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欧米側のメディアではウクライナが有利と喧伝される一方、現状はロシア軍が東部地域を確実に占拠したという報道になっています。
なぜ、こんなことになってしまったのか、今回はウクライナ侵攻と金価格のゆくえについてです。
アフガン侵攻とウクライナ侵攻

ソ連最後の書記長であったゴルバチョフ氏によると、1970年代にオイルショックによって潤沢な予算を持ち合わせたソ連は、インド洋に進出してインドの脅威に対抗するため、アフガニスタンに侵攻しました。
しかし1980年代、オイルショックで30ドル台まで高騰した原油価格が10ドル以下まで下がったことによって資金が枯渇。
結果、戦費が膨大となり、ソ連邦が破綻したとゴルバチョフ氏は述べています。
米軍も21世紀にアフガニスタンに侵攻しましたが、トランプ前大統領、バイデン大統領によって撤退を完了させました。
10年超におよぶアフガン戦争の結果は、敗北に終わったわけです。
超大国であろうと勝てるとは限らないのが、現代の戦争になることを示唆しています。
ロシアのそろばん勘定

ロシアは今回、ウクライナに侵攻するというどうしようもない決断をしました。
ロシアがソ連同様に、アフガン侵攻の轍を踏むほど間抜けなのかという問題があります。
石油価格は、過去の経緯を見ると120ドル超を超えるような場面があった後、必ず価格が下がっているので、インフレは直に収まると考えられています。
その背景では、間違いなくアフガン侵攻の失敗のそろばんを弾いているはずです。
つまり、今後の石油価格について目算があるはずです。
確かに今回の侵攻は愚かな判断ですが、そこまで間抜けなのかと問われれば、間抜けではないと誰もが思うことになるでしょう。
揺らぐサウジの石油覇権と台頭するロシア

ロシアの現在の石油世界の立場はアメリカ、サウジと並びリーダー格になります。
産油量を見た場合はアメリカが1位、サウジが2位、3位がロシアですが、輸出枠ではサウジが1位、2位ロシア、3位はアメリカになります。
つまりエネルギー依存度が高い日本などから見れば、輸出量の多くのないアメリカは産油国としてはあまり重要ではありません。
サウジは2020年、アメリカの意向を汲み産油量を増産しましたが、それがあだとなって石油はマイナス価格となりました。
その結果、サウジはジャーナリストのカショギ氏をトルコの自国総領事館で殺害するという暴挙に出て、現在はアメリカと係争中です。
サウジの国家予算がこの原油価格急落によって深刻な危機に見舞われる中、政権に対して批判的な記事を執筆するカショギ氏を許せない側面があったのでしょう。
首謀者は、高齢の国王に替わり実質的な支配者の立場にある皇太子(MBS)と考えられています。
微妙になりつつあるサウジとアメリカの関係

サウジの増産に際し、ロシアはOPEC(石油輸出国機構)プラスで強硬に反対しました。
サウジが増産がなければ、石油価格のマイナスという事態は避けられたわけで、結局はロシアの言い分が正しかったことになります。
それ以降のサウジは、再三にわたるバイデン大統領の増産要請を跳ねのけています。
数字上では増産しても、結局は減産をすることの繰り返しです。
アメリカも産油国ですが、OPECには加盟していないので自国の産油量は勝手に決定できます。
その際にサウジがアメリカの要請に応えて増産しても、安い原油を売るのは自分たちになるわけで、輸出のライバルであるアメリカの言うことを聞く必要がないということです。
石油以外のサウジとアメリカの付き合いは、イスラエルやイランの攻撃に対する安全保障という意味合いがあります
しかし、サウジからの外敵に対する防空識別圏を設定したまにしてほしいという要求に対して、アメリカが無視したことによって関係が悪化しています。
その上にバイデン大統領がカショギ氏事件の首謀者をMBSと断定したのです。
中国と手を結ぶロシアに経済崩壊は起こらない

