目次
勃発から半年が経過してもいまだに終わる気配がないロシアによるウクライナ侵攻。
今回は、経済的観点からロシアとウクライナの現状を分析し、その背後に見えるアメリカの影、そして金価格への影響も見ていきましょう。
露と宇、有利なのはどっち?
連日、ウクライナ侵攻の報道がなされています。
ウクライナが有利だと報道されるわりには、ウクライナ軍の巻き返しがないと感じている方が多いのではないでしょうか。
根本的に、国土の大きさから見ればロシア軍が圧倒的に有利です。
戦力、軍備から見ても、ウクライナが欧米から軍備を供与されている事実を見れば、ロシアの方が有利だと推測できるでしょう。
例えば1600年に起こった関ヶ原の戦いは、事情を知らない海外の軍事専門家は圧倒的に西軍有利と言うでしょう。
これは兵員の数が東軍と西軍では違い過ぎたからです。
東軍が勝利したのは、小早川秀秋などの裏切りがあったからでした。
つまり軍備が小さい側としては、奇襲や裏切りなどによって戦略を練るほかありません。
今回、ウクライナ軍によるハルキウ地域の一部奪還が成功しましたが、これを「奇襲」と言わずしてなんと言うのでしょうか。
つまり日本や欧米ではウクライナ有利と報道されていますが、兵員や軍備の差で圧倒的に有利なロシアが勝つ見込みが高いのです。
ウクライナの主要輸出品の状況
少なくともロシアは、戦費の調達費用にはエネルギーを輸出すればいいので、盤石とは言えずとも有利です。
一方のウクライナの主な輸出品目は、鉄鋼関連と穀物関連になります。
まず国土のほとんどが戦争体制であり、一般的な工場などは被災の可能性があるので稼働できません。
鉄鋼関連は、欧州最大の鉄鉱石の炭田があり、鉄工所などの製鉄所が集中しているドンバス地方は、ロシアがいち早く抑えました。
ゆえに鉄鋼関連の輸出から、ウクライナは戦費や税金を徴収できない状態です。
穀物は、欧州の穀倉地帯として有名なのは中央部と東部、南部になります。
このうち東部と南部は戦場になっており、穀物の生産がうまくいくかの問題です。
仮にできたとしても、輸出港であるクリミアをロシアに抑えられています。
陸路での輸送も考えられますが、欧州最大の穀倉地帯を持つフランスが東欧まで輸出しており、ウクライナ産小麦の主な輸出先は、アフリカや中東になるのは歴然です。
そもそも2015年あたりから、ウクライナ産とロシア産の小麦が輸出市場で頭角を現した理由はコストになります。
そのコストが今回の戦争によって大きく上昇しており、価格面で競争力を失っています。
ロシアがクリミア近辺で穀物輸出に協力するのは、自国も小麦輸出によって外貨の獲得を行っているのが理由です。
ウクライナが金欠になるのは時間の問題
以上、ウクライナは国土が戦場と化しているので、戦費の調達は国内では望むべくもなく、輸出に頼ろうにも主要品目がロシアに抑えられています。
ウクライナが金欠になるのは、時間の問題と考えるのが妥当です。
連日、どこかでウクライナ軍が負けているという報道を見ていて、誰が資金の供給や援助などを積極的に行うのでしょう。
ゆえに欧米や日本などの西側諸国では、ウクライナ有利の報道を流すことになります。
意図的にウクライナ有利で、ロシアがろくでもない連中という報道をしなければ、世界中からウクライナへの資金供給の申し出がないのです。
どちらにしろ、ウクラウイナの資金調達はどうしようもない状況で、欧米も現状ではウクライナに目一杯の資金供給を行わないでしょう。
そして武器貸与も小出しなのは、負ける可能性の方が高いからということでしょう。
台湾問題を通して見えるアメリカの思惑
台湾海峡での中国の軍事演習は、ペロシ米下院議長が訪台を機に行われ、ようやく落ち着いたときにバイデン大統領の以下の発言がありました。
https://jp.reuters.com/article/biden-taiwan-idJPKCN2N90DA
「米大統領、台湾有事に武力行使の選択肢 主権で妥協せずと中国」
引用元:ロイター
この発言に対して、中国が猛反発するのはいつもの光景です。
