ジョン・ケージ/John Milton Cage Jr.

ジョン・ケージのアートスタイル

前衛音楽 実験音楽

※音楽家ではあるが、晩年は「WHERE R = RYOANJI」などの版画やドローイング作品を残した。

ジョン・ケージ作品の特徴と魅力・評価ポイント

ジョン・ケージというアーティストやその作品の特徴と魅力をひもといてみました。

特徴と魅力 

ピアノの前に演奏者が座り、鍵盤に触れることなく退場する…

このあまりにも有名な「4分33秒」は20世紀最大の異色な音楽家「ジョン・ケージ/John Milton Cage Jr.」の代名詞ともいえる作品です。

演奏が行われるはずの場所で、聞こえてくる全ての音こそ音楽であると定義した4分33秒は、発表当時大きな論議を巻き起こしました。

この作品によって沈黙の中にも音が存在し、世界は音楽を奏でていることを示しました。

 

またノイズすら音楽となりうることを「プリペアド・ピアノ(グランドピアノの弦に金属や木片を置きピアノの音色を変化させる)」で提示しました。

ビートルズヴェルヴェット・アンダーグラウンド(ジョン・ケイル)、フランク・ザッパらケージと同時代に活躍したミュージシャン達にも大きな影響を与えました。

ケージによって私たちは

オーケストラの演奏や声楽家のコンサートだけが音楽ではないこと

作曲家や演奏家の意図など一切考えなくてよいこと

楽器によるもの以外の世界に存在するすべての音に耳を傾けること

自分たちが存在する世界に響く音楽の存在に気付き楽しむことを教えられます。

 

「私は私が知っている最も幸せな人です 」

Empty Words より

 

音楽を聞くことの意味を根本から問い直す刺激的なケージ作品の数々。

死後20年以上たつ今も鋭く聞く者の耳にそして心に刺さります。

評価ポイント

20世紀を代表する前衛音楽家であるジョン・ケージは、作品のすべてが誰にも試みられることのなかった実験作品です。

音楽の定義を広げる、というよりは根本からくつがえしたことで音楽の歴史が大きく変わったといっていいでしょう。

 

無音の中に音楽が存在すると主張する「4分33秒」

偶然から楽譜を生み出す「チャンス・オペレーション」による「竜安寺」

東洋文化の易とコイントスによる「易の音楽」

展示作品そして展示場所が集変化する展覧会「ローリーホーリーオーバーサーカス」

 

およそ従来の複雑さが増す一方だった音楽家たちの製作スタイルとは対極をなすものでした。

 

「過去の巨匠を超えたい」「後世に名を残したい」と熱望するあまりに、譜面の複雑さは増すばかり。

しかし何世紀も演奏され続けてきた名曲を超える作品を残すことはほとんど不可能なこと。

 

そこでケージは人間が生み出すハーモニーやメロディの構築から、自然に存在する音に目を向けました。

「音」を作為なく拾い上げる(易の音楽)、もしくはただ「音」に耳を傾ける(4分33秒)ことで

音楽の新しい可能性、そして美しさを示唆したのです。

 

音楽への新しい概念、アプローチを示したケージは、20世紀現代音楽に最大の功績を残したといえます。

64種類の爻卦(こうけ 上下3本の線)で占う「易」。ケージは楽譜に取り入れた

ジョン・ケージのプロフィール

ドイツ「ドナウエッシンゲン音楽祭」75周年記念切手。ジョン・ケージの楽譜が印刷されている

中産階級の優等生だった幼少期

1912年カリフォルニア州ロサンゼルスで発明家の父と新聞記者の母のあいだに生まれる。

ロサンゼルス高校をでは卒業生総代をおさめるなど学業優秀。

ピアノを短期間習ったが大きな関心は抱かなかった。

「ヨーロッパで音楽に開眼した」青年期・学生時代

大学に進むも学習意欲を失い単身ヨーロッパへ。

彼の地でバッハなどの古典、現代音楽に触れたことで音楽の道に進むことを決意

1931年にアメリカに戻り、ヘンリー・コウェル、リチャードブーリッヒ、アーノルド・シェーンバーグ、アドルフ・ヴァイスに学ぶ。

1934年U.C.L.A.にてアーノルド・シェーンベルグ(十二音技法を体系化した作曲家)に師事。このころから自作曲を発表しはじめる。

「師そしてパートナーとの出会いと別れ」創作初期

シェーンベルクの影響色濃い時代。「クラリネットのためのソナタ」「コンストラクション」などリズム重視の作品が多い

1935年ロシア人ゼニアと結婚するが間もなく離婚

1937年シアトルのコーニッシュ・スクールでマーサ・カニングハム(モダンダンスの巨匠)と出会う。

以降二人は終生恋愛関係となる。また二人の凶作による舞踏作品も多く生まれた。

ジョン・ケージがLGBTアーティストとしても知られるゆえん。

二人の間で交わされたラブレターは書籍にもまとめられている(「The Selected Letters of John Cage」)。

「4分33秒誕生!音楽の歴史を変えた」創作中期

ジョン・ケージを有名にした「4分33秒」を発表した時代。

この時期には東洋哲学に傾倒し、多くの作品にその影響が感じられる。

 

