深刻化する米中対立 | 激突の可能性と金相場への影響

「戦争と金」、これは金投資をする人にとって必ずぶち当たる命題です。

現在の米中対立は深刻化しています。

今年4月の日米首脳会談や6月のG7の共同声明でも台湾海峡問題が明記されまたように、中国が台湾に武力侵攻する可能性さえあります。今回は、米中対立と金相場についてです。

対立の根幹としての台湾問題

台湾を率いる民進党の蔡英文総統

問題の根幹は、2018年に中国が憲法を改正し、核心的利益の中に台湾の統一が含まれると明記したことにあります。

そして2020年、返還から50年間は香港の民主主義を保証するという英中間の約束は、民主化運動の弾圧によって反故にされました。

これを受けて同年7月、当時のポンペオ米国務長官が「アメリカと中国には対立がある」と表明したところから対立が本格化しました。

政権が民主党に移り、アメリカの中国への対応が変わるかが注目されましたが、実際はトランプ政権の継承というかたちになって現在に至ります。

これは結局、民主主義と共産主義の対立です。

中国共産党は自身の正当性を高めるために台湾を統一したいという思惑があり、アメリカは力による現状の変更を認めないという姿勢になります。

今の台湾は自由と民主主義を推進する民進党が政権を握り、中国共産党に迎合する機運はほとんどないと言ってよいでしょう。

それに業を煮やした共産党が、武力行使によって台湾を併合する可能性があるという点に問題があるのです。

中国共産党の思惑

チベット自治区のラサに立つ中国共産党の歴代指導者を称える看板

中国は、北朝鮮をはじめルーマニアのチャウシェスク、リビアのカダフィ、古くはヒトラーなどの独裁政権とあまり変わりません。

国内では共産党の悪口など言えませんし、それをインターネットで監視している社会になります。

国民は、経済成長で生活が豊かになっていることで、共産党の独裁政権を我慢しているだけ。

この成長が止まれば民心が共産党から離れることがわかっているので、一帯一路政策をはじめ対外膨張するほかないのです。

チベット、ウイグル、新彊、モンゴルなどへの人権弾圧は結局、不満分子が国内で暴動を起こすと収拾がつかなくなることから弾圧を強めているにすぎません。

また、台湾も中国の一部と主張しているのであれば、台湾が全く違う政治体制になっていることも我慢がならないというのが共産党の主張になります。

仮に中国が台湾に武力侵攻したとしても、アメリカも台湾をも含めた「一つの中国」を認めており、国内問題にアメリカが首を突っ込むことはけしからんとけん制している状態です。

もちろん香港の問題も同様で、中国の国内問題に首を突っ込む西側同盟がおかしいという主張になります。

アメリカの論理構造に基づいた懸念

ニューヨークのリバティ島に立つ自由の女神像に象徴されるように、自由と民主の精神はアメリカの存在意義そのもの

アメリカが世界の民主主義と自由主義を代表する国家であることは自他ともに認めるところです。

ソ連が共産主義で膨張した時、ようやく文化大革命が終了した農業国家、中国に手を差し伸べたのがニクソン大統領のアメリカであり、国交を正常化させました。

これはもちろん、中国の北にあるソ連に対抗するための措置です。

ところが、その後の鄧小平の改革開放路線、すなわち社会主義と資本主義をミックスで成長を遂げ、今やアメリカを凌駕するような勢いで成長しているのが誤算でした。

習近平主席からG2を提案されたオバマ政権が、これを蹴飛ばしていることからもわかるように、覇権を中国に握られる恐怖に加え、根本的に自由と正義の伝道者という自負があるアメリカは、独裁と恐怖政治である中国とは相容れないという思いが強いのです。

