ドナルド・ジャッド/Donald Clarence Judd

ドナルド・ジャッドのアートスタイル

ドナルドジャッドによるコンクリートの彫刻。
所属元:チナティ財団- テキサス州マーファ。
参照元:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Donald_Judd_Concrete_Blocks.jpg

表現形式

  1. 絵画
  2. 彫刻(造形)
  3. インスタレーション

表現ジャンル

  1. コンセプチュアル・アート
  2. ミニマルアート

ドナルド・ジャッド作品の特徴と魅力・評価ポイント

極度に単純化した対象物を規則的に並べる…ジャッドのベーシックスタイル

「ドナルド・ジャッド/Donald Clarence Judd」とはどのようなアーティストだったのか?

そして作品の特徴と魅力をひもといてみました。

特徴と魅力 

ミニマリズムを追求したもっとも偉大なアーティストとして知られる「ドナルド・ジャッド/Donald Clarence Judd」

シンプルなボックスを壁に等間隔に並べた「スタック」をはじめ、極限まで表現を押さえたミニマル・アートの巨匠として今もアート界に大きな影響力を持っています。

 

※東京表参道にある「プラダ 青山店」を設計したヘルツォーク&ド・ムーロンもそのひとり。

同店舗は外壁全体を菱形のガラスが多い、東京観光のフォトジェニックスポットとしてSNSで人気。

表参道建築スポットの一つ「PRADAプラダ青山店」

ミニマリズムとは、ジャッドが脚光を浴びた1960年代中頃のアメリカで大きなムーブメントとなった表現スタイルです。

近頃ではインテリアやファッションなどのライフスタイル用語としても「ミニマリズム」「ミニマリスト」というキーワードをしばしば見かけます。

「シンプルさの中にこそ美はある」といった主旨で利用されているようです。

アートの世界でミニマリズムの中心となったのは

 

従来の装飾そして情感に満ちた芸術表現を取り去る

 

という考え方です。

時として作者の意図すらつかめないような単純化されたミニマル・アートは、「描写で伝える」従来の絵画表現の否定がスタート地点なのです。

ミニマリズムが脚光を浴びる前の1950年代は、難解で装飾的で人間の情感に満ちた抽象表現主義が主流でした。

ジャッドはじめ若い世代のアーティストたちは、もっとクールでモダン自由で新しい感覚の表現方法を目指しました。

なかでも激しく旧弊な芸術表現を嫌ったジャッドだからこそ、ミニマリズムの急先鋒となりえたのです。

 

そしてジャッドの遺作が日本に残されていることをご存知でしょうか?

 

東京都立川市にある「ファーレ立川」の道路沿いのオブジェ「無題」です。

https://www.faretart.jp/art/242/

この作品は、依頼を受けたときすでに病床にあったジャッドが最後に遺した遺作となりました。

 

現代アート史に偉大な足跡を残したジャッドはまた美術評論家出身のアーティストでもあります。

ウィリアム・アンド・メアリー大学(ハーバード大学に次ぐアメリカで2番目に古い大学)コロンビア大学などで深くアートを学びました。

いわば学者肌だったジャッドは大作「スペシフィック・オブジェクツ(ミニマリズムの理論書)」はじめ多くの著作も残しています。

 

また絵画や造形だけでなく、建築や家具デザインまで手掛けました。

そしてすべてのジャンルにおいて、今なお後進のアーティストに影響を与え続けています。

評価ポイント

色と形を極限まで制限した作品を提示することで、逆に観客に美そしてアートの意味を問う「ミニマル・アート」は、ジャッドによって一つの完成形を見たといってよいでしょう。

ミニマリズムの根幹にあるのは、シンプルな形状の物体(ミニマルオブジェクト)を展示空間に配置することで観客が「純化された」作品と対峙することを目指したもの。

ジャッドは、

だの箱に見える立体を規則正しく並べた「スタック」

床に置くことで作品と空間の関係性を追求した「レリーフ」

 

などの自作品から視覚的な要素を徹底的に外しました。

そうすることで観客の「自発的」な体験を妨げず、観客が「作品と対峙する」体験を与えることに成功しました。

 

ともとして「ものがたり」を提示するクラシックな絵画、彫刻作品は私たちに考える余地を与えません。

しかしジャッドら現代アートの作品は、物語や物体を表現することを目的としていないのです。

彼らが表現しようとしたメッセージを受け取るだけであり、それ以上のことを少なくともジャッドは望んでいませんでした。

 

