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アメリカが9月から金融緩和を拡大したことから、ドル高からドル安になる予定でした。
しかし、現実にはドル安になっていません。
今回はその解説と、今後の金相場の展望をテクニカル分析で見ていきます。
金融緩和でドル安は間違いだった!?
9月に入り、アメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)は緩和姿勢を強めています。
下記のグラフはFRBのバランスシートであり、これが拡大すれば金融緩和が拡大していることを意味します。

実際に8月15日から金融緩和を大幅に拡大していることがわかります。
金融緩和とはドルの供給を増やすことなので、本来なら需給の関係からドルは下落するはずです。
では、ここにドルの価値を示すドルインデックスを黒い点線の折れ線で重ねてみましょう。

8月15日の辺りに緩和量が増えてから一時的にドルは下落しましたが、9月2日に過去最大の金融緩和を行ってからは逆に上昇しています。
株式相場の格言に「需給はすべてに優先する」とあるくらいに重要なことなのに、「なぜ?」と思うのが普通でしょう。
背景にある金融緩和のシステムを知る

実は、金融緩和のシステムをよく理解していないと、この金融緩和を行うとドル安という訳は理解できません。
では、簡単に解説していきます。
まず、今回のコロナ禍のように危機が起こった際に、中央銀行は市中に現金をばらまく決断をします。
具体的には、民間の銀行が抱える国債を買い取ることで資金を潤沢にさせる方策であり、これを国債買取オペレーション(買いオペ)と言います。
なぜ民間銀行の抱える国債を買い取るかといえば、危機が起こると企業も市民も万が一に備えて十分なキャッシュを確保しようとするからです。
その中には株式や金を購入した資金もあり、それらを一斉に手仕舞いするので、マーケットは急落するのです。
銀行は皆さんから預金を集め、有利子で貸し出すことによって商売が成り立ちます。
ところが危機の際には人々が手元に現金を集めるので、銀行は融資するお金が不足し、融資を求められても貸すに貸せない状態に陥ります。
そこで、中央銀行は民間銀行の保有する国債を買い取ってそれを現金化することによって、融資を実行できるような状態にするのです。
これが金融緩和のシステムになります。
銀行はお金があっても貸す相手がいない状況
通常、中央銀行が金融緩和を拡大すると民間銀行は融資実行が伸びるので、バランスシートが縮小するはずですが、実際はどうなっているのでしょうか?
下記のグラフは、FRBではなく民間銀行全体のバランスシートです。

なんと今回の場合、8月22日現在でFRBの金融緩和が実行されてもさらにバランスシートが拡大するという悪循環になっています。
つまり今の状況は、銀行には潤沢にお金はあり、融資をする気満々ですが、その融資を申し込む企業が少ない、ないしは融資をしたいけれど財務状況が悪すぎて融資ができない状況に陥