金相場のマーケットを話す前に大前提として、前年の動きを基準に金も株価も白金(プラチナ)、パラジウムも値段が動いているということ。
今年の場合、去年が大きく動いたので非常にわかりやすいマーケットになるでしょう。
この記事の要約
今回の記事では、金相場を動かす2つの主要因、ドルと金利をかけることで算出されるドルインデックスの2022年の動きから今年の金市場の動きを導き出す。
【1】まずアメリカの政府閉鎖のXデーとされる6月1日までは、これを理由とするドル安・金利高となり、両者のうちドル安の方が進行しやすいことから、金高に。
【2】続く6月1日から10月までの動きを、政府封鎖問題が解決したと仮定して紐解くと、ドルインデックスの値が昨年以上に相当に安くなるので、金はさらに上がる。
【3】そして10月から年末までは、それまでほどには上昇しない。
【4】また、前年比でGDP成長率は、ドルの変動率に比べて取るにならないので、気にしなくてよし。
【5】重要な点は、金の需給相場入りは絶賛継続中で、今年の金の値動きは、ドルや金利がいくら動いたとしても、需給次第でさらに上昇するということ。
【Last】つまり、今年の金は怖いものなし。
それでは、最後に不安点も交えて解説していきます。
2022年のドルインデックスの動き
金マーケットを動かすのは、主にドルと金利であり、その代表格が「ドル×金利」で導き出されるドルインデックスです。
では、2022年5月7日から2023年5月6日までのドルインデックスの動きを見てみましょう。
去年は4月から利上げを開始し、9月くらいからは0.5の利上げの結果、ドルインデックスは10月にピークアウトしています。
では、これと比較して行きましょう。
【1】6月1日までの金相場の動き
5月1日、イエレン米財務長官は政府閉鎖のXデーは6月1日近辺になると議会で証言しました。
その間、議会は政府閉鎖を回避するために折衝を行うでしょうが、相も変わらず共和党と民主党の党派争いが続き、今年もギリギリになるでしょう。
ではその間、マーケットはどう動くと予測されるのかと言えば以下のようになります。
まず、政府閉鎖の可能性もある国のお金、つまりドルを買おうとしない人の方が多くなるので、ドル安です。
そして政府閉鎖となれば、国の借金の利払いも停止されるので、信用がない通貨の金利は上昇します。
すなわち、ドル安・金利高になる可能性が高いのです。
ここで問題は、これが「ドル安>金利高」になるか「ドル安<金利高」になるかです。
この答えは、「ドル×金利」のドルインデックスで表現されます。
すなわちドルインデックスが安くなれば、金などのリスク資産は買いになり、高ければ売りになる、ということです。
全体としては、金利高よりもドル安の方が進行しやすくなるので、金は買いになります。
加えて言えば、ドルインデックスは去年よりも安い状態がほとんどです。
一部の期間、5月の末から6月の上旬にかけて、現在の値位置だと去年よりも高くなるかもしれませんが、ドルは去年より安い状態を保っているので、金や白金、パラジウムなどは買いになるでしょう。
【2】6月1日から10月までの動き
この期間は、アメリカの債務上限問題が解決した、という仮定で解説します。
昨年のこの期間、ドルは度重なる利上げによって高騰している一方、今年は去年のような利上げはないので、ドルインデックスはおそらく上昇しないでしょう。
そうなると必然的に現在から6月1日までの期間よりも、ドルは去年と比較して相当に安くなります。
つまり「ドル×金利」の答えが去年より相当に安くなるので、6月1日までの期間以上に高くなるということです。
金相場が高騰する前の6月1日までに金や株、白金、パラジウムなどを買っておくべきでしょう。
【3】10月から年末まで
10月にドルインデックスが頭を迎えた後、ドルインデックスは下落していきます。
その際の今年のドルインデックスの水準が問題になりますが、その水準まで行っていないであろうと思われます。
万が一、2023年中にドルが去年よりも高くなれば、金の急落に注意しなければいけません。
しかし、6月1日から10月までほどはドル安ではないので、金などのリスク資産は下がるということではなく、以前のテンポでは上昇しないということになります。
下がる際は、ドルが去年より高くなった状態で下がるのです。
前年比較で去年よりドルが高くなった時点で、金の急落を警戒しなけければいけません。
【4】日米のGDPについて
価格の構成要因は、
【1】ドル
【2】金利
【3】GDP
+需給
です。
上記で触れていないのは、GDPと需給になります。
まずGDPですが、コロナ復興で成長率が大きくなった2022年と今年を比較すれば、成長率は鈍化するという認識に変わりません。
1〜3月の年間の成長率が1.6%なので、ドルが去年10月に30%高かかったものが現在、前年比3%のマイナスになっているとその変動は33%です。
GDP成長率1.6%は、ドルの変動率33%に対して取るに足りません。
つまりアメリカ経済が景気がよかろうとリセッション(景気後退)に落ち込もうと、ドルインデックスと比較しても変動はわずかなので、無視してもいい動き、になります。
ただし10年スパンの動きは、コロナ禍からの復興がマーケットの大きなテーマです。
金融不安があろうと債務上限があろうと、関係なく成長はしていくと考えれば、金も株も買い、という方針に変更はありません。
むしろ、予想だにしえない事件によって売られたところこそ買いになります。
今回の金融不安で売られたところは、全てのリスク商品が買いとなったことを忘れてはいけません。
一方で日本のGDPは、2023年にはコロナ禍から本格的な回復になるかと思われましたが、その足取りは非常に重く、いまだにドル円が円安に行っているということは、日本経済はまだ弱いということになります。
日本経済もどこかで回復をすることになるでしょうが、円高の場合、円建ての金は非常に注意ということになります。
【5】金の需給と不安点について
需給に関しては、ETFの好調販売、純金積み立ても好調、そしてグローバルサウスを中心とした中央銀行の金購入も活発しているため、今年は需給相場が継続するでしょう。
今年の金の値動きは、「【1】ドル・【2】金利・【3】GDP<需給」であり、ドルや金利がいくら金にポジティブに動いたとしても、需給がひっ迫していればさらに上昇するということです。
今年の場合、ドルも金利も金にポジティブに動き、需給はさらにポジティブに動くわけですから、怖いものなしということです。
これだけ強気の材料が多い中、不安な点が唯一あります。
それは金融緩和の縮小です。
コロナでバラマキ過ぎたお金の回収を今、全世界で行っています。
要は、債券などの安全資産と金や株をはじめとするリスク資産の間をマネーは行ったり来たりしているのです。
今まで現金などの安全資産にマネーが大量に流れ込んだので、安全資産の価値が大暴落を起こして一気にリスク資産が高騰しました。
今は金融緩和の縮小ということは、現金の価値が少しづつ上がり、リスク資産の価値が低減しているという状態です。
インフレが加速して行けば、おそらく世界の政府はばらまいた現金の回収を急ぐはずです。
つまり、リスク資産全体の価値が下がっていることを忘れてはいけないということで、本日のコラムを締めます。