アメリカ貿易戦争の背景

貴金属,相場関連

過去の経緯

5月末にトランプ大統領がメキシコへの制裁関税を発表し、マーケットはおろかそのほかのさまざまな社会に大きな影響を与えています。

今回は、アメリカが中国やメキシコなどに貿易制裁を加える背景を解説していきます。

過去の経緯といっても、トランプ政権でのことをお話しするわけではありません。

アメリカがドル防衛のために過去に行ってきたことの結果、どのようなことが起こったのかという事実をお話しします。

プラザ合意とブラックマンデー

1987年10月19日(月曜)に香港を発端に発生した世界的株価大暴落であるブラックマンデー

アメリカの財政、貿易の双子の赤字がひどいために行われた、世界でドルを切り下げるための国際会議のことをプラザ合意といいます。

このとき、日本のドル円レートは200円台だったものが100台に急落しました。

いわゆるドル安になるのですから、当然、円高になります。

結果がブラックマンデーで、今でも発生原因が特定できません。

一般的に言われているのは、このときにレバレッジを効かせたNY株式の先物取引が誕生したことです。

先物での過剰な信用売りがブラックマンデーを引き起こしたということが原因と一般に認識されていますが、諸説あります。

重要なことは、1985年9月にプラザ合意が行われ、10月にブラックマンデーという株価の暴落が起こったという事実です。

ニクソンショックとオイルショック

ワシントンDCのマダムタッソー蝋人形館にあるニクソン元大統領の像

言うまでもなく、ドルと金の兌換の停止のことをニクソンショックと言います。

インドシナ戦争のために財政を拡大させたことにより、アメリカが保有している金準備が間に合わなくなったため、ドルと金の交換を停止しました。

そして、何が起こったかといえば、ドルの急落になります。

ドルの価値を担保する金準備がないことを世界に知らしめたわけですから、ドルは当然急落します。

その結果がオイルショックです。

ドルの価値を守れないということは、産油国の収入減を意味します。

当時はイギリスの中東からの撤退とアメリカの中東支配が確定した時期になりますので、産油国がこのような反乱を起こしたのはニクソンショックによってドルの価値を引き下げたことがその遠因と思われます。

もちろん、一般に認識されている原因は中東の産油国による反乱としかされていません。

しかし、遠因にはニクソンショックによって、ドルの価値が引き下げられることが産油国の反発につながったのです。

イラクのユーロ建て原油取引とイラク戦争

ニューヨークのマンハッタンにあったワールドトレードセンタービル等が航空機テロの標的となった9.11

9.11でアメリカの権威が失墜したことによって、ドルがやはり値下がりしていきました。

当時は統一通貨ユーロが誕生したばかりであり、アメリカの失墜と同時に相対的にユーロの将来が期待されていました。

産油国は9.11テロでドルの価値が下がったことによって、オイルショック同様、収入減に悩まされることになります。

結果として、イラクの独裁者サダム・フセインがフランスなどと原油のユーロ建て取引を行うと発表しました。

その結果がイラク戦争です。

イラクには大量破壊兵器がある、ということを口実にアメリカは攻撃を仕掛けました。

この大量破壊兵器がある、というのはのちに議会でも大統領府でも間違いを認めることになりますが、背景にはドルを使って原油取引を行わないことへの危機感があったのです。

これによってドル基軸体制が崩壊する可能性があったのです。

当時の大統領ブッシュジュニアは、イラクのこの決定を機にイラク戦争を遂行したと言われています。

過去の経緯から見える国際関係学

原油取引をドル建てで行わないことはアメリカへの敵対行為

以上の過去の経緯を考えていくと、原油とドルが世界を震撼させる事件につながっていると思われます。

アメリカへの敵対行為と見なされるのは、原油取引をドル建てで行わないこと、そして国際的な決済通貨であるドルを使わずに、自国通貨建てで原油取引を行おうとすれば、アメリカと対立することになる、というのが過去の経緯から見えてきます。

次にこうした視点から主要国とアメリカの関係を見ていきます。

ロシア

ロシアは自国から輸出する場合にはルーブル建ての原油取引を適用

まずは、ロシアです。

ロシアは、原油価格の乱高下によって過去にデフォルトを起こしました。

原油からの収入がGDPの半分以上を占有しており、ドルの上下動によって原油価格が左右されることは国家の命運を左右することになります。

そこでロシアは、自国から輸出する場合にはルーブル建ての原油取引を適用しています。

つまり、原油を取引する際にドルを使わずにルーブルを使いますので、アメリカから言わせればロシアは敵国です。

ロシアンゲートなどセンシティブな事件が起こる背景には、こういった事情が考えられます。

アメリカ政府首脳やエスタブリッシュメントの間には執拗なロシア攻撃が存在します。

現在の核兵器廃棄条約に関してもめるのも結局、ロシアの原油取引に起因すると思われます。

中国

中国は人民元建ての原油取引市場を開設済み

中国は、上海に2018年に人民元建ての原油取引市場を開設しています。

この時点でアメリカに喧嘩を売っているのが上記の説明を読めばわかると思います。

よく考えてください、アメリカに原油取引で喧嘩を売り、ITではアメリカの個人情報や政府情報のデータを盗み取る、これをあのトランプ大統領が許すでしょうか?

