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金と欧州中央銀行(ECB)の金融政策決定会合

ユーロ圏金融政策決定会合のおもな内容

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欧州中央銀行(ECB)は6月15日に金融政策決定会合を開き、会見で各国の国債の買取を続けている政策の拡大を今年中に停止すると発表しました。

ECBの役目はおもに2つあり、一つは金利の上下動、そしてもう一つはお金の供給量です。

ただし、アメリカのFRBには労働市場の健全化という役目もあり、FRBの声明文では労働市場に関しても多くのことに触れているのはそのためのです。

アメリカの法律では労働市場を健全化するのもFRBの役目と明文化されているのに対し、明文化が図られていないECBや日本銀行(BOJ)は労働市場に関与する義務はありません。

ただし実質上、金融緩和と失業率の有名な学術論文であるフィリップス曲線から、その関与はないとも言えないことはないと考えられます。

ECBは今回、主要な役割のうち、金利については据え置きを決定しましたが、通貨供給量に直結する国債の買取にしては拡大停止を決定したのです。

ECBによる国債買取拡大停止の効果

ECBの国債買取の拡大停止は、ロジカルに説明すると難しくなるので割愛しますが、通貨供給量のコントロールと国債買取はイコールの関係になります。

すなわち国債買取の停止は、通貨の供給量を絞るということと同じです。

ですからユーロ圏では通貨供給量が減るので、需給はタイトになり、値段は上昇することになります。

しかし、結果をご存知の方はおわかりだと思いますが、このECB金融政策決定会合を受けて、ユーロ相場は大急落という商況になりました。

すべての商品価格、株価格、債券価格は、需給が優先するのはマーケットでは当然ですが、今回のケースはユーロの供給が減るのに価格も下がったということになります。

ただしいつもお話しさせていただいているように、金や原油の場合は需給よりもドルの価格が優先し、そのドルの価格が上昇した場合、原油や金の価格は下がり、反対の場合は原油や金の価格は上昇するということになります。

そしてその次が需給になるのです。

しかし金や原油の場合には、需給の状態が詳細な部分までわからないことが多々あるので、ドルの上下動が優先されることになったという経緯もあります。

たとえば、欧米では隠し財産の象徴である金は、保有者が少ないので需給がはっきりしないという傾向があります。

今回のユーロ高要因でなぜユーロ安になったのか?

金や株価、債券価格と為替の値段の構成要因が全く違うことに今回のユーロ安は起因しています。

つまり、金の値段は金価格そのものの値段であり、ほかと比較してつけられた値段ではない、ということです。

金の価格がグラム4500円であれば、それが金の価格構成要因になり、そのものの価値の値段なのです。

為替相場は、たとえばドル円ならばドルと比較した場合に円はいくらなのか、という値段であって、ドルを比較対象にして円の価値が決定し、ユーロ円であればユーロに対しての円の価値の値段になります。

金の価格のように、需給やそのものの価値を表したものを「絶対的値段」と言いい、対して為替相場は、必ず比較対象があって初めて値段表記ができるのです。

これを「相対的値段」、「相対値」と言います。

皆さんは「確率〇%」という表現をよく聞くと思いますが、相対値の代表的表現が「パーセンテージ」で、マーケットでの相対値の代表格が為替レートになります。

今回のECBの決定によってユーロが急落したのですが、国際的に見れば代表的な通貨ペアはそのユーロドルです。

日本人は「ユーロ円」と言いがちですが、グローバルな観点では、全為替取引の40%超を占めている「ユーロドル」が一番取引が多い通貨になります。

今回のECBの決定を受けて、ユーロドルの相場は本来ならユーロが高くなり、ユーロドルが急騰するはずなのに、実際は急落したという事実をどう解釈すればいいかの問題になります。

ユーロが強くなる材料であるECBの金融政策決定会合の内容が発表されたのにユーロが急落した理由は、つまるところユーロ以上にドルが強いからです。

今回のユーロ急落の問題点とは?