さて、アメリカの輸出金額を見ると増大しています。
ここで特筆すべきは、アメリカはドル高だということです。
つまり日本経済が円高では輸出が細り、円安では輸入が割高になるので細ることの逆が起こっているのです。
アメリカの輸出品目は以下のようになっています。
https://comtrade.tradingeconomics.com/comtrade/share?r=usa&c=0000&v=treemapcategories&t=2&title=
引用元:TRADING ECONOMICS
エネルギーや機械に続き2番目に大きい項目の中に原子力がありますが、実際にはそのほとんどは武器になります。
要するに、ウクライナや台湾で危機をあおることがアメリカの国益に叶うのです。
アメリカの輸出金額増大の理由
ウクライナでは、アメリカの兵器の優秀さばかりが喧伝され、ロシアの武器は前近代的と報道されています。
果たしてそうなのでしょうか。
ロシアも世界の主要な武器輸出国ですから、それなりの装備があるでしょう。
現実的にはインドやトルコ、シリアなどがロシア製武器を購入しています。
これらの国々は、オンボロとわかっていながら購入しているのでしょうか。
常識的には、自国で生産できないから購入していると考えるのが妥当です。
つまりアメリカは兵器市場で世界最大の規模を誇っているのですから、戦争をあおれば兵器産業が儲かるという国益に叶った戦略を行っているのです。
ゆえにウクライナへの武器供与は、絶好の宣伝機会になります。
同様にエネルギーの輸出も国益にかなっています。
アメリカは世界最大の産油国です。
戦争によって価格が上昇すれば、中東やロシア産よりも輸送にリスクがないアメリカ産原油や天然ガスの売り上げは伸びます。
つまりアメリカの輸出代金が大幅に増えているのは、エネルギーや武器が大きく寄与しているのです。
日本の予算編成と台湾、ウクライナ有事
日本の2023年度の予算編成は、だいたい夏場過ぎから概算要求に始まり、いまも折衝を繰り返しています。
アメリカが台湾やウクライナをあおった結果、日本の防衛省の予算は大幅に増額されています。
バイデン大統領がようやく台湾情勢が落ち着いてきたときに、さらにまた危機をあおるのは、日本の予算編成と関連がないわけがないのです。
おそらく、中間選挙後にはもっと煽ってくるのでしょう。
結果として、日本の防衛予算は国民の反対もあまりなく大幅増額となり、日本は兵器製造をほとんどしていないので、儲かるのはアメリカという構図になります。
結局、戦争を一番やりたいのはアメリカで、それがウクライナ発の世界大戦にならないように、台湾も中国が常識的に考えて侵攻をするはずがないのに、煽りまくっているというのが本当のところではないでしょうか。
ついでにWHO(世界保健機関)が食料危機を煽っています。
言うまでもなく、アメリカは世界の穀物輸出市場のメインプレイヤーです。
戦争と金とウクライナと
戦争には莫大な費用がかかります。
その費用を調達するために、返済困難な借金をして通貨価値が下落することでインフレが起こり、金も高騰するのです。
現代では、国家財政が破綻するような戦争は各国が自制している状態であり、戦争があれば金は買いという構図が成り立ちにくくなっています。
台湾の件は金の価格にはあまり関係がないですが、ウクライナは別です。
自国の存亡をかけて、収入がないのに戦争を続けています。
ウクライナ通貨建ての金があれば、すでに大暴騰していることでしょう。
この記事のまとめ
今回の記事では、ロシアとウクライナの輸出品目の状況を考察し、この侵攻戦はロシア側が有利であることを確認。
しかもこの侵攻戦の最中、輸出を伸ばしているのはアメリカであり、その主な品目は兵器とエネルギーであるという事実。
台湾海峡を含め、危機をあおればあおるほどアメリカが儲かる仕組みができているということ。
現代の戦争では、戦争があれば金は買いという構図が成り立ちにくい。
金価格高騰への大きな影響はないだろう。
こういう内容の記事でした。