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イスラム教ではテロは正しい!?

日本で全く理解されていないイスラム教

先日、ISIS(イスラム国、IS)の指導者がアメリカ軍に殺害され、トランプ大統領は自分の政策の正しさが証明されたことに大喜びしているようです。

今回は、ほとんどの日本人が理解できないイスラム教をテーマにお届けいたします。

「イスラム教は平和的な宗教」と書かれた紙を持ったムスリムの少女

日本人で初めて中東に行ったのは、かなり疑問は残りますが、渋沢栄一と言われています。

ただし、そのころの日本人には中東の知識がないのでイスラム教への理解はなく、認識され始めたのはオイルショック以降のことです。

さて、ムスリムが起こすテロに対して「あれはイスラム教徒ではない、ほとんどのムスリムは穏健な人たちである」という反論で一致していますが、イスラム法学者によると、その解釈は根本的にイスラム教を理解していないということらしいのです。

実は、テロを起こすムスリムもテロを起こさないムスリムも、同じイスラム教徒だということらしいのです。

今回は、その辺を中心に解説していきます。

イスラム教は政治宗教であるという大前提

キリスト教とイスラム教の聖地であるとともにユダヤ教の聖地でもあるイスラエルのエルサレム

イスラム教はキリスト教、仏教とともに世界三大宗教ですが、経典ができあがったのは7世紀ごろになり、このうち最も歴史が浅くなります。

ただし、イスラム教が指す神とは、キリスト教の神と同じであり、ゆえに聖地エルサレムはキリスト教の聖地でもありイスラム教の聖地でもあるのです。

つまり、イスラムはほぼキリスト教と同時に成立しているのですが、キリスト教でいえば『聖書』に当たる聖典、『コーラン』の登場は7世紀、日本でいえば聖徳太子の時代まで待たなければいけません。

日本でも、聖徳太子が政治の基盤として「十七条憲法」や冠位十二階を制定したように、当時の世界は政治システムが徐々にできあがってきたときになります。

聖徳太子が仏教を国教と定めたように、イスラム教でも国と宗教の分離など考えられない時代になるのです。

そもそも政教分離は近年の考え方で、大昔は政治と宗教が一致していることが通常でした。

このため、『聖書』や仏教の法典などが人の生き様や道徳的なことを多く記しているのに対し、『コーラン』は政治体制について多くを割いていることが仏教、キリスト教との決定的な違いです。

『コーラン』は法律であり現人神である天皇は邪神扱い

預言者ムハンマドの日常の言動や行動についての証言をまとめた『ハディース』

法治国家という基盤は近現代では常識ですが、イスラム教では『コーラン』やムハンマドの遺言集でもある『ハディース』が本当の法律になります。

つまりイスラム教徒にとって、国家の法律よりも『コーラン』の方が格上なのです。

日本では散弾銃ほか火器などを保持していれば銃刀法違反で逮捕されますが、イスラム教徒にとって本当の刑法とは『コーラン』であり、日本の刑法ではありません。

『コーラン』は唯一神が決めたことだからです。

イスラム教では神が決めたルールが絶対であり、例えば「日本国憲法」などは所詮、人が定めた人定法になります。

人が定めた法律など本当の法律ではなく、法律とは神様のみが決定できるものなのです。

戦前の日本では、天皇は現人神と言われていましたが、イスラム教が定めた唯一神以外は神ではないので、昭和天皇も大正天皇も明治天皇も邪悪な存在として知られています。

サウジは本当のイスラム教国ではない!?

絶大な権力と莫大な富を持つサウジアラビアの王族たちの肖像

サウジアラビアはイスラム教国家ですが、イスラム教徒に言わせれば、本当のムスリムの国ではないということになります。

なぜなら、イスラム教にはイスラム法学者という者が存在し、その法学者が『コーラン』の解釈にお墨つきを与えるのです。

例えば『コーラン』では、喜捨という概念が規定されていますが、これは現代風に言えば税金みたいなものだとお考えください。

税金とは社会に再配分するものであると義務教育で学習していると思います。

富める者の財産を貧しい人に配分することが税金の趣旨であり、つまりイスラム教でいう喜捨になるのです。

為政者が集めた税金を自身の道楽に使ってはいけないと定めており、そのようなことをする者は、イスラム教の指導者(カリフ)ではないと定めているのです。

ISはムスリムにとっての理想郷!?

ISが国旗と称する旗

イスラム教ではアッラーが唯一の神ですが、現存しないので、カリフが指導する形をとります。

アッラー、ムハンマド、カリフと序列づけが為されており、この階層は不変です。

イスラム教の国家ではカリフが国の指導を行うのが常なのです。

ところがこのカリフ制度は、オスマントルコ帝国が滅亡して世俗化したトルコ共和国が誕生してから、この世の中に存在しませんでした。

それを復興したのがイスラム国であり、そのイスラム国のカリフを殺害したということでトランプ大統領は大喜びしていたのです。

この行為が世界のイスラム教徒にどのように捉えられているか、簡単に言えば、新たなテロの芽を生み出したという評価にほかなりません。

『コーラン』通りに治世が行われるイスラム国は、世界18憶人のイスラム教徒にとって聖地でした。

『コーラン』では、イスラムの治世が行われている地に移民しなければならないと定めており、大きなテロを何度起こしても、イスラム国に移住する人が絶えなかった理由はここにあります。

ジハードはどう捉えられているか?

