2020年までとこれからの金価格予測【4】-需給編―

貴金属,相場関連

金の基本的な性質と特長

前回までは、金の値動きの基本をもとに価格予測をしてまいりましたが、今回は、すべての物品に共通する需給から金の価格予測をしてまいります。

紀元前から永遠の金の輝きを伝えるツタンカーメン

金の基本的な性質には、腐らず、永遠の価値を持つという特徴があります。

土の中に生ものを捨てると、土中で分解して土になるのは誰でも知っているでしょう。

ところが、金は土の中に入れても、土には返りません。

つまり腐らないのです。

銅やアルミなども多少は残るでしょうが、金の場合、土に回帰することがありません。

だから、紀元前にできたエジプトのツタンカーメンなどが現存します。

要するに、人類誕生から現代にいたるまで、私たちが採掘した金は地球上に存在するのです。

地球上に存在する金の量は?

地球上の金の総量はオリンピックプール5杯分と説明されるが…

地球上に存在する金の量は、オリンピックプール5杯分とよく説明されますが、紀元前に採掘された金の量を推測するのは非常に難しいものです。

どのような考えをもとに推測されたのかはっきりしない説明を、鵜呑みにするわけにはいきません。

東京オリンピックのメダルに、パソコンや携帯電話に使われた金を再利用しようという取り組みもありますが、そもそも地球上に金がどのくらい存在するのかもわからないような状態で、需給を論じても仕方がないという側面もあります。

このような需給では正確な予測などできないので、金の値動きはドルと連動しているといつも申し上げています。

すなわち、ドルの価格が上昇すれば下落し、下落すれば金価格は上昇する、ということです。

各統計機関の需給予測について

多くの観光客を集める新潟県の佐渡金山

需給がわからなければ金価格の予測ができない、と思われる方も多いので、各統計機関は需給予測を出しています。

ただし、これらの統計は、需要と供給が同数になることを前提に数字を発表しており、統計機関自らがこの調査は信用ができませんよと言っているのに等しいものです。

ただ、その中でも正確に数字がわかるのが、各国の中央銀行の購入と売却、そして証券市場での金連動商品であるETFです。

この2つは報告義務が法制化されており、正確な数字が出てきます。

そのほかの新産金などは、例えば、佐渡の金山に行けば砂金取りが今でもやっているわけです。

わずかな量しか取れませんが、地中にも、そして海洋にも金は含まれています。

つまり、正確な新産金の供給などわかりようがなく、鉱山会社の発表や調査によって推測しているだけです。

考えてもみてください、営利団体の民間企業が、自分たちが去年いくらの金を発掘したかなんて、まともな数字を発表するわけがありません。

また、調査しても絶対に正確な数字はわからないように細工をするものです。

こういった側面から金の需給はわかりっこない、ということを前提に推測してまいります。

金の需給予測

参照元:World Gold Council

上記はワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の金の需給予測ですが、注目は供給と需要の数字です。

見事なまでに一致しています。

現実にそんなことはあり得るのか、という話になりますが、要するに「需給の過不足による金価格の予測はしないでくれ」と言っているのに等しいのです。

供給部分に関して言えば、鉱山からの新産金に関しては先ほど触れたように信用できません。

リサイクルに関しても、何をリサイクルと定義するかの規定もありません。

例えば土を掘っていたら金が出てきてそれを転用した、なんてものもリサイクルにカウントをされるのかと言えば、カウントされるわけがなく、この数字もいい加減です。

供給サイドである程度信用できるのは、鉱山会社のヘッジ売りの項目です。

これがプラスだと買いになり、マイナスになると売りになります。

この数字が信用できる理由は、シカゴ先物取引所で毎週金曜日の引け後に金の売買状況を発表しているからです。

ファンドや当業者、大口投機家などのカテゴリーごとに発表され、この当業者は金の場合、鉱山会社になります。

シカゴ先物取引委員会は公的委員会になりますので、この数字は信用できます。

鉱山会社のヘッジ売り

穀物同様金もヘッジ取引が行われている

鉱山会社は、将来金の価格が上がれば、現時点で採掘している金は儲かるので良いのですが、逆に下がった場合には採算コストよりも安く販売しなければいけないケースも考えられます。