またジャッドの生きた時代背景について理解しておくことも作品理解に不可欠です。

ヨーロッパ(主にパリ)から、アートの発信地というポジションを奪取したニューヨークのアーティストたち。

使い古されたアート表現の慣習を否定し、自分たちが創り出す新たなスタイルに没頭したアーティストたちの夢の跡。

その軌跡を私たちはただたどるだけです。

ドナルド・ジャッドのプロフィール

テキサス州マーファの自宅。ミニマリズムらしい無駄のない外観が印象的

「ミズーリの自然に親しんだ」幼少期

1928年 ミズーリ州に生まれる。

ウエスタンユニオン(民間金融機関。海外では小口送金窓口としておなじみ)の幹部だった父ロイクラレンスとエフィーのもとで愛情に恵まれて育つ。

「アートを学び抽象画を創作」青年期・学生時代

1946年 兵役のため韓国駐屯。

1948年 ウィリアム・アンド・メアリー大学(バージニア州)に入学するも中退。

1949年 コロンビアで哲学を専攻。

同時にニューヨークのアート・スチューデンツ・リーグで絵画を学ぶ。

抽象画作品製作スタート。

1957年 ニューヨークで初の個展開催。抽象表現主義の絵画だった。

「気鋭の美術評論家として名を挙げた」創作初期

1959年から1965年までのジャッドはアーティストというよりは芸術評論家として活動。

従来の絵画表現方法は終わったという自説を展開。

月に平均数十に及ぶレビューをこなした。

1965年 「スペシフィック・オブジェクツ」上辞。

「ミニマル・アートの旗手として躍進」創作中期

1962年 ブルックリン芸術科学研究所付属の美術館のグループ展にて、床上に立体レリーフを並べ周囲の空間の重要性に視点を置いた作品を展示。

1963年 ニューヨークのグリーン・ギャラリーで個展を開催。のちのスタックの原点となるて床に置かれた箱型の作品を発表。

以後壁に同じ形の立体物が縦一列に並べられる「スタック」形式によって多くの作品を創作した。

1968年 ホイットニー美術館で回顧展が開催

「創作と同時に環境保護に取り組んだ」創作後期・現在

1977年  テキサス州マーファに移住。

45,000エーカーの牧場と周辺の土地あわせて1.5キロ平米の土地を購入。

実験的な建築作品を創作する場とした。

また同時にスイスのキュスナハトアムリギにも拠点を持ち、頻繁に行き来した。

1986年 マーファにてシナティ財団を設立。

既存の美術館展示を良しとしなかったジャッドは、自作および現代アート作品の保管を目的として財団運営をスタートした。

同時に非営利美術館として自作と「ジョン・チェンバレン」「ダン・フレヴィン」の作品を展示した。

現在も一般の観光客でもガイドツアーに参加して見学することが可能。

1994年 悪性リンパ腫によって死去

ドナルド・ジャッドの代表作

ドナルドジャッド、プロトタイプの机と椅子。ロサンゼルス郡立美術館とハンティントン図書館、アートコレクション、植物園が共同で所有

「テーブルオブジェクト」

アルミニウム鋼板を並べたオブジェクト。

スミソニアンアメリカンアート美術所蔵作品。

https://americanart.si.edu/artwork/table-object-12778

「無題 スタックスタイル」

壁に同じフォルムのボックス型立体が縦一列に並べられる「スタック」スタイルはジャッドの代名詞的創作スタイル。

ジャッドによって極めて制限された「色」「形」の作品は、簡略されるほどに研ぎ澄まされた美を実現している。

ミニマル・アートの極致とされる作品。

しかしほぼすべての作品タイトルは未設定。

ドナルド・ジャッドの市場価格・オークション落札情報

テート美術館所蔵作品参照元:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Untitled_by_Donald_Judd,_Tate_Liverpool.jpg

「無題 TWELVE WORKS」  1,452,500米ドル

白い壁にタイトル通りの12色のアルミニウム製の板が並べられている。

 

2016年11月18日  サザビーズ/ニューヨーク

https://www.sothebys.com/en/auctions/ecatalogue/2016/contemporary-art-day-auction-n09573/lot.168.html

「無題(DSS 42)」 14,165,000米ドル

赤と黒で構成された作品。

鉱業用アルミ板、木材を使用。

 

193×243.8×29.8 cm

2013年11月12日  クリスティーズ/ニューヨーク

https://www.christies.com/lotfinder/sculptures-statues-figures/donald-judd-untitled-5739116-details.aspx?from=searchresults&intObjectID=5739116

「無題(ベルンシュタイン89-24)」 10,162,500米ドル

銅と赤のプレキシガラス(主材料はアクリル樹脂)の板を縦に並べた棚状の立体作品。

ジャッド作品中最も評価が高い「積み重ね(スタック)」スタイル。

2012年11月14日  クリスティーズ/ニューヨーク

https://www.christies.com/lotfinder/sculptures-statues-figures/donald-judd-untitled-1989-5621968-details.aspx?from=searchresults&intObjectID=5621968

ドナルド・ジャッドの作品と出会える場所

マーファにある作業場

静岡県立美術館

「無題」

http://spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/collection_vote/artist.php?AD=sa—donald_judd

東京都現代美術館

「無題」

https://www.mot-art-museum.jp/

ドナルド・ジャッドの最新トピックなど

2020年初めから続くCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の感染防止のため閉館中だったミュージアムも徐々に再開しています。

しかし世界最大の展覧会「アート・バーゼル(スイス)」中止のニュースが入ってきました。

本来は6月開催予定でしたが、コロナの影響により9月に延期するも2020年中の開催は断念という残念なニュースです。

 

アートファンにとっては我慢の時期ですが、こんな時こそ公共の場にあるアート作品や、オンライン公開されているWEBミュージアムに注目したいもの。

 

3月に行われるはずだったニューヨーク近代美術館(MOMA)の「ドナルド・ジャッド」の開催が延期となったため、オンラインで公開されることに。

 

※本来ならば2019年リニューアルによって新設された最上階フロアでのダイナミックな展示が見られるはずでした。

https://www.moma.org/calendar/exhibitions/5076

また過去の本人のインタビュー動画も視聴可能です。

https://youtu.be/3gf6AHPKTgQ

 

ステイホームでもアートは楽しめる!

ぜひご覧になってみてください。