エルサレムで売られる『コーラン』

『コーラン』にはジハード(聖戦)についても書かれており、その解釈は時代とともに変化してきました。

さまざまな記述がありますが、解釈などどうにでもできます。

例えば、サウジにとっての聖戦とはイランと戦うことになりますが、唯一神アッラー以外を信仰するアメリカと同盟を組んでいることは、ほかのイスラム教徒からしたら俗悪なものと映ります。

つまり、今のイラン対アメリカおよびサウジの対立は、日本人の心情としては圧倒的にアメリカに味方するでしょうが、イスラム教徒にとっては、イランが圧倒的に正しいのです。

なぜなら、イランも人定法によって統治されていますが、アメリカやサウジはイスラム教ではない、もしくはサウジの指導者によってゆがめられたイスラム教なので、邪悪な宗教という認識がイスラム教徒にはあるからです。

つまり、世界各地で起こるさまざまなテロや内戦をイスラム教徒が「ジハード」と呼ぶ理由は、イスラム教の拡大を目指すものであり、それが『コーラン』に書かれた目的なのですから、仕方のない側面があるのです。

『コーラン』は、イスラム教による全世界の支配という解釈が成り立ちます。

もちろん、ほかの章には他国と仲良くしなければいけないとも書かれていますが、最終的にはイスラム教が全世界を支配することが目的です。

イスラム法学者と政治の関係性

1895年に出版された『言葉と物事の辞典』に描かれたウラマー(イスラム法学者)の挿絵

仏教の経典やキリスト教の『聖書』には、このようなことは書かれておらず、政治臭なども一切しませんが、イスラム教は政治的な宗教であると理解したほうがいいということです。

イスラム教では、イスラム教を世界に流布するのが最終目的であり、その手段の詳細は書かれていないのでイスラム法学者がいるのです。

イスラム法学者が『コーラン』を典拠に為政者にアドバイスするというシステムです。

例えばサウジのイスラム法学者は、政権に都合のよい『コーラン』の解釈を伝え、お墨付きをもらった為政者は、それを「イスラムの教え」だと言って施行します。

このようなサウジの体制を世界のイスラム教は白い目で見ており、サウジの法学者を権力の豚と見ていることは想像に難くありません。

テロリストは敬虔な殉教者という解釈も成り立つ!

自爆テロの瞬間のイメージ画像

イスラム教にとってジハードとは、イスラム教を流布させる手段であって、布教のためにはジハードも辞さないという解釈も成り立ちます。

それを抑止する力については、『コーラン』や『ハディース』には書かれていません。

その解釈をイスラム法学者にゆだねるのが、イスラム国家のやり方です。

つまりイスラム教徒にとって、各地でテロなどを起こす教徒は背信者ではなく、敬虔なイスラム教徒という解釈も成り立つのです。

この解釈は、そのイスラム教徒が住んでいる地域の属性によっても変わります。

ヨーロッパに住むムスリムにとって、テロなどは自殺行為だと考えるイスラム法学者が多くおり、結果として「テロを起こすイスラム教徒は、イスラム教徒ではない」という声明を出しているのです。

この声明は、ヨーロッパでイスラム教徒によるテロが頻発する中、イスラム教徒が弾圧にさらされるという危機感から出ているものであり、決して本心からそのイスラム法学者が言っていることではありません。

なぜなら、イスラム教は布教のための手段は明示されておらず、異教徒を排除することも記されているので、テロを起こすことはイスラム教の教義に反していると言い切れないからです。

今イスラム教内部で起こっていること

今やスマートフォンで『コーラン』を読む時代だ

現在のイスラム教では、中世ヨーロッパで起こった宗教改革と同じことが起こっています。

中世ヨーロッパではカトリック、つまり教会がキリスト教を支配していましたが、活版技術の登場によって『聖書』が中心の宗教改革が起こりました。

これをルターによる改革と教科書では教えています。

イスラム教も同様で、今まではイスラム教法学者が牛耳っていたのですが、インターネットの登場によって、全世界のイスラム教徒がその国の言葉で教義を読めるようになりました。

ちょうどルター改革が活版印刷によって始まったように、今度はインターネットによって革命が起こっているのが実態です。

その後、ヨーロッパでは宗教戦争が多発して、実質、第二次大戦が終了するまで内戦に終始したという歴史に着目してください。

第二第三のISは必ず生まれる

ロンドンで「ムスリムは十字軍を破壊しイスラム国を建国する」というメッセージを掲げるムスリムの女性

そう考えていくと、イスラム国は滅びたのも同然ですが、イスラム教徒のイスラム国の支持はいまだに拡大しています。

その理由は、イスラム国がアッラーやムハンマドの教え通りに国家を運営しており、イスラム教徒にとって理想郷だからです。

世界で18億人の信者数は今も拡大しており、そのうちにまた第二、第三のイスラム国が誕生しても不思議ではありません。

イスラム教による世界の支配こそがイスラム教徒の最大の目標であり、その理想郷の誕生を目指し、今後もラジカルな人々がテロや内紛を起こすことでしょう。

トランプ大統領のやったことは目先の解決策であり、結果としてより多くのテロや戦争を引き起こす結果となるでしょう。

中東と金

カタールのドーハ、語ら文化村に立つ黄金の礼拝所

中東の各国を訪問すると金ピカというイメージがつきまとうのは、金が『コーラン』によって価値のあるものと規定されているからです。

イスラム教徒は2017年現在18億人いるといわれていますが、この人数は拡大中です。

イスラム国が滅んだとしても、世界のイスラム教徒は増加しているのですから、金の需要は減らないということになります。