ポピュリズムの歴史と現状

貴金属,相場関連

アメリカのポピュリズム

ポピュリズムというと、最近できた造語と思われがちですが、案外、古いものです。

また、厳密な定義がなく、大阪を中心に活動している大阪維新の会も、ポピュリズムの典型という話もあります。

ただし、はっきりとした定義がないので、維新の会を一概にはポピュリズムとも言えません。

今回はその歴史をトランプ大統領の誕生とブレグジットに関連してお話ししていきます。

アメリカの民主党のシンボルであるロバと共和党のシンボルであるゾウ

アメリカの議会は、民主党と共和党の二大政党が牛耳っていると思う人がほとんどでしょう。

中には、ティーパーティなど共和党を中心とするメンバーから発生した政党活動もありますが、基本的には共和党です。

最近では、共和党が完全に「トランプ党」に移行しているという意見が散見されるようになりましたが、トランプ大統領が共和党を牛耳っていることからくる現象です。

敵対的な発言をした議員は、トランプ大統領から総攻撃を受けた上、共和党議員の指名もされないという、唯我独尊から生まれた考えになります。

近年、北欧諸国やフランスなどで見られるポピュリズムは、新たに立ち上げられた、既存政党への対抗勢力という構図があります。

既成政党の中から生まれた新しい考え方ではなく、その党派を割り、新しい政党を立ち上げるのが共通認識としてのポピュリズムとも言えるでしょう。

そのような中で、アメリカで既存政党以外の政党が生まれたのは、19世紀の中頃から後半にかけてです。

その政党名を、人民党と言います。

人民党の支持層とトランプ支持層

女性参政権運動家で人民党の議長も務めたフランシス・ウィラード

人民党の支持範囲は、中西部の農家や産業革命に乗り遅れた人々によって構成されました。

トランプ大統領が強力岩盤支持層である40代白人の低学歴層を「忘れられたアメリカ人」と言っていますが、人民党の支持者もやはり産業革命から取り残され、産業革命で国家や国民が豊かになっているのに、昔ながらの農業をやっている、所得が向上せずに取り残された人たちになります。

トランプ大統領の支持層が、安い労働力である移民の大量流入によって仕事を奪われ、失業にあえいでいる人たちという意味で、当時の人民党の支持層と大きく被ることが想起されるでしょう。

人民党の発足当時は産業革命、つまり工場での大量生産で製品を安価に製造することによって人々の生活が向上したのに、それに取り残された人たちの支持によって発足しました。

当時のアメリカ議会にもわずかですが議員を送り込み、まさに大阪維新の会を思い起こさせます。

その主張は女性参政権やマイノリティーの向上を旨とし、支持を拡大しました。

人民党の衰退理由

民主党と人民党の共同候補として大統領選挙に臨み敗れたウィリアム・ジェニングス・ブライアン

人民党の拡大は、その後、第一次大戦や世界恐慌によって衰退していきました。

既存政党がいい加減な政治をやっているから困窮する人たちが出てくる、あるいは既得権を利用して汚職などを行い、国民を顧みない政治行うことへの反発から人民党は支持を拡大したのです。

人民党が党勢を拡大するにつれて、既存の共和党と民主党が党改革を進めたことにより、人民党に流れた支持を取り戻しました。

既存政党が女性参政権などの政策を取り入れた結果、人民党は衰退して行き、20世紀初頭には勢力は全くなくなりました。

このような勢いは大阪維新の会と重なる部分があり、相違点は、アメリカの人民党は消滅しましたが、大阪維新の会、日本維新の会は現在でも残っている点です。

オランダ、ベルギー、フランスなどでもポピュリスト政党はありますが、カリスマ的な党首が引退、暗殺されても、アメリカの人民党とは違い政党は残っているのが過去と現在の違いです。

ブレグジットとチャヴ層

代表的なチャヴのイメージを描いたイラスト

イギリスではEU離脱を問う国民投票が行われ、その結果が世界を震撼させました。

この理由は、イギリスには階級制度がいまだに存在することが起因ということは以前に触れましたが、やはりグローバルスタンダード化に伴い、アメリカと同様、取り残された人々がいることが判明してきています。

