目次
アメリカでは4月16日から、EVなどの自動車販売の優遇税制がスタートします。
なぜ、自動車に優遇税制なのかについて、白金(プラチナ)とパラジウム相場への影響も含めて解説します。
この記事の要約
今回の記事では、日米独といった自動車製造主要国の景況感は、自動車の製造と関連性があることを確認。
米独の自動車製造が新型コロナウイルスのパンデミックが終わったのにそれほどまでには回復しないのは、製造の拠点を中国に移してしまったから。
アメリカは、自動車覇権を巡る争いで中国を制するという野望がある。
いずれにしろアメリカで始まるEVなどの自動車販売の優遇税制は、米国内の自動車製造を後押しし、ひいては景気に大きく寄与することだろう。
そして自動車の製造、特にEV車の燃料電池で必要となる白金およびパラジウムの価格は、上昇するに違いない。
では、自動車を巡る世界覇権競争について見ていきましょう。
アメリカの自動車生産台数の推移
下記は、過去10年間のアメリカの自動車生産台数の推移を表したグラフです。

2020年の新型コロナウイルスのパンデミックによって、アメリカの自動車生産台数は減少傾向にあります。
これは、一般的にはサプライチェーンの混乱によって自動車生産がままならないことを示しています。
ようやく2022年に安定的な生産ができるようになりましたが、2016年以前と比較すると生産台数は半分程度に留まっています。
この原因としてアメリカを代表する自動車メーカー、GM、フォード、クライスラーなどの凋落が挙げられますが、ここまで低下するものでしょうか。
日独の自動車生産台数との比較
アメリカの自動車産業の不振の原因を探るために、ドイツの自動車生産を見てみましょう。

ドイツの過去10年もアメリカと同様に2020年のパンデミック以降に急減し、2022年以降に回復してきています。
アメリカは2016年から生産量が急減しているのに対して、ドイツも同様に2018年以降に生産が減ってきています。
日本はどうでしょうか。

日本も米独同様に2020年以降に生産量が急減していますが、両国の2016〜2018以降のように目に見える急減ではありません。
パンデミックの終了と自動車製造の不振
パンデミックを境に自動車工場が閉鎖され、工場内でもソーシャルディスタンスが叫ばれれば生産性の下落は必然です。
その上に、自動車は1万以上のパーツから成り立っており、サプライチェーンの混乱によって部品供給が思うようにならなくなったのですから、生産台数が落ちることは必然と言えます。
そして、サプライチェーンが回復してきているので、だんだんと生産台数も回復してきているのです。
パンデミックとサプライチェーンの混乱、この2つの原因が解消してきているのですから、今後、自動車生産は回復してくることでしょう。
自動車製造はどの国でもGDPに大きく貢献しており、日本の場合はその2〜3%を占めます。
実は世界的にパンデミックが終了しつつある現在、製造業の不振がどの国でも問題になっているのです。
以下のグラフは、JRモルガンによる世界製造業指数です。

次にアメリカの製造業指数を挙げます。

以下はドイツの製造業指数です。

以下は日本になります。

各国の景況感に自動車製造を重ね合わせると…
例えば、日本の景況感に自動車の製造を重ね合わせてみましょう。

アメリカも見てみましょう。

次はドイツです。

以下はメキシコになります。

最後に韓国を挙げます。

有力な自動車生産国である韓国、メキシコも加えましたが、先進国のうち日本やドイツの景況感の低下は、自動車生産に左右されているのがわかるでしょう。
つまり昨今の製造業の不振、特に先進国においては自動車生産に左右されている側面がある、という推測が成り立つのです。
反対に新興国であるメキシコや韓国は、あまり影響を受けていないことが見て取れます。
つまり自動車生産は特に日本やドイツ、それほどではなくともアメリカでも景気浮揚のカギとなっているのです。
ゆえにアメリカで自動車優遇税制を行うことは、景気浮揚のカギとなるわけです。
中国の自動車生産と米独の関係
下記のグラフは、黒点線が中国の自動車生産、青線が同様に景況感指数です。
上記の自動車生産国は過去10年のグラフを掲示しましたが、中国は過去25年を表記しています。