さらには人民元は不当に安く評価され、まさしくアメリカ人から利益をかすめ取る許せない存在です。

中国との貿易、通商摩擦は早期に妥結するという見方が以前は支配的でしたが、現在では長引くという見方になっています。

中国としては、国内事情から人民元安にせざるを得なく、また早急な人民元高誘導は国内経済崩壊を招きます。

アメリカの人民元高要求は、飲めない問題です。

しかし、一方では上海で人民元建て原油市場をロシアをまねて創設する、アメリカに喧嘩を売っているとしか思えない行動ばかりしています。

バブル時代に日本が『ジャパンアズナンバーワン』という著作によって、日本がアメリカを抜いて世界一の経済国になると盛んに言われていましたが現状はどうでしょうか?

中国も2030年ごろに世界一の経済国になると言われていますが、懐疑的にならざるを得ないと言うのが感想です。

メキシコ

原油に関して、中国と多額の取引を人民元建てで行っているメキシコ

メキシコは工業国になりますが、基本的にはロシアと構造は一緒です。

原油生産によって国家を起こし、その間に工業化によって急速に国力を発展させた国になります。

かつてメキシコ危機(テキーラ危機)によって、アメリカに多額の借金をしました。

これは、国営の石油会社の不良債権が主な理由になります。

危機をアメリカからの融資によって逃れているのですが、中国とは多額の原油取引を人民元建て取引で行っています。

このような国をトランプ大統領が許すのか、ということです。

韓国

トランプ大統領に限らず、誰にとっても許されるわけがない不誠実なことをやりまくっている韓国

韓国は、アメリカに軍事保証をしてもらってようやく生きながらえている一方で、目先の利益で経済は中国に依存しています。

この国も、アメリカから利益をかすめ取っている国です。

無料の安全保障を得ながら、アメリカに対しては貿易黒字を獲得するという、トランプ大統領に限らず、誰にとっても許されるわけがない不誠実なことをやっています。

極めつけに韓国は、3月に為替介入を行ったことが致命的になりました。

今の韓国はアメリカから見捨てられ、日本には無理難題を要求し、中国は経済失速によって貿易不振が続くという、まさに国難というような状況ですが、国民はのん気なものです。

アメリカは口ではドル高を唱えますが、実際はドルを安く誘導したい、という二重外交を行っています。

つまり、ドル高を謳わなければ、アメリカ債券を誰も買ってくれなくなる、しかし経済はドル安に誘導しなければ発展しないという二律背反した政策を行っているということです。

結果として金は、実質上はドル安なのですから高いという帰結になります。

サウジアラビア

トルコ領事館にて、サウジアラビア皇太子の手の者によって命を奪われたジャーナリストのカショギ氏

サウジアラビアは、トルコ領事館にてジャーナリストのカショギ氏を暗殺したことによって国際社会から制裁を受けていました。

こういった不道徳なことを行っても、アメリカはサウジを支援し続けています。

これは、サウジが原油取引のドル建て取引を遵守しているからであり、アメリカの国益を保全しているからです。

結果として、いくらサウジが不誠実な行動をとっても、アメリカはサウジを庇護するほかないのが現状です。

イラン、カタール、トルコなどほかの中東各国は、アメリカに反対する行動ばかりをとります。

具体的には、ドルから離反する動きを隠そうともしません。

ドルの凋落は誰が見ても明らかですが、アメリカの同盟国はアメリカの利益を守ることが自国の利益を守ることというのを基準に、日本を筆頭に行動をしています。

しかし、上記3ヵ国はあからさまにドルに離反する動きを取りますので、対立が激化しているのです。

EU

メルケル首相とトランプ大統領

トランプ大統領のアメリカファーストとは、ドル経済圏の拡大を指すものであって、その経済圏拡大に反対する国々は容赦なくつぶすと言っているのがトランプ外交なのです。

真っ先にやられたのがドイツになります。

メルケル首相がヨーロッパの盟主としてトランプ大統領に説教する場面がありましたが、結果、ドイツ経済がどうなっているのか言うまでもないでしょう。

アメリカからの封じ込めによって、深刻な打撃を被っています。

反対にフランスのマクロン大統領はトランプ大統領のポチともいうべき存在でしたが、経済も疲弊しています。

この二大国がダメダメな状況で、EUがまともになるわけがありません。

ドイツはEUの覇権を狙い、拡大路線を引きましたが、これは完全に失敗に終わり、盲目的に追従してきたフランスも苦境です。

EUの問題児と言われていたイタリア、スペインが反乱を起こすのも当然のことです。

現在の状況と金

「アメリカファースト(アメリカ一番)」の意味するものとは…

トランプ大統領の目指すアメリカファーストとは、具体的にはドル経済圏の復活であり、それに逆らう国は容赦しないということです。

よく考えてみれば、レックス・ティラーソンは元エクソンモービルのCEO、財務長官はゴールドマンサックスという人事でした。

ティラーソンはすでにクビになりましたが、この2人を見れば、トランプ大統領は、原油と金融を中心に政治を行っていくと宣言したのに等しいことになります。

原油のことは今、手を付けまくっていますが、金融はまだ手付かずの状態です。

今後、トランプ大統領が何をやってくるのか、だんだんと皆さんにもおわかりになってくる一助にはなると思います。

最終的にはドルを最強通貨にする、というのが目標でしょう。

となると、金はどうなるのかということです。

今はその端境期にあるので高いままでしょう。

うまくいけば急落するでしょうが、うまくいかなければ大暴騰です。

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