彼らはアメリカと同様、40代の生粋のイギリス人です。

その代表的な人物は、かつてのサッカーイングランド代表、ベッカムと言われています。

ご存知のようにサッカー界のレジェンドと言われる存在ですが、ほかの40代のイギリス人同様、1970年代に建設されたイギリス公営住宅に居住した高卒の青年でした。

イギリスでは彼らのことをチャヴと言い、40代で公営住宅に居住されている人たちがその代表格になります。

取り残された人々はイギリス独立党へ流れる

イギリス独立党支持者たち

イギリスでは産業革命によって炭鉱や工場などが大きく発達しましたが、グローバル化に伴いその職を追われました。

EUとの統合の結果として、グローバル化が進行し、イギリスの国際化に取り残された人たちと言えることができるでしょう。

若い世代がスマホやパソコンなどを使い積極的に時代の変化を取り込んでいるのに対し、その人たちは、会社や工場、炭鉱で懸命に働けば生きていけるはずだったのが、今やそれさえも難しいと感じるようになった世代です。

当然、既存の政治に反発を覚えます。

イギリスでは労働党に属しているのはその名の通りになりますが、労働党は植民地という市場をイギリスが逸したことによってEU加盟に賛成し、推進したのです。

結果として彼らは失業し、食うあてがないことから、イギリス独立党というEUからの離脱の党へと参入しました。

ポピュリズム勢力の躍進は時代の趨勢

自由民主党への投票を呼びかける看板

イギリスの場合、労働党、保守党の二大政党になりますが、近年、労働党の前進である自由民主党や地域政党の躍進が目立っています。

また、先般行われた欧州議会選挙では、イギリスの第一党はイギリス独立党です。

フランスでも欧州議会では既存政党ではなく、ルペン率いる極右勢力が第一党になりました。

このようなポピュリズム勢力が今回の欧州議会選挙では過半数を制しています。

こうした状況から、いずれ各国の議会もポピュリズム政党が過半を占めてくるのが時代の流れとなると推測されます。

イギリスの国政も、いずれイギリス独立党などの勢力が議会を席捲することになるでしょう。

メディアなどでは、イギリス国民が「EUを離脱すべきではなかった」と言ったインタビューが頻繁に放送されますが、過半の意見は離脱に賛成で、再び国民投票を行っても同じ結果が想定されます。

つまりメイ首相は再投票の可能性を示唆していますが、結果は変わらない可能性が高いのです。

いみじくも、アメリカと同じ40代の自国民という正当性があると思われる国民が、ポピュリズムを形成しているのです。

ポピュリズムの現状

ツイッター政治を展開するトランプ大統領

ポピュリズムの現状をアメリカのケースで考えてみましょう。

アメリカは、大統領であるトランプがポピュリズムの象徴であると言われています。

ツイッターを使ったメディア戦略などは、オランダのポピュリズム政党の戦略と一緒であるという指摘もあります。

オランダは、日本ではオランダモデルと言われるシェアリングエコノミー発祥の地であり、その合意形成は民主主義と思われる方も多いのですが、実際は既存政党への不満、そしてイスラムの排斥、矛盾した性的マイノリティーの保護という典型的なポピュリズム政党が蔓延している状況です。

アメリカも同様で40代の白人労働者がトランプ大統領の岩盤支持層です。

イスラムの排斥、移民の非合法化などを叫んでいるのは、典型的な類型と言えます。

アメリカで人民党が飛躍的な躍進を遂げたとき、既存政党は政党改革によってその第三勢力の影響を排除したことは上記で見ました。

現状のアメリカはどうでしょうか?

偏ったイスラム排斥、移民への蔑視などに対して、既存の民主党や共和党は有力な対抗案や妥協策を示せているでしょうか?

