白金とパラジウム上昇の理由【2】需給から価格動向を考える

今回は、読者の方から白金の需給から価格動向を説明してほしいとの要望がありましたので、金に対する白金(プラチナ)の特徴にも触れた上で、その解説をしてまいります。

前回のコラムでは…

前回、白金やパラジウムの価格が上昇している一因に「中国による爆買い」の可能性を指摘しました。

白金とパラジウム上昇の理由【1】背景に中国の影あり!?

これを詳細に解説するためには、世界情勢の動向を説明する必要があるので、まとめて次回記します。

白金は工業用需要のほかに投資需要も旺盛であり、この投資需要に中国による爆買いという側面をも合わせて持っているのです。

白金の価格動向

白金の価格動向は以下のとおりです。

参照元:TRADING ECONOMICS

去年の新型コロナショックで安値をつけ、その後は価格が上昇しているのはほかの株式などと一緒です。

以下のチャートは茶色線がドルインデックスで、すなわちドルの価格になります。

参照元:TRADING ECONOMICS

ドルの価格が下がれば下がるほど白金の価格は上昇しており、ドルと白金の反相関関係は明白です。

ところが、直近の3ヵ月を見てみましょう。

参照元:TRADING ECONOMICS

ドルインデックスは年明けからだんだんと上昇してきており、ドルと白金が反相関の関係であるのであれば、年明けから下落して行かなければいけません。

にもかかわらず、白金は2月にドルが下落していることもありますが、2月の末から3月にかけてのドルの急伸に対して大して下がっていないことがわかります。

金と白金の違い

自動車の底面に取り付けられている触媒コンバーター

この解説をする前に、金と白金の違いについて説明しておきます。

金は誰もが知っている資産なのに対して、白金は財産というよりも工業用品としての需要があります。

金の価格構成要因は【1】ドル、【2】金利、【3】GDP(国内総生産)となりますが、白金は工業品需要が大きいので【2】の金利はあまり重視されません。

なぜなら白金を万が一に備えて保管していくという発想がないのです。

最近では、中国人を中心に白金を退蔵することによって万が一に備えようという動きも散見されますが、ここ20年くらいの話です。

こういう発想が生じたのは1997年ごろに起こったパラジウムショックによって、白金やパラジウムの価格が高騰したからです。

ところがその後、白金やパラジウムの触媒需要が炭素などの代替品にとって代わり、需要が減退したことによって価格は沈静化しています。

それによって、白金やパラジウムの投資需要は減退しました。

金に対する白金の特徴と価格構成要素

ツタンカーメンの黄金のマスク

一方で金は人類の有史以来、財産としての価値を持っています。

例えば、古代エジプトのツタンカーメンのマスクが金ピカなのは、金に価値があると認識されているからになります。

つまり、3000年近くの歴史を持っている金が財産として認識されるのは当然です。

金は退蔵する物ということは、ほかの金融商品が預金や株などは利息や配当がつくのに、金にはないということです。

ですから、金は市場の金利が上昇すれば退蔵するよりも預金や株式などを保有していた方が有利だということで、金利が高い時に金の投資ブームは起こりません

今は金利が世界各国で史上最低を記録しているので、金の投資ブームが起こっているのです。

一方で白金は、退蔵人気はここ20年の話であり、3000年の金と比較しようがありません。

おまけに価格も低迷していますので、退蔵には不人気です。

またGDP(国内総生産)は工業品需要によって左右されますので、白金価格にとって重要な指標になります。

つまり、白金の価格は【1】ドルと【2】GDPによって構成されていることを認識してください。

ジョンソンマッセイ社による世界PGM報告

ジョンソンマッセイ(JM)という会社をご存じでしょうか?

