日本銀行が金融政策決定会合でのYCCの変更、解除の可能性を否定したことで、7月21日の外国為替市場では、ドル円レートが大きく円安に行きました。この円安が続くか否かによって、円建て金相場の方向性も変わってきます。
この記事の要約
今回の記事では、今回の日銀の金融政策決定会合では行わない、という内部情報が表に出たことの影響について解説。
これによって、ファンドは売っていた国債を一気に買い戻して金利が下がり、結果、ドル円相場は戻るというかたちに。
30年近くにわたって「ゼロ」金利を経験している日本人には、金利は動かない、という認識がある。
ゆえに今回、10年物の金利が0.41から0.48まで、わずか0.7ポイントの上昇が1円以上ドル円レートを動かした。
1円の値動きで、円建て金価格は50円以上の値幅の変動に。
植田日銀総裁が4月に、「YCCは1年半の検証を経てから変更や撤廃を検討する」と言明している以上、1年半はYCCは維持されるはずだが、油断大敵であることを肝に銘じるべし。
では、見ていきましょう。
日本の金利とドル円レートの変動
ドル円レートを計算式で表すと「ドル÷円」になり、今回の7月21日の円安は、主にこの分母の「円」の値が小さくなったことによって起こりました。
その解答は、以下の7月18日から22日までの1週間の日本国債10年物金利利回りの推移にあります。

円の計算とは「円×金利」で、上記は後ろの項目、金利を説明したものになります。
ご覧のように、21日にかけて金利が大きく下落しました。
これは、7月28日の日銀金融政策決定会合でYCCを変更しない、という日銀からのリーク記事が出たことによります。
下記は、前出の金利に緑線でドル円を加えたグラフです。

「動かない」と一般的に言われる日本金利ですが、ドル円レートの動きを見ていると、金利の上下動によって大きく動いていることがわかるでしょう。
YCCとは何か?

今回の円安は、「YCC解除はしない」という日銀内部のリーク報道によって起こりました。
YCCとは、イールド・カーブ・コントロールの略で、日本語に訳すと金利サヤ統制になります。
ただ、これでは意味がわからないので、もう少し踏み込んでみましょう。
金利とは、預金をしても借金をしても付与、追加されることはご存知でしょう。
その基準は大抵1年物で、日銀はこの1年物の誘導目標を「ゼロ」としています。
対して、長期物の金利の誘導目標を「マイナス0.5を上限」としています。
しかし、このかたちは非常におかしなことです。
なぜなら、お金を貸す側からすれば、1年先でも見通しが立たないのに、10年後に返ってくる見通しなどもっとわからず、本来は1年よりも10年の方が金利が高くなるのが自然になるからです。
しかし、直近の投資は潤沢にあっても将来を見通した長期の投資が少ないので、日銀はこのような政策を取っているのです。
リーク報道の影響

すなわち日銀の判断は、長期投資が少ないから日本経済が低迷している、というものになります。
このYCCを解除して、例えば1年物の金利を1%、10年物は10%という「短期金利<長期金利」のかたちにすれば、自然の理に敵った金利になります。
そこでファンドは、国債を売って長期金利のYCC解除、つまりは金利上昇にかけていました。
ところが、今回の金融政策決定会合では行わない、という内部情報が表に出たことによって、ファンドは売っていた国債を一気に買い戻して金利が下がる、金利が下がればドル円相場は戻る、というかたちになったのです。
円金利がわずかでも動くと…
このような短期的な問題を大げさに取り上げることに違和感を覚える人も多いのではないでしょうか。
そこで円建て金相場の価格構成要因を確認しましょう。
【1】円
【2】円金利
【3】GDP(国内総生産)
+需給
私たち日本人は、30年近くにわたって「ゼロ」金利を経験しており、上記の【2】金利は動かないもの、という認識があります。
今回の場合、0.48の10年物の金利が0.41まで、わずか0.7ポイントの動きが1円以上ドル円レートを動かしたことに注目です。
1円の値動きで、円建ての金価格は50円以上の値幅の変動になります。
その計算式は、
2000ドル÷31.1035×140円=9002円
2000ドル÷31.1035×141円=9066円
ドル建て金価格が2000ドルで動かず、為替レートが140円から141円になるだけで、64円も値段が変わるのです。
YCCは撤廃されるか?

2023年4月の会見で植田日銀総裁は「YCCは1年半の検証を経てから変更や撤廃を検討する」と言明しています。
つまり就任から3ヵ月で変更、廃止など考えられないのですが、現実にこの変更廃止という思惑で為替相場が動いているのですから侮れない、ということです。
これが投機筋の言う通り本当に変更、廃止になった場合、金の円建てマーケットがグチャグチャに動く恐れがあります。
常識的に考えれば、新総裁が「1年半」と言った以上、1年半はYCCは維持されるはずでしょう。
ただし、そう決めつけてかかった場合、おかしな話になる可能性もなくはないことを肝に銘じておくべきです。
