おそらく、その傾向は全くないと言ってよいでしょう。

次期アメリカ大統領選のゆくえ

民主党の大統領候補者の筆頭であるジョー・バイデン

来年行われる大統領選挙は、数字的にはまだトランプ不利な傾向を示していますが、対抗である民主党のバイデン候補にも有利な状況は何もないのが現状でしょう。

例えばトランプ大統領が何か言ったとなれば、人々は一斉に内容を検索するでしょうが、バイデン候補がトランプ大統領の悪口を言おうと、何か崇高な理念を言おうと、トランプ大統領ほどの注目は浴びません。

数字絶対主義の世の中になりましたが、実際に有権者が行動を起こすのは、トランプ大統領の行動であり言動で、決してバイデンではありません。

参考までに、民主党の候補がバイデンになることは確実で、ほかの候補は数字、影響力を勘案してもはるかに及びません。

数字は現状、民主党に有利と出ますが、選挙戦が本格化する局面においては、おそらくトランプ有利な数字が出てくることになるでしょう。

つまり、次期大統領選挙の勝利者は現時点でトランプが圧倒的有利ということになってしまうのです。

現時点では、来年以降の4年もポピュリズム政治が行われる可能性がかなり高いと言えます。

ポピュリズムに対するメディアの目

メディアは「ストップ・ポピュリズム」を叫ぶが…

ポピュリズムは、民主主義が進化するごとに台頭することでしょう。

今までは、日本でも政治家の言っている意味がわかりませんでした。

すなわち、我々には投票権はありますが、実際の政治家が何を意図して政治を行っているのかの意味がわかりませんので、タレントや元オリンピック選手のような方が議院になれたのです。

ところがアメリカやイギリスのように、働き盛りの人たちが働けないという現実に直面して、初めて政治に自分の意思を持って参加するようになったのがポピュリズム台頭の原因になります。

ポピュリズムと聞くと、メディアは自分たちの領域である政治に高等教育を施されていない人たちが参入してくることに危機を抱きますからネガティブに表現します。

実際このポピュリズムの台頭とは、政治の意味を理解して参入してくる人たちがいるという意味では、民主主義の深化という点で前進になると個人的には考えています。

つまりポピュリズムとは、今まで一部の政治家や有識者しかわからなかった政治の内容が、より大衆化したという意味では、政治が進化したと言ってよいでしょう。

しかし、メディアはネガティブな発想をするような報道をするので、その意味がわかりにくくなっています。

テロ、暴動、そして…

フランス7月革命を主題としたドラクロアの「民衆を導く自由の女神」。革命は国民が食えないから起こる

国家で政体の変化や革命、暴動、テロなどが起こるのは、国民が食えなくなってきたときであることは歴史が証明しています。

ポピュリズムが進行するということは、食えなくなっている国民が多くなっていることの証明であり、結果としてテロや暴動などが起こるのです。

近年、テロなどが頻発するのはそういった理由も存在することでしょう。

つまり政治の在り方が、既存勢力を倒そうとするのが近年の流れであり、その意味は、本当に政治の意味が分かって参入する人が増えた結果、このようなポピュリズムが台頭するのです。

この意味がわかっていない人が多過ぎますし、既存のメディアは自分たちの領域を犯されることを本能的に感じているはずですので、良い意味での報道をなそうとはしません。

ゆえにポピュリズムは、世界の政治の流れの変化であるとも言えると思います。

全世界にこの動きは波及し、いずれ日本にもくることでしょう。

ポピュリズムの可能性

大阪の開発者である豊臣秀吉。江戸時代から1980〜90年代までの間、東京都並んで大阪は日本のツートップであったが…

日本では、大阪での維新の会の活動は、グローバリズムの進行に伴い大阪、東京の二大都市であったのが、1980〜90年代に東京一極集中が進行し、大阪の地盤沈下が言われました。

結果として大阪の不満が溜まり、維新の会の創設につながったと思われます。

その結党者である橋下徹氏が政界を引退したとはいえ、再び大阪都構想が提案される流れになっています。

つまり、大阪の不満は消えていません。

この流れは北欧やベルギー、スイス、デンマーク、オランダなどと一緒で、日本にもポピュリズムはすでに根付こうとしていることには注意が必要です。

より多くの人が政治に参加するようになってきた、これがポピュリズムの実態になると思います。

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