目次
日本の実効為替レートの推移
今回は、昨今の日本経済の動きを観察すると、復活の動きが見えてきていることを解説していきます。
まずは貿易面から見ていきましょう。
下記は、貿易を中心に描画している日本の実効為替レートの1994年からの推移です。

グラフが異様に上昇しているのが1995年(平成7年)になります。
この時期に何が起こっていたかといえば、バブル崩壊が1989年(平成元年)で、未曽有の日本経済の下落があり、そこから揺り戻しがありました。
つまり、あまりにも落ち込みすぎた反動で上昇したのが1995年になります。
1997〜98年(平成9〜10年)は、北海道拓殖銀行や山一證券の破たん、自主廃業などが起こった平成の金融恐慌になります。
平成の金融恐慌の影に隠れている政治の大きな変革

この金融恐慌の裏では、政治の革命的な動きも起こっています。
現在の首相は安倍さんになりますが、首相が強力な権力を持つようになったのはこの辺りです。
選挙制度改革が行われ、衆議院に小選挙区比例代表並立制が確立した結果、首相の権力が増しました。
この制度は、首相や与党(自民党)の権力構造を変革する重要なもので、憲法を改正したくらいの変化が起きています。
代表格が故・橋本龍太郎さんで、自民党の歴史の中で初めて派閥の領袖でなかった総理大臣になります。
現在でいえば、小泉進次郎さんのような立ち位置だといえば想像しやすいかもしれません。
これは平成の政治史で一番変わったところになりますので、覚えておいたほうがよいでしょう。
リーマンショックから東日本大震災にかけてなぜ急騰した?

グラフに戻ると、金融恐慌によって当然、日本の国力は落ち込みました。
その後のITバブル(ドットコムバブル)によって急騰と急落を起こします。
そして、2000年代初頭はいわゆるデフレの時代で右肩下がりです。
ここからは記憶に新しいリーマンショックがありました。
注目してほしいのは、リーマンショック直後は下がっていますが、その後、急騰している点です。
何が起こったかといえば、リーマンショックと東日本大震災によって大幅な円高が進行した結果、日本の株や不動産が大バーゲンセールになりました。
かといって、日本の投資家にはそれを買う余力がありません。
そこで当時、リーマンショック後すぐに金融緩和を実施したアメリカ、イギリス、スイスにはお金があり余っており、そういった外交人投資家が一斉に日本の資産を買ったのです。
この時期に中国人などが日本の山林や水資源などをも買い占めています。
外国人は日本の資産を通常、円で買います。
その額があまりにも巨大だったので、実効為替レートが急騰したのです。
金融恐慌時とリーマンおよび東日本大震災時の相違

1997年の金融恐慌のときには実効為替レートは急落していますが、リーマンショックから東日本大震災の時期には逆に急騰したのはどういうことでしょうか。
まず、金融恐慌とは銀行などの金融機関の倒産を指します。
つまり、金融機関が外国人の外貨建てのお金を円に変換するにあたり、その為替の機能が機能していなかったから実効為替レートが急落しました。
ところが、リーマンショックや東日本震災では、日本の銀行はほとんど被害を受けない状況でしたし、後者では関西地方の金融機関は機能したわけですから、バーゲンセールになった日本の資産を外国人投資家が買うことができたのです。
金融恐慌の際には輸出が減るのはもちろん、輸入もお金の決済ができないので減ったのですが、リーマンと震災では金融機能が温存され、輸出は激減になりましたが、外国人の投資が活発化したので、実効為替レートが急騰したのです。
つまり、日本が好調=日本の国力が上昇するということではなく、輸出、輸入、資本取引(外国人が日本の資産を買うなどの行為もその一部)のトータルが伸びると国力に関わりなく実効為替レートは伸びるということになります。
言い換えれば、実効為替レート=国力という概念ではなく、貿易量や資本取引が増えると急騰するという性質があるのです。
日本が不調のときには外国人に日本の資産を買ってもらった方が国力は維持できるという逆説も成り立ちます。
2016年からマイナス金利時代へ

欧米は2008年には金融緩和を導入しましたが、日本は安倍さんが首相に再任されたのが2013年末で、日本銀行が大規模な金融緩和を行ったのが2014年4月です。
グラフを見るとその効果は全くないのですが、2016年1月にスタートしたマイナス金利には、絶大な効果があったことがおわかりになると思います。
こういったデータを見ると、誰もがおわかりのように、マイナス金利を解除することは当面ありません。
そもそもゼロ金利が20年前に始まり、現在はマイナス金利から3年が経過しています。
「金利が上昇しますよ」という不動産屋のセールストークなんてアテにならないことがおわかりになるでしょう。
マイナス金利はまだまだ続きますし、景気が悪くなればそのマイナス金利の深堀りをするのが当然です。
このことを考えると、金の価格も当面、高いということがおわかりになると多います。
すなわち従前から言っているように、金利が安いのが当たり前になってくるということです。
日本のGDPの推移
下記は1994年からのGDP総額の推移になります。

金額は円建てではなく、ドル建てになっている点がキモです。
つまり、ここに為替レートを乗っけるのです。
円高になるときは円が強いのですから、GDPは伸びます。
そして、円安になるとドル建てのGDPは縮小するのです。
つまり、為替レートが大きく影響するので、こんなグラフには信用性がないのです。
証拠に2011年の東日本震災のときにこの中で最高のGDPになっているのですが、そんなわけがありません。
円高だったから、こういうグラフになったのです。
つまり、GDPとは去年との比較でなら有効な指標ですが、絶対値であるGDPの金額を記せば、円建てでもドル建てでも、為替相場の左右を受けます。
ですから、一般的には国力の推移というとGDPになりますが、実効為替レートで図ったほうがより正確に実態がわかるのです。
ここ2年の日本の実効為替レート
下記はここ2年の実効為替レートです。

実効為替レートは2019年年初から上昇したままです。
為替レートと比較してみましょう。
以下のグラフはドル円になります。

為替レートが円高にいけば、実効為替レートは上昇する傾向があり、2018年4〜12月のように円安に行けば、本来は実効為替レートが下がるのですが、実際には横ばいです。
また、2018年12月〜2019年8月まで円高ですから、実効為替レートが上昇するのは当然としても、2019年8月以降円安になっているのに、実効為替レートは前の水準まで戻らなくなっています。
これは、従前までは円高にいけば実効為替レートがリーマンや東日本震災のときのように急騰するはずなのに、横ばいということを考えれば、これ以外の要因を考えると日本の実力がついてきているということができます。
大成功した安倍首相によるマイナス金利政策

安倍首相の支持率は現在低空飛行ですが、この日本経済の復活は安倍首相の功績と言っても過言ではありません。
初期のアベノミクスなんて大失敗の最たるものでしたが、マイナス金利が大成功を収めているのは実効為替レートを見ればわかります。
結果として、よほどのことがない限りマイナス金利の解除はない、ゆえに金も当面高いということができるのです。
トランプ大統領がFRBに対して「金利を下げろ、下げろ」と言うのは、恫喝ではなくアメリカのためなのです。
ヨーロッパもマイナス金利で景気が下支えされ、日本もそうなのですから、マイナス金利をアメリカでも導入したいのは当然です。
歴史を見れば未来はわかる

今回の分析は、歴史を見れば未来はわかるということの典型例でもありました。
国力を計るのには、GDPという世界のコンセンサスを覆すものなのです。
理由は明快で、GDPは円建てにしてもドル建てにしても、為替レートの変動に大きく左右されますが、実効為替レートは貿易や資本取引を参考に抽出されているからです。
これを見れば、円高になれば日本への投資が増え、円安になれば国内産業が活性化するということが言えることになります。
アベノミクスによって円高の際、日本の規制撤廃などによって外資が参入しやすくなったことを示しますし、過度な円安にしなくてもここ最近の実効為替レートを見れば日本経済は成長することになります。
きちんと過去10〜30年程度の歴史でマーケットがどうなったかを見れば、未来は見通せるのです。
以上を踏まえた上で、次回は今後の令和時代に起こりうるであろう社会や経済の変化、問題点等の見通しについて解説いたします。