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%83%E3%82%BB%E3%82%A4

引用元:ウィキペディア

白金やパラジウムの取引を行う者にとって、毎年2月にジョンソンマッセイ社が発表する前年の需給動向とその年の需給予測は重要な資料です。

今年は2月18日に発表されました。

このジョンソンマッセイ社の需給予測を見る前に重要なことを一つ。

上記のウィキペディアの説明にもありますが、同社は自動車触媒や金属化合物を扱う会社で、この会社は白金やパラジウムなどのPGMの値段が上昇すればするほど儲かる会社です。

よってこの会社が需給予測をするのは利益相反となり、すなわち価格が上昇しやすいように需給予測を行う可能性があります。

それを念頭に発表を見ていかなければいけません。

ジョンソンマッセイ社の2021年の需給報告

https://matthey.com/-/media/files/pgm-market-report/pgm-market-report-feb-21-japanese.pdf

引用元:ジョンソンマッセイ

これによると、需給ともに2020年3期末までで双方20%の需給が減少したとあります。

そして、2021年は19トンの在庫の取り崩しが行われるとの予想です。

そこで一番最初の白金の価格が3月にドルが急騰していてもあまり価格が下がらないことが説明がつきます。

そして、以下の過去25年の白金の足グラフを見てください。

参照元:TRADING ECONOMICS

リーマンショック前まで大きく価格が高騰し、今年もこれだけ急騰しています。

リーマンショック前とは、世界的に排気ガスの汚染が問題になっていた時代です。

これを除去するためには、自動車のマフラーに白金やパラジウムの触媒を混ぜなければいけないという需要でした。

ところが上記のジョンソンマッセイ社の発表を見ると、自動車触媒の需要は年々減っています。

つまり、この触媒需要は炭素などに代替させられているという認識になります。

白金急騰の材料は何か?

海水の中に金は0.00001グラム程度どこにも存在している

2021年にこれだけ急騰するということは、何かの材料が必要になるということです。

新しい白金の需要、それとも何でしょうか?

携帯電話やパソコンから金などの貴金属を取り出し、東京オリンピックのメダルを作るというような需要が起こっているように、白金のリサイクルも相当なものになっています。

貴金属は劣化しないことが特徴で、自動車が廃車になったとしても触媒として使われる、マフラーや蓄電池に使われる白金やパラジウムも再生可能な貴金属です。

以上を踏まえると、白金の需要など伸びるわけがありません。

ほかの工業品用途も同じです。

その商品は廃品になったとしても貴金属は再生できます。

これは金の需給報告にも書かれていますが、ジョンソンマッセイ社の報告にも書かれていることです。

例えば、金箔入りのお酒やお料理などたくさんありますが、あれが体内で消化されることはありません。

つまり、貴金属はいったん掘り出したら地球上のどこかに必ず存在するのです。

こうやって考えていけば金や白金、パラジウムなどは、年数が経過すればするほど需給は緩んでくるのです。

新たな需要がないのに、白金の需要がタイト化することは考えられません。

高騰の犯人はやはり中国の爆買い?

ジョンソンマッセイ社の需給報告は、工業品の素材担当やPGMを予測する人たち、トレーダーにとっては絶対に見なければいけない資料

ジョンソンマッセイ社の需給報告は、工業品の素材担当やPGMを予測する人たち、トレーダーにとっては絶対に見なければいけない資料です。

しかし、それを知らない方も大勢いらっしゃいます。

少なくとも方向性を決定づけるものですが、上記25年のグラフで示したように、あのような価格の高騰は新規の需要が発生しなければないものです。

では何が起こっているのかと考えると、やはり前回説明した中国の爆買いというのが妥当な推測になります。

この記事のまとめ

今回の記事では、これほど白金が急騰したのにもかかわらず、主な用途である工業面で新規の需要が増したことは考えられない。

万が一の退蔵用としてもたかが知れている。

やはり中国による爆買いの影響と考えるのが妥当。

こういう内容の記事でした。

次回はなぜ中国が爆買いをするのか、その理由と白金価格との関係を解説していきます。