっていけば解消していくでしょう。
7月に入ってからの日経平均の弱さと五輪の関係

2013年に今や小泉新次郎の嫁となった滝川クリステルが「お・も・て・な・し」と言って東京オリンピックの招致が決定しました。
そうです、東京オリンピックは、世界の皆さんをおもてなしすることによって成り立つのです。
ですからパンデミックで海外に出かけることは禁止されていますが、オリンピック関係者や選手、そのほかのメディアなどが大挙して日本に入国しています。
その人たちが日本で無一文で過ごすわけもなく、当然、日本円で買い物をしているわけです。
その円需要がここ最近、非常に盛り上がっているのです。
過去のオリンピックでもそうですが、開催1ヵ月ほど前から大量の外国人が流れ込み、現地通貨需要によってその通貨価値が押し上げられ、結果的に通貨高から株価が急落するのはいつものことなのです。
競技が終わるにつれて株価も回復する

現地通貨需要による円の価値の上昇は去年からわかっていたのに、「日経が弱いのは政府や日銀のせい」という主張は、いくら自由な議論が保証されている日本とはいえ、無知もほどほどにしなければなりません。
もちろん、ドル円レートがほとんど動いていないように見えるという反論があるでしょうが、ドル円はドル÷円で決定されており、ドルが上昇する中で円も上昇しているので動いていないように見えるだけです。
逆に言えば、7月23日の開会以降、競技が終了するたびに残った円をそのほかの通貨に両替する行為が主流になるので、円の単体は安くなっていき、つられて株価も上昇していくでしょう。
この場合、円は弱くなるけれどもドルは強いままですので、ドル÷円の分子のドルは大きくなり、分母の円は小さくなるので円安に転じます。
今回のオリンピックはパンデミックの中での開催で、おそらく選手、関係者は外出もままならないので、できるだけ早く出国して母国に帰る行動が起こるでしょう。
つまり、いつものオリンピックイヤーの動きとは違ってくるということです。
オリンピックで金はどうなる?

金が現在大きく動いていない理由は、ドルが上昇する中で長期金利が大きく下がっていることが影響しています。
金の価格決定要素【1】ドルと【2】金利が反相関になっており、プラスとマイナスが相殺され結果的に動かなくなっているのです。
今後、円が安くなりドルが高くなっている状態で、金利はようやく短期、長期金利も上昇し始めている状態です。
この状態は金にとってネガティブであり、金利高、ドル高は金の弱気要因になります。
これはドル建ての話ですが、円建ては円安になりますので、ドル建てが下がるほど下がらないでしょう。
この記事のまとめ
今回の記事では、「日経平均が弱い」のは政府・日銀が無策だからではなく、前年の通貨高の影響を受けた結果であり、またオリンピック開催で多くの外国人が訪日し、円需要が上昇、すなわち円の価値が上がっていることから。
閉会が近づくにつれて円安へと向かい、日経も回復していくだろう。
現在、金相場が大きく動いていないのは【1】ドル高(金にマイナス)と【2】金利安(金にプラス)が相殺しているから。
これから円安ドル高となり、金利も上昇し始めているとなれば、金は下がるだろう。
こういう内容の記事でした。