黒点線の自動車生産に注目してください。
2016年くらいを境に、自動車生産が飛躍的に伸びています。
それと反対に米独などの自動車生産が落ち込んでいる、ということです。
つまり自動車生産を中国で行うようになってから、米独では生産が減ってきているのです。
コストの安い中国で組み立てを行うことによって、米独の自動車メーカーは利益を得ているという形になります。
これがグローバリゼーションというものです。
90年代の日米貿易摩擦が今対中国で起こっている

自動車産業は広範な経済活動に影響を与えるので、アメリカの優遇税制は景気刺激策になります。
しかし根本的な問題は、米独の生産が中国に移転してしまっていることです。
ここで思い出してほしいのは、日本でも自動車輸出を巡り、アメリカと大きな争いになりました。
その際に日本は自主規制を行い、将来的にトヨタもホンダもアメリカで自動車工場を保有するようになり、この1990年代の日米貿易摩擦は解消していくことになります。
今、中国では1990年代の日米の貿易摩擦と同じことが起こっているのです。
だったら中国の自動車メーカーもアメリカに工場を作れば問題ない、ということになるのでしょう。
しかし中国は習近平政権になって、2020年に社会主義社会の実現を標榜しています。
日本のメーカーが全米に進出するのは、自由と民主主義を標榜しているから構いません。
ところが中国のメーカーは社会主義を輸出することになるから、困るという理屈です。
2018年くらいからドイツで自動車の生産が減るのと同時に、イギリスやフランスと並んで2035年までにガソリンカーが公道を走るのを禁止する、とやっています。
これは中国メーカーの排除に他ならず、EVに関しては欧州製を望む、というわけです。
だからフォルクスワーゲンやベンツがアメリカで不正事故を犯しても、罰金だけでお咎めなし、となっているのです。
半導体や5Gを巡る覇権争いも

現在、半導体や5Gに関する覇権争いが中国と西側で起こっています。
これは本来、日本の1990年代と同じように現地生産が解決策となります。
ところが中国が2020年に社会主義化計画を実践し始めたことが、社会主義の全世界への輸出になることを欧米に危機感を抱かせているのです。
日本は1990年代に半導体産業を台湾や韓国に売却し、半導体のトップシェアをアメリカに渡しました。
現在の半導体のトップシェアは台湾で、その台湾を侵攻するということは、世界の半導体シェアを中国に引き渡すことになるというのが根幹です。
5G技術は中国がコスト的に安く、アメリカなどの西側は対抗できません。
ゆえにファーウェイは西側では営業ができないようになっています。
現在、ティックトックが揉めていますが、最終的に米国企業にティックトックを売却せよ、という動きになりつつあります。
これは1990年代にNECや富士通が台湾、韓国に半導体事業を売却したのを彷彿とさせます。
アメリカから見れば、ティックトックを通じて個人情報を搾取されることは自由と民主主義に反するもので許容できない、それこそ社会主義だ、という理屈になるのです。
今やチャイナアズナンバーワン?

かつて高度経済成長を経たに日本は、エズラ・ヴォーゲルの『ジャパンアズナンバーワン』がベストセラーになったくらいに経済力を増しました。
今やその対象が中国になったわけです。
最終的には有力な最先端企業はアメリカによって売却され、自動車はアメリカでの現地生産という流れで日本のバブルは崩壊しました。
中国も例えば、アリババやテンセントが中国当局の指導によって企業分割されています。
これはその布石なのか、中国独自の判断なのかは不明ですが、西側企業に分割されるのであれば、1990年代と同じになるでしょう。
いずれにしろアメリカは、自動車覇権を巡る争いで中国を制するという野望があります。
白金とパラジウム価格への影響

アメリカにおけるEV販売優遇制は、自当社の生産回復に貢献し、大きく景気に寄与するはずです。
その自動車生産において、特にガソリンカーで言えばエンジンに当たるEVの燃料電池には白金、パラジウムが不可欠になります。
今後、白金とパラジウムの価格が大きく上昇する可能性があるでしょう。