こうしたサウジとアメリカの内紛を背景に、漁夫の利としてロシアが石油界の盟主になってしまったという流れになります。
そして、その盟主の力を維持させるため必要なのは、石油価格の維持です。
石油は潤沢な地下資源ですが、今新たに採掘されて増産される石油に関して、全て中国が買い付けてしまう状態になります。
仮に世界で10万バレル増産されても、中国が11万バレル買い付けてしまうので、常に石油需給はタイトになっているのが現状です。
つまり中国との経済関係の強化により、石油価格崩落からのロシア経済危機など考えられないのです。
ウクライナ侵攻に対する制裁としてアメリカがロシアの外貨準備を没収したことによって、ロシア経済がドル基軸体制から離れています。
ドル投資がなくなれば、ロシアは壊滅的な被害を受けるというのが一般的な論調ですが、ロシアからの石油、ガス供給がなくなれば危機に陥るのは中国です。
ゆえに中国も、ロシアに資金援助や投資をするほかありません。
ウクライナのEU加盟と東部2州の奪還は不可分
一方のEU諸国は無理を承知で、ロシアからのエネルギー供給をストップさせようとしています。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61889240Q2A620C2FF8000/
引用元:日本経済新聞
これにより、あれだけこだわっていた再生エネルギーからの転換が図られ、石炭価格は以下のとおりです。

炭素は多く排出しますが、石炭の良さは安いことにつきます。
しかし、ウクライナ侵攻後の欧州の石炭回帰によって価格が急騰したのに輪をかけ、今回の発表で高騰しています。
これでは石炭のメリットなどありません。
中国の主力は石炭火力発電ですが、今はロシアから安いエネルギーを輸入しているので、大きな影響は出ないでしょう。
なぜ最近になって急にウクライナのEU加盟の準備申請が通ったのかといえば、今ロシアが占拠している東部2州にヨーロッパ最大の炭田があるからです。
この加盟準備申請が通ったあとにゼレンスキー大統領は、東部2州を必ず奪還すると宣言しました。
結果としてロシアのガスを失ったとしても、ヨーロッパのエネルギー危機は改善されないことは確定したも同然です。
ロシアの勝利は火を見るよりも明らか!?

また、コロナ禍によって各国の政府は膨大な債務を抱えており、ここにエネルギー、食物インフレが進行すれば、金利が急騰します。
日本は毎年3兆円という気が遠くなるような利払いを行っていますが、これは0.1%のゼロ金利だからできるのであり、金利が1%になれば30兆円の資金が必要になります。
国家税収が80兆円程度で30兆円の負担になれば、ほとんどの子どもや住宅に関する補助金は消えることになるでしょう。
アメリカもヨーロッパも似たようなものです。
反対にロシアは、1992年の経済危機の反省を踏まえて、ほとんど海外債務がありません。
ウクライナはおそらく、欧米の支援がなければ全面的に負けになることでしょう。
ですから欧米は支援を続ける限り借金が増えていく、そしてインフレになればその利払いが多くなるという状態です。
この戦争の結果は、もう見えているとさえ言えるでしょう。
ウクライナ支援疲れによる欧米日の債務超過と金の価値

問題は各国の債務過剰で、中国も近年、債務過剰になっています。
しかし最近の経済成長により、資源の買い付け競争において、中国は欧米日に対して圧倒的な優位に立っています。
その上、世界の重要資源のほとんどを占拠している事実です。
例えば燃料電池のコバルトは、主要産出国であるアフリカの今後の権益の60%を押さえています。
つまりロシアや中国は食物、エネルギー、レアメタルなどの資源に困ることはありません。
一方の欧米、日本は完全に資源争いに負けている状態です。
となると、経済成長によって債務を返済していくどころか、債務超過によって自国通貨の衰退へとつながっていきます。
結果、金の価値がまた上昇するということになるのではないでしょうか。
この記事のまとめ
今回の記事では、ウクライナ善戦の背景には欧米による支援があるが、その欧米諸国が債務超過に悩まされる中でさらに支援を続ければ、債務も輪をかけて膨らんでいくことになる。
一方のロシアは、アメリカとサウジの悶着の合間を縫って石油覇権を手中にし、さらには凄まじい購買力と資源力を持つ中国とがっちりと手を握っている状態。
弱る欧米に対して優位な立場に立ち、もはや勝敗は決したも同然。
また、こうした事情から欧米諸国の自国通貨の衰退が現実味を帯びれば、金の価値がさらに上昇することになるだろう。
こういう内容の記事でした。