前章で「ユーロが急落したのは、ユーロ以上にドルが強いから」と書きましたが、これをもっとわかりやすく説明すると、単純に「ドルが強い」になることが、よくお読みになればおわかりになると思います。

「ドルが強い」ということは、読者の皆さんが今までこのコラムをお読みなっていれば、金が下がるという意味になるとおわかりになるでしょう。

金の価格の最優先事項はドルの上下動で、ドルが強ければ当然ドル建ての金価格は下がります。

実際、6月14日から15日にかけてドル建て金価格は下がりました。

これは金とドルの相関関係通りの動きではありますが、この下げにはかなりの不満が残ります。

ドルが相当強くなっているのに、金の価格が下がらない状態であるのならば、「この金とドルの相関関係は解消をされている」と判断をしないければならないのです。

2003年からの好景気の再現か!?

ドルが強くなっても金の価格が下がらない状態は2003年以来のことで、その際は、中国を筆頭とするBRICSの台頭による世界的な好景気循環が誕生しました。

そしてそれはリーマンショックによって終焉をしたのです。

これは小泉政権時代のことで、その間、日本はデフレの波にのまれていたため、好景気だったと認識している人は非常に少ないと思います。

今回の景気は2003年と同じような傾向にあり、もちろん新興国の台頭は未知数ですが、その可能性は高いでしょう。

ただ今回の中心はアメリカになり、それに新興国や先進国がついていくようなかたちになるのではないかと考えます。

今回のケースも、おそらく拡大するアメリカの財政赤字を背景に金の価格は下がらず、アメリカの好景気を背景に、財政不安を抱えながら金価格が上昇していく可能性もあるでしょう。

金価格の目標が前回の高値近辺である1800ドルであるとすれば、現在の価格から500ドル程度しかありません。

日本円の場合ですと、為替が100円と仮定すれば1kg当たり50万円の上昇、110円であれば55万円程度の上昇になり、レバレッジをかければ15倍程度の利益が出ることになるでしょう。

金価格は今後、ドルと一緒に上昇する可能性が高い

今回のECB金融政策決定会合によって出現したドル高によって、本来ならば金価格の下げのほうにバイアスがかかるはずですが、相関係数が90%もあるのにもかかわらず、実際の値下げ幅には不満が残ります。

解釈としては、金の価格は今後数年くらいは、ドルが上昇すれば一緒に上昇していく可能性が高いということになります。

また日本円建ては、ドル高の上にドル建て金価格も上昇するということになるので、金価格はかなりの上昇を見込めると思われます。

以前お話ししたように、円安はドル建て金価格上昇、円高はドル建て金価格下落という同一方向に値動きというのは、一番値段の振幅が大きくなり、金投資の魅力が増すことになるでしょう。

ただ今後の展開によっては、ドルの上昇に伴い金価格が下落する可能性もあるため、その辺に関しては改めて解説したいと思います。

問題はアメリカの貿易赤字から発する経常収支の赤字です。

この経常収支が赤字である場合、現在のトルコやアルゼンチンが資金流出に悩んでいるように、アメリカも経常収支の赤字が一定水準以上になった場合には資金の流出に悩むはずです。

現状ではアメリカへの投資が旺盛になっていますのでその心配はありませんが、現在トランプ大統領が貿易赤字の解消に取り組むように、貿易の赤字と財政の赤字を足した経常収支の赤字は、トルコやアルゼンチンのように国家存亡の危機を体現するものになるでしょう。

金の価格の本質は米ドルへの信認、そして米ドルへの信認はアメリカの財政赤字とイコールの関係になります。

財政赤字は経常収支の一部であり、金価格が上昇するということは、アメリカの経常収支赤字に対しては心配があるということ、そして下落すればアメリカ経済への不信任ということになります。

wakisaka

ラウンジデザイナーズの脇坂です。子育てと両立しながら執筆や校正を行っています。一人旅で食べ歩きをすることが趣味です。

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