神の存在を認めず、人が人を指導する共産主義国家群を自分たちの仲間とは認めないという論理構造があるのです。

関与政策から封じ込め政策へ

トランプ共和党政権で国務長官を勤めたマイク・ポンペオ氏

それなりの国家規模となったのなら、今までアメリカが負担してきた国際公共財産を維持するための費用を今度は中国が負担すべきという考えがアメリカにはあります。

トランプ政権時に米軍基地の費用を日本がある程度負担するよう散々言われたのは、同様の考え方から来ています。

ところが中国はアメリカが敷いた安全保障にただ乗りし続けるだけでなく、あろうことか南沙諸島などの航行の自由や台湾海峡での航空の自由を制限しています。

これはアメリカに挑戦しているのだという懸念がずっとあったのですが、トランプ政権後半のポンペオ発言を契機にアメリカの政策が転換しました。

すなわち、関与政策から封じ込め政策への移行です。

関与政策とは、仲間とは認めないけど仲良くやっていきましょうという政策ですが、封じ込め政策とは敵と認識することになります。

かつてのソ連のように、去年から今年にかけて中国が仮想敵国になったということです。

ただし米中双方ともに経済的な結びつきが強く、すぐさま敵ということもできないので、むき出しの敵意を出さない状況なのです。

両国の道義的違いとは?

かつては日本が支配し、現在ではフィリピン、ベトナム、台湾、中国、マレーシアなどが領有権を主張する南沙諸島。スプラトリー諸島とも呼ばれる

米中の対立は中国の譲歩によって多少緩和される可能性はありますが、アメリカの圧力は今後も緩和はされないでしょう。

それが激化した場合は、台湾への武力侵攻もあり得ます。

そしてアメリカは、このことに相当の警戒を示しています。

一方で中国は、そもそも共産党の力の源泉とは、経済的な活力から来ていることを百も承知です。

今後も年6%程度の成長を起こさなければ、国内の収拾がつかなくなることをよく心得ています。

その人民の不満を解消する手段として、世界への影響力を拡大するという選択肢を選択しているだけにすぎません。

両者の違いは、アメリカは世界に自由と民主主義を広げることによって自国の価値観を啓蒙すること、一方で中国は単なる国内問題の解決のためにやっているだけという点になります。

米中対立は今後ますます激化する!

2020年の香港民主化デモの光景

このボタンの掛け違いの修正は、2020年に起きた香港の実質上の併合によって無に帰したと言えるでしょう。

そして、矛先が台湾併合にまで迫っているということがアメリカの不満ですが、中国は単に自分たちの独裁政権を維持するためにやっているだけ。

どちらにせよ今のアメリカの対中制裁によって、中国経済は沈下する可能性が高く、余計に政権維持には困難が待っているので、一帯一路の推進や台湾併合の圧力は強まっているという現状は変わることがないでしょう。

つまりこの対立は中国の軟化によってしか緩和されることがなく、その軟化はほぼ無理というような状況なのです。

ですから対立は今後ますます激化していくかたちになり、日本の尖閣諸島や台湾の情勢は日を追うごとに危機が迫るでしょう。

日本も平和ボケなどしてはいられない状況なのです。

世界一の産金国である中国に危機が訪れれば…

北京のゴールドショップ。中国人は金がお好き!

中国は世界一の金生産国、そして消費も世界有数という事実を忘れてはいけません。

そして、米中の対立がさらに高まっていけば、西側諸国と中国経済のデカップリング、つまり切り離しがどんどん加速する可能性が高いということ。

現実にファーウェイなどの締め出しが図られていることは周知の事実でしょう。

西側諸国からデカップリングを迫られた中国人は、現在の繁栄が西側諸国によってもたらされていることくらいは理解しているので、人民元の価値が急落することはわかるはず。

その逃避先はやはり金やアメリカになるでしょう。

また、ビットコインのオーナーの9割以上は中国人です。

中国人がこぞってビットコインを買う理由は、中国共産党への不信感の表れと考えるのが自然、そしてそのビットコインを共産党が徹底的に弾圧するのも自然な流れです。

影響がどう出るかはわかりませんが、中国人の富の一部は金に流れるのは確実と言えます。

この記事のまとめ

今回の記事では、米中対立においてアメリカは、自由と民主主義の伝道者であるという自国の根本原理および力による現状変更を認めないという姿勢という観点から、対立を緩和させることはない。

また中国も、対外膨張をしてまでしても自国の成長を維持しなければ人民を掌握し続けられないという観点から、もはや引くに引けない。

このまま対立が深刻化し続ければ、中国経済の富の源泉でもある西側諸国とのデカップリングが進行し、結果、人民元の価値が急落。

現在のビットコインがそうであるように、確実に中国の富が金に流れる!

こういう内容の記事でした。