1940年プリペアド・ピアノを考案し、「バッカナル」を発表

1945年コロンビア大学にて鈴木大拙に禅を学ぶ

1956年ニューヨーク社会研究所にて講師を務める

「音楽以外にも活動の場を広げた」創作後期・現在

 

徐々に音楽以外の活動(詩作や絵画など)が増え始めた。

「だんだん音楽に興味を持たなくなっている(月曜日からの一年より)」一時は音楽への情熱が薄れた時期もあった。

しかし晩年には日本の「龍安寺」の石庭に感銘を受け「Ryoanji」を発表。

ふたたび音楽への情熱を取り戻した。

 

1988年ハーバード大学 詩学教授就任

1989年稲盛財団より「京都賞(思想・芸術部門)」を授与される

1992年脳溢血により死去

ジョン・ケージの代表作

プリペアド・ピアノのためのソナタとインターリュード

ねじや消しゴムをグランドピアノの弦に取り付けて(プリペアド・ピアノ)打楽器のような音を表現。

一音ごとに細かく取付位置が決められていた。

4分33秒

音楽史に残る衝撃を与えた「無演奏」の作品。

演奏される会場の音が作品の要素のすべてとなる。

ダブル・ミュージック

アメリカの現代音楽の巨匠「ルー・ハリソン]との共作。

ピアノの調べにガムランの響きが渡る名作。

ルー・ハリソンは世界の民族音楽にインスピレーションを得た作品を多く残した。

ハリソンとジョン・ケージは本作制作後に音楽の方向性の違いによって決裂。

フォンタナ・ミックス

当時の最先端技術である磁気テープを使ったカセットテープを利用した。

様々な曲のコラージュで構成されている。

オルガン2/ASLSP

事実上世界最長の演奏曲。

「可能な限りスローに」演奏してほしいというケージの意をくみ取り、2000年から639年かけて「ブキャルディ廃教会」のパイプオルガンで演奏されている。

639年という年数は「ブルヒャルト教会最初の音楽演奏が1361年」という史実にちなむ。

ジョン・ケージの市場価格・オークション落札情報


「WHERE R = RYOANJI」 47,500米ドル

京都の「龍安寺」を訪れた際に石庭のドローイングを残した。

ケージ自身が選んだフレームに収められた25.4 x 48.3cmの作品。

2017年9月26日   サザビーズ/ニューヨーク

 

https://www.sothebys.com/en/auctions/ecatalogue/2017/collection-edward-albee-n09678/lot.94.html?locale=ja

「The First Meeting of the Satie Society」 116,500米ドル

作曲家「エリック・サティ」へのオマージュ集。

日付  クリスティーズ/ニューヨーク

 

https://www.christies.com/lotfinder/drawings-watercolors/john-cage-the-first-meeting-of-the-5413427-details.aspx?from=searchresults&intObjectID=5413427

ジョン・ケージの作品と出会うには?

Ryoanji作曲のインスピレーションとなった京都「龍安寺」石庭

音楽

CD他音源多数。

ジョン・ケージの全楽曲を聞くなら5枚組「ジョン・ケージ生誕100周年スペシャル・エディション (John Cage 100 – Special Edition) 」がある。

著作

「小鳥たちのために」

フランスの音楽家「ダニエル・シャルル」によるインタビュー集。

初期作品から、ジャズやロックなどの音楽批評まで内容は多岐にわたる。

「サイレンス」

ケージは多くの著作物を残した。

本作は彼の音楽観や思想の相対性といえるエッセイ集。

1939年から1961年に描かれたものを本作にまとめた。

ジョン・ケージの最新トピックなど

ジョン・ケージが亡くなったのは1992年のこと。

追悼するかのように1994年ジョン・ケージの大規模展覧会として行われたのが

「水戸芸術館現代美術ギャラリー」で開催されたローリーホーリーオーバー・サーカス」です。

毎日「なにか」が起きる「オーディトリウム」スペースでの展示や、日替わりで様々なアーティストによるパフォーマンスなど大きな話題を呼びました。

 

死後20年以上たった2020年1月にライブ演奏を収録した3枚組アルバム「ロリポップス~25周年レトロスペクティヴ・コンサート」が販売されるなど、今なおジョン・ケージの根強い人気がうかがえます。

 

4分33秒以外にも、幻想的でどこか切ない「Dream」元祖クラウト・ロック「ウィリアムズ・ミックス」などジョン・ケージの魅力は多彩です。

 

「私が死ぬまで音があるだろう。それらの音は私の死後も続くだろう。だから音楽の将来を恐れる必要はない」

 

と世界の隅々にまで音楽がしみわたっていくことを教えてくれたジョン・ケージ。

難解な作家というイメージを捨て、ぜひ様々なジョン・ケージ作品に触れてみてください。