昨今の金利状況
前回は、日本の景気は金利を上げれば回復していくという話をしました。
景気の上下動は、金融政策を上手に使えばおそらく今後、大不況や恐慌などはなくなっていくでしょう。
今回は、金利を引き上げたことによって日本の景気はどうなったのか、去年の年末を中心に話をしていきます。
ここ1年の金利の状況は以下のようになっています。
下記は日本国債10年物利回りです。
金利は、去年の9月を底に急激に上昇しています。
皆さんは、金利を引き上げることに疑問を抱くと思います。
住宅ローンなどの借金を抱えている方にとっては、おそらく支払い金額が増えていくことが恐怖だという意見が過半でしょう。
しかし、前回も説明したように、金利の引き上げは、預金や国債の利払い収入の増加をもたらし、物価の上昇は、貨幣価値の相対的な上昇を意味するので、住宅ローンの支払いも金額は増えていますが、お金の価値は下がっていますので実質的な支払金額は同じなのです。
この日本がゼロ金利になる以前、あの当時は公定歩合といいましたが、公定歩合が引き上げられる度に、景気がよくなることで皆が喜んだものです。
しかし、おそらく日本銀行が金利の引き上げを行えば、不安の声のほうが大きいと思います。
金利の引き上げによって起こる変化とは、雇用情勢の変化です。
ほとんどの企業が借り入れによって経営を行っていますので、金利上昇はコストの増大を意味します。
目の前のことしか考えていない企業経営者は、金利の引き上げに反対するでしょうが、長い目で見れば消費が堅調になるので、企業にとっては売上の増大につながります。
金利上昇でダメ経営者があぶり出される

今の経営者は雇用を守らずに、おそらく金利の負担が増えたことによって人員の整理に乗り出すでしょう。
しかし、今まで20年も30年も低金利の恩恵を受けて、金利コストが上昇しただけで人員を整理するのはダメな経営者です。
そもそもタダみたいな金利でお金を借りられたことがおかしいという感覚が今の経営者にないのです。
つまり、金利が上昇すると従業員のリストラを計画するような会社には未来はないので、さっさと辞めて他社に行くことを推奨します。
そもそも雇用を守ることは、企業経営者にとって不況のときも好況のときも長年の課題であり、金利の上昇をすぐさま人員整理に結びつけるのは無能の証左です。
日本人の給与水準
以下に消費者信頼感指数を張り出します。

消費者信頼感指数
消費者信頼感指数とは基準を50に置き、それ以下であれば不景気と感じ、50以上であれば消費者が感じていることの指数になります。

上記は消費者信頼残高といいます。
消費者信頼感指数は1-100までの相対値で示しているのに対して、消費者信頼「残高」は絶対値で示します。
簡単にいえば、可処分所得のこと、要するに平均のお給料のことだと思えばいいでしょう。
2019年7〜9月だと32万円程度のお給料があったと考えればいいのです。
だいたいこれは、給料明細で25万円の手取りの人が当てはまると思います。
会社員の皆さんは、税金や社会保険料など含むと支払い総額はそんなものになるでしょう。
参考までに、更生保険料は会社が半分負担していますので、皆さんは半分しか負担していません。
ゆえに会社が支払うお給料総額は25万円程度の手取りの人は会社が32万円程度の会社の支払い総額です。
言えることは、2019年の前半は最悪の給料水準であったということです。
貿易戦争によって景気が悪化したと騒ぐ人はたくさんいますが、本格的な勃発は2018年の年末に2月にペンディングになり、それが5月から本格化しました。
金利と景況感
さて、この辺の事情はおわかりになりましたか?
では、本当のことを書いておきます。
皆さんのお給料が下がったのは非常に明快で、金利が下がったから、お給料も下がりました。

上記は青が消費者信頼感指数、そして黒い点線が金利水準です。
景況感が最低のときに金利も最低となり、そして、金利の上昇とともに景況も上昇しています。
つまり、皆さんは金利が上昇するとイヤな気分になりますが、金利が上昇すると景況感も上昇しお給料も上がる、それだけの話なのです。
例えば去年の10月に消費税が増税された影響で、景況感が悪化するのが普通です。
しかし、景況感は上昇しています。
しかも9月には増税前の需要が起こるので、消費者信頼感指数は上昇するのが普通と思いますが、下落しています。
皆さんの景気への感じ方とは、金利にダイレクトに影響を受けているのです。
これを見ると、金利をもっと上げろと思うのが普通の話だと思います。
結局1992年から企業は、ずっと低金利の恩恵を受けてきたので、業績が最高益になったのです。
もう企業の保護はいい、と思うのが通常でしょう。
オリンピック後のテーマ

安倍首相が年初にまたもや「解散するかもしれない」と言い始めています。
解散する以上、安倍首相は勝つつもりなのでしょうから、年末には景気がよくなることを見越しての解散風を吹かしていると思うのです。
その意味は「株を買いなさい」とも取れるのに、このメッセージを株式評論家の大半、というより9割以上は受け取ることができません。
ここから東京オリンピックが閉幕して、年末には景気の失速が懸念される中、何を盛り上げるかといえば個人消費を盛り上げるほかないのです。
企業の側にはオリンピックが終わり、テーマがなくなるのですから、今後は個人消費が問題になってくるのは必然です。
金利を上げれば失われた30年から脱却

現在の企業はオリンピックでナンボ儲けるかの算段をしており、閉幕すれば、そのテーマがなくなるわけです。
池上彰さんなどはこれを背景に「株価が下がる」、「不動産が下がる」などとほざいていますが、本当にそうなるか、よく見ておけばよいでしょう。
現時点での見通しは、そんなのになりっこないというのが結論です。
ここから、日本の景気を持ち上げるためには金利を上げればいいのです。
金利を上げ始めたときにはすでに株価も不動産も高くなっていることでしょう。
ゆえに金利を上げれば日本経済、失われた30年からの本格的な脱却になるであろうということです。
金への影響

まだ世界でも日本でも、金利は低いままであろうというのがコンセンサスとして残っています。
今までの金は金利に影響されて動いているので、暴落はないでしょう。
しかし、日銀をも含む各国の中央銀行がフォワードガイダンスで利上げを示唆したときは要注意、暴落することになるでしょう。