ドル建て金価格が予測どおり急進していますが、本当にこのまま上昇するのか不安がありませんか?
反対に円建ての金は、円高によって伸び悩むでしょう。ここで、ある程度の展開を説明していきます。
この記事の要約
今回の記事では、今後は米雇用の悪化が予測されドル安へ。
米金利も下落。
米雇用統計の発表がある12月2日から数日に転換日が訪れ、ドル高・金利高に戻ることになるだろう。
ただし、ドル安や金利安の傾向が遮断されたわけではなく、また金や株などのリスク資産は押し目を形成する可能性が高いということになる。
それでは始めましょう。
ドル円への為替介入
財務省のドル円相場介入は月初の始値、または前月の終値から1%刻みで動いていることを以前解説しました。
https://kinkaimasu.jp/lounge/2022/10/26/when_will_foreign_exchange_intervention_take_place/
そして、これが10%動くと実際に介入があると説明しました。
ただし今年の9月と10月は、為替がそれ以前に大きく円安に行っていたので、財務省は5%で介入しました。
ドル円は151.93まで行きましたが、財務省は151.9近辺で介入して、予測通り円高方向に戻していることは事実です。
ここで大事なのは月初、ないしは月末の値段になります。
12月の介入基準線
12月がスタートしたので、その1%の基準線を変更しなければいけません。
それが以下のチャートになります。
1380.29が12月のスタート値(赤い線の上から2本目)です。
そこから上と下に線を1%刻みに引きます。
このチャートは12月2日午前のものですが、すでに2%の円高になっています。
そうなると警戒しなければいけないのは、財務省の介入です。
この介入は10月に5%の急騰で行っているので、前例にならい5%の円高、すなわち「138.029×0.95=135.12円」で介入する可能性があることを念頭に置かなければなりません。
ただ、まだ水準が下なので念頭に入れるだけでOKです。
実際の介入の前に、鈴木財務大臣や神田財務官が「為替相場を注視する」と発言し始めるのが炭鉱のカナリアだと以前に説明しました。
このカナリアが鳴いてから警戒すればいいでしょう。
ドル安になった材料は?
問題はドルとは雇用のことなので、これだけドル安になるのには雇用になんらかの悪材料があったのか、という問題です。
では、12月1日に発表された失業保険申請者数を見てみましょう。
前週は241Kでしたが、今回は225Kと雇用保険の申請者は減っています。
しかし減っていればドルが強くなるのに、実際は下がっています。
ドルが下がった原因は、11月30日のパウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長の講演です。
パウエルFRB議長の利上げ減速シグナル、投資家は政策転換と誤解か
参照元:ブルームバーグ
パウエル議長は12月15日のFOMC(連邦公開市場委員会)の利上げ幅を前回0.75から0.5にすることを示唆したので、金利が下がり始めました。
ドルの計算は「ドル×金利」なので、ドルの値が小さくなった結果のドル安と思われます。
しかし、12月1日は2%もドル円が急騰してしまい、12月15日までそれが続くとすれば、「2%×12日間」で24%も急騰するのか、という非現実的な話をしても仕方がありません。
では、どうなるのでしょうか。
米雇用とドルの現状
以前、雇用統計の前後がドル円や金などの変化になる可能性が高いと解説しましたが、雇用統計は12月2日の発表です。
変化日は12月2日〜5日くらいなので、この雇用統計の発表が境になる可能性があります。
雇用統計の予測は、新規雇用20万人増がコンセンサス。
一方で毎週のように26万人の失業者が出ているので、4週で100万人以上失業者が出ているわけです。
新規雇用は20万人の予想、失業は100万人ですから、差っ引きで80万人総雇用は減ることになり、雇用統計は悪いということになります。
ドル円は11月3日から12月2日の1カ月で「≒8.5%」の円高になっています。
一方で総雇用は80万人減ると仮定すると、1%の就業人口の減少となります。
それに対して、ドル円は8パーセントの下落。
参考までに円インデックスは8.7の上昇、ドルインデックスは6.1%の下落です。
差っ引きで2.6の円高が妥当な線です。
そしてドルは「ドル×金利」なので、1カ月の金利は0.55%下落しています。
となると2.6%の円高から0.55を引けば、2.05の円高が妥当になります。
円金利は0.01の上昇ですが、計算に含めるほどではないでしょう。
つまり1カ月間で妥当な円高は2%ですが、8%の円高なので、明らかにやり過ぎということが言えます。
ただし1カ月以上前はそれ以上に円安をやり過ぎていたので、この結果も妥当といえば妥当でしょう。
介入チャートを見てみると…
もう一度、介入チャートを見てください。
11月30日のパウエル発言から大幅な円高が進行していますが、このグラフを見ると、右端の12月2日まで大きな円高になっています。
その間の角度を見ると、円高になるペースが減速しているのが明らかです。
ドルとは雇用のことですが、どう見ても、12月2日の雇用統計が悪い結果になるのは必然です。
その前に、ドルを売り過ぎている事実からも目を離してはいけません。
つまり、雇用統計の悪化をすでに織り込んでしまっている相場と考えればいいのです。
発表直後は雇用悪化を受けて売られるでしょうが、誰の目にもやり過ぎは明らかですし、その後の雇用発表は失業保険やフィリーやエンパイアの雇用指数程度しかありません。
ここでの発表は8%も下げるような内容ではないと現時点では考えられるので、残る選択肢は「戻り」になります。
12月2日〜5日が転換日と考えれば、ドル円相場は戻ることになるでしょう。
上記のチャートの下への角度が日がたつにつれて鈍角になっていることは、「もう売れない」という悲鳴には聞こえないでしょうか。
金やそのほかのリスク資産への影響
金の価格の構成要件は以下のとおりです。
【1】ドル
【2】金利
【3】GDP(国内総生産)
+需給
このうちの今回は【1】と【2】について上記で説明しました。
これが12月2日以前までは「ドル安・金利安」であったのが、以降は「ドル高・金利高」になる可能性があるということです。
その理由は、明らかにやり過ぎだからです。
ドル高は金安、リスク資産安の材料、金利高も同様です。
そして、ドル安や金利安の傾向が遮断されたわけではありません。
ドル、つまり雇用は季節的に今後も減少するでしょうし、金利は現実的にインフレ率は減少しています。
つまりドル安、金利安の地合いはもっているのですが、短期的にやり過ぎだから、また金や株などのリスク資産は押し目を形成する可能性が高いでしょう。
これは、白金(プラチナ)やパラジウムにも当てはまります。