金利が急騰局面に入り、その調整を行う場面になりました。今回は、この金利の動きと金相場への影響について解説します。
金利と金の関係
金の価格構成要因は、
【1】ドル
【2】金利
【3】GDP(国内総生産)
です。
このうち【2】の金利と金の関係で象徴的だったのは、2020年8月に米10年債利回りが史上最低利回りになった時に、金が最高値2075ドルをつけたことでした。
下記のグラフは、緑線が金価格(左メモリ)、青線がアメリカ国債10年物利回り(右メモリ)になります。

最高値をつけた金は、その後の金利の上昇に伴い、だんだんと下がってきているのが現状です。
つまり、金の価格は金利が下がれば上昇、上がれば下降という関係性を保っています。
金利は今後アメリカ国内でインフレ懸念が高まっているので、まだまだ高いでしょうから、金は弱気するほかないということになります。
現状の米国2年債金利
金利の指標金利は通常、国際的には10年物の利回りを標準とします。
しかし、これは綿密に定義すると長期国債、長期金利の利回りであり、一方で短期金利の指標金利は1〜2年物になります。
そして政策誘導目標金利とは1年物の金利を指し、現在のFRB(連邦準備制度理事会)の1年物の誘導目標政策金利は0〜0.25%です。
これを俗にFFレートと言います。
FFとはフェデラル・ファンドの略で、簡単に言えばFRBの金利ということです。
つまり短期は2年債が標準、長期は10年債が標準ということになります。
米10年債は現在1.6%程度の利回りになりますが、米2年物の金利は以下のグラフのとおり現在0.51%です。

10年債はそれほど上昇していないのですが、2年債は急騰しています。
10月27日に米2年債の誘導目標金利を達成

ここで注目してほしいのは、FRBが1年間の政策目標誘導金利を0〜0.25%としていることです。
0〜0.25%というFFレート、つまり1年物の金利を2年間に換算する計算式は、1.0025×1.0025=1.0050…になります。
つまり、政策上0.5%超になる2年間の誘導目標金利が10月27日には達成してしまったということです。
その水準に達したということは、この短期金利、2年物利回りを買っているファンドは当初の目的を達成したことになります。
通常、マーケットに携わる人間は政府の政策には逆らいません。
それに逆らうのは、実際には経済がマーケット以上に悪いかよい場合になりますが、現状、経済実態とそれほど乖離はありません。
ファンドは2年物国債利回りの目標である0.5%を達成したら、その利回り買い(実際は債券売りのトレード)を止める、つまりは手仕舞いの売りを始めるということです。
ファンドのバイ-セル戦略と長期金利への影響

ファンドの特性としてバイ-セル戦略というものがあり、何かを買っていれば、何かを売ります。
なぜなら、ファンドは不特定多数の資金を集めているので、その資金を溶かすわけにはいかず、例えば原油を買えばビットコインを売るなどのように、さまざまなリスクヘッジを行っているのです。
短期債の利回り買いの場合、通常は長期債の利回り売りを行います。
実際のトレードは、短期国債売り-長期国債買いになります。
実際の商いは、短期国債利回りは目標に達したので、その利回り買いを手仕舞い、反対に利回り売りを行っていた10年物国債、長期国債利回り売りの手仕舞い買いするのです。
結果としてどうなるのかといえば、長期金利は今までも上昇していたのがさらに上昇することになります。
そして短期国債は、インフレ懸念ですので暴落にはなりませんが、調整か横ばいということになるでしょう。
金相場への影響は?
下記は2年債と金の関係になります。

一見、2年債と金の関係は反相関の関係にあるように見えますが、10年債との比較をしてみましょう。

2年債と10年債で金との関係、どちらが強いかといえば、10年債の方が強いとしか言いようがありません。
特に2年債の急騰が進行しているのに、金が目に見えて下がったとは言えないでしょう。
つまり2年債利回りが頭を打って金利が下がり始めると、今度は10年債の金利が上昇し始めることになります。
となると、これ以上ドルやGDPに大きな変化がないという前提条件つきになりますが、金利の上昇、特に10年債の金利の上昇に伴い、ますます金の値段が下がる可能性が高いということになります。
この記事のまとめ
今回の記事では、FRBの誘導目標であるFFレート、0.5%超を米国債2年物が達成したことから、ファンドは米国債10年物利回り売りの手仕舞い買いを始め、今度はこの10年債の金利が上昇し始めることになる。
金の価格構成要因であるこの金利は、10年債と金の関係の方が強いと言えるので、今後の金の値段はますます下がる可能性が高い!
ただし、ほかの金の価格構成要因であるドルとGDPに大きな変化がない場合において、という前提条件つき。
こういう内容の記事でした。