この代表例が農作物で、通常、穀物などは天候不順期や作付け直後の時期が一番高くなり、その時期に農家は高い値段で現物渡しの契約しておくのです。

そして、収穫し終えたら、契約した値段で穀物をユーザーに渡します。

つまり、農家にとっては将来の価格を作付けした直後に確定させることができる取引になるのです。

金の鉱山会社も同様で、採掘しているときに金が高値だと判断すれば、ヘッジ売りをしておき、採掘し終えた後に商品を渡すだけです。

ところが金の場合、穀物のように高い時期と安い時期が決まっていませんので、鉱山会社の判断だけで先行きを読みます。

通常、ヘッジ(保険)売りしかしないのですが、あまりに割安な場合には買うケースもあります。

この先物契約は、途中契約破棄も簡単にでき、要するに保険になりますので、経営の安定上、利用する鉱山会社が多いのは想像に難くありません。

鉱山会社ヘッジと金価格

参照元:World Gold Council

上記は金価格とヘッジの関係で、灰色の線は鉱山会社のヘッジで左軸、赤い線は金の価格(ドル建て)で右軸です。

ヘッジはマイナスが売り、プラスは買いになります。

ここでわかることは、鉱山会社は基本的には値段に忠実にトレンドフォローをしていることです。

すなわち、値段が上昇しているときには買いを増やし、下がっているときには売りを増やしています。

言い換えれば、CFTC(米商品先物取引委員会)、シカゴ先物委員会が発表する金の当業者のポジションが買いになったときに初めて、金は底を打ったと言えるでしょう。

CFTCが発表した2018年10月2日時点のポジションを例に取って

GOLD – COMMODITY EXCHANGE INC. Code-088691
FUTURES ONLY POSITIONS AS OF 10/02/18 |
————————————————————–| NONREPORTABLE
NON-COMMERCIAL | COMMERCIAL | TOTAL | POSITIONS
————————–|—————–|—————–|—————–
LONG | SHORT |SPREADS | LONG | SHORT | LONG | SHORT | LONG | SHORT
——————————————————————————–
(CONTRACTS OF 100 TROY OUNCES) OPEN INTEREST: 459,776
COMMITMENTS
192,490 214,312 48,629 169,371 160,496 410,490 423,437 49,286 36,339

CHANGES FROM 09/25/18 (CHANGE IN OPEN INTEREST: -503)
-450 3,724 -3,268 1,467 -328 -2,251 128 1,748 -631

PERCENT OF OPEN INTEREST FOR EACH CATEGORY OF TRADERS
41.9 46.6 10.6 36.8 34.9 89.3 92.1 10.7 7.9

NUMBER OF TRADERS IN EACH CATEGORY (TOTAL TRADERS: 351)
177 100 82 54 49 266 197

上記は、CFTCが発表した2018年10月2日時点でのポジションです。

「COMMERCIAL」(コマーシャル)が当業者、鉱山会社のことになります。

上記の表は見にくいので、簡潔にまとめます。

買い   売り
169,371 160,496

単位:トロイオンス

で、差っ引きでは、8,875トロイオンスの買い越しになり、トン換算すると285トンになります。

つまり、第二四半期まではマイナス10トンの売り越しだったのが、買い越しになっているのです。

鉱山会社は、トレンドに忠実になるのですが、現在、ドル建て金価格は下がっているのにもかかわらず、買いになっているのですから、金の価格は底を打ったと言う人もいて当然のことになります。

中央銀行の金購入について

参照元:World Gold Council

上記は中央銀行購入と金価格の関係で、オレンジの線が中央銀行の購入で右軸、緑の線が金価格で左軸です。

金価格が安いときに中央銀行は買い付けを増やし、高いときには購入意欲が高いという関係性にあると思います。

ところが前期18年の第三クォーターは近年になく金価格が高いのに、中央銀行の購入は8%ほど増える予想になっています。

そして現在、金価格は1200ドルを割っている水準なのですから、当然、中央銀行の購入はさらに増えると言えます。

ETF購入

参照元:World Gold Council

左軸は金価格で左軸、右軸はETF購入で右軸で、値段に比例して上下することがわかります。

現在は1200ドル割れの水準なので、ETF購入は減っていると推測されます。

金の需給のまとめ

需給で数字に信頼ができるのは、上記に挙げた3つの要素になります。

① 鉱山会社のヘッジ
② 中央銀行の購入
③ ETFの購入・売却

これを特徴ごとに考えていきましょう。

①に関しては、値段が上昇していると、鉱山会社は買いを増やし、値段が下がると売る傾向があります。

ところが、現在の鉱山会社は、買いを増やしている傾向にあります。

少なくとも現状は、値段が低下気味なのに買いを増やすという、今までにはないパターンです。

そして、②③は値段に比例して数量が増減する傾向があります。

すなわち、値段が上昇すると購入、需要が増え、下がると売却が増えるということです。

ところが、②の中央銀行の購入は、2018年の第三四半期は価格が下がっているのにもかかわらず購入が増え、そして今期も増える見込みであることです。

これは①の鉱山会社のヘッジと同様、異常な状態になります

そして③は、一般の投資家の購入意欲に換言できるでしょう。

現物の金を買うよりも証券市場で金のETFを買うほうが手数料も安く、証券の保管はほふり(証券保管振替機構)が行ない、金の現物はファンドの運営会社が保管しますので、世界的に需要が高まるのは当然です。

「常に大衆は間違える」と言われるが…

「常に大衆は間違える」と言われるが日本の大衆は…!?

一般の投資家は、「常に大衆は間違える」という相場の格言通りです。

ただ、日本の金投資家は非常に賢く、値段が上昇すると一斉に金を売り、下落すると一斉に買います。

かつて金がグラム1000円以下になったときには、田中貴金属などに行列を作って購入したほどです。

そしてそのとき、日本は金の世界最大の輸入国になったのです。

一方でリーマンショック後に金が高値を迎えると、日本は世界最大の金輸出国になりました。

つまり、高値で金を売るので国内供給が過多になり、結果として輸出されたのです。

今回の場合は、実際に金を販売している現場の人間や商社の人間に聞いてみるといいでしょう。

数字的に証明ができるのは財務省の輸出統計があります。

その数字は輸入超、輸出超になっていることを見れば、今の金の価格の動向はわかるでしょう。

これら上記の分析を見ていくと、材料さえあれば金の価格は高くなるのではないのかなと思います。

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