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現状の世界経済は、けん引役がいない状態です。その立場に立てるのは、新型コロナのロックダウンから回復を果たした中国になるでしょう。
今回は、金価格の展望を交えて解説します。
低迷するアメリカ経済

ここのところ連日、アメリカのインフレがメディアで取り上げられています。
統計では前年と比較して8.6%の物価高と発表されていますが、6月下旬現在、ガソリン価格は前年から60%も上昇しています。
車社会と言われるアメリカでは、ガソリン価格は安くて当然という意見が支配的です。
その証拠に、これだけ世界が炭素規制を叫んでいる中、相も変わらず売れているのはSUVという燃費が非常に悪い車になります。
つまり燃費などを意識せず、自分の気に入った車に乗りたいということの表現です。
ただしその前提として、ガソリンが常に安いという条件があります。
この前提条件が崩れ、物価高で庶民が生活できないような状態になっているから、全米各地で銃乱射事件などが起こるわけです。
これで、個人消費がGDP(国内総生産)の7割以上を占めるアメリカ経済がよくなるわけがありません。
前回も触れましたが、実際に二期連続のGDPマイナスが現実味を帯びています。
https://kinkaimasu.jp/lounge/2022/06/23/america_enters_a_recession_how_will_gold_prices_change/
世界はコロナショックがあった2020年以降、自国が不景気ならアメリカに輸出して稼げばよい、投資すればよいという形で復興してきました。
今やこうした状況に暗雲が立ち込めているのです。
エネルギーとロシアのダブルパンチに見舞われるEU

アメリカの軍事的、経済的な盟友であるヨーロッパはどうかといえば、ロシアによるウクライナ侵攻によってエネルギーの需要が追い付かない状況です。
エネルギー価格が高騰し、庶民の消費者信頼感指数、日本では街角景気指数に類する統計が過去最悪となっています。
これは物価の高騰に賃金が追い付かず、庶民に不満が広がっていることにほかなりません。
ユーロ圏もアメリカや日本と同様に、個人消費が6割を占める経済なので、庶民が生活に苦しんでいる状態であれば、景気がよくなるわけがないのです。
もちろんロシアがパイプラインによるガス送還の停止や、ウクライナに飽き足らず他国へ侵攻する可能性がないとは言い切れません。
経済的にも軍事的にも何をやってくるかわからない状態で、景気がよくなるわけがないでしょう。
米中次第な日本の経済

日本は、新型コロナの緊急事態や蔓延防止処置が解除されて3ヵ月が経過しました。
個人消費は上向いていると見れますが、最大の貿易相手国である中国は5月までロックダウンによって低調でした。
6月から上海などの経済都市の封鎖が解除されましたが、その結果は見えてきていません。
言えることは、世界の海運市場の大部分を握る中国の船賃がロックダウンが解除されれば再び高騰すると見込まれましたが、反対に下がっている状況です。
コロナショック当初はいち早く復興経済を成し遂げた中国ですが、今回は目覚ましい上昇があまり観察できないので、日本も低迷するのです。
そして、貿易相手国2位のアメリカは景気後退局面になります。
日本は個人消費がGDPの7割を占めるので、個人消費が回復すれば景気も上向くと感じられます。
しかし、そもそも日本人の給料が上昇しないので、GDPの回復は中国、アメリカ次第なのです。
復興の遅れが感じられる中国経済

本来、6月からロックダウンが解除された中国に注目が集まるはずですが、鉱工業生の劇的な飛躍はいまだに確認できていません。
日々の動きがある原油市況や株価、海上運賃などを見ても、復興の遅れが感じられます。
日本は給料が上昇しないので、個人消費は見込めません。
見込めるのはこの円安で輸出が増大する輸出企業ですが、まだデータがないのでなんとも言えない状態です。
常識的に見れば、世界に先行して中国が復興を遂げて世界経済を引っ張っていく状態になるでしょう。
アメリカはその中国に制裁を行い、偉そうな物言いをしていて、中国が気分よく協力するわけがありません。
アメリカ経済が失速してきているので、今さらのように中国に対する経済制裁解除の協議に入っていますが、時すでに遅し。
中国の成長が見込めない可能性があることを見抜かれつつあるのが現在のマーケットの状況で、世界の株価は軒並み安値圏に沈んでいるということです。
今後の世界経済は中国の復興頼み

世界のGDPの6割を占めるアメリカ、ユーロ圏、中国、日本の中で、見込みがあるのは中国です。
日本は中国が上昇すれば、上昇ということになるでしょう。
反対にアメリカはインフレが収まるまで無理でしょうし、ユーロ圏もウクライナ問題がまだまだ長引きそうな気配です。
つまり、中国がコケれば世界もコケる瀬戸際になっているのが現状になります。
その時にアメリカは何をやっているのかといえば、人権問題やロシアに協力するなということです。
もちろん、どうでもよいことではありませんが、世界的な不景気になれば、銃乱射騒動や戦争がさらに拡大するのですから、未然に防がなければいけません。
それに対してアメリカは経済制裁を行う、台湾問題が云々、南シナ海の占有問題と中国経済を封じ込めようとしています。
最近は事の重大性に気づき、中間選挙後の年末に解除を検討していた対中制裁の一部解除を検討し始めました。
ただ、今から交渉してその間に崩落が起これば元も子もありません。
食料価格や金価格について今後注意すべきこと

まず、株価などの大急落が予測されます。
その間も資源インフレは進行するということです。
2020年にエネルギーがマイナス価格になったのは、中国の不需要が大きな要因として挙げられますが、株価が崩落すれば連れて原油などのエネルギー価格も下がります。
一方で、どんな不景気期であっても食べ物の値段は下がらないことは、歴史的経験則で確定していることも事実です。
つまり、鉱工業生産の不調によってエネルギー価格は下がる可能性がありますが、食糧、特に穀物価格は需要が増大したままなので下がりません。
仮に穀物価格も株価の崩落と合わせて多少は下がるでしょうが、回復するのは早いわけです。
また、当コラムの主眼でもある金にも同様のことが言えます。
おそらく大急落をして、また元の値段に戻ることになるでしょう。
この記事のまとめ
今回の記事では、世界経済トップ4の中で、今後の世界経済のけん引役になれる可能性があるのは中国のみ。
これに対してアメリカなどが舵取りを間違え、世界経済が不景気にでもなれば、騒動や戦争が拡大する恐れが。
また、鉱工業の不調からエネルギー価格が下る可能性はあるが、過去の事例からも食糧価格が下がることはないだろう。
基本的には金も買いという方針に変更はないが、大急落の可能性もきちんと念頭に置くべき!
こういう内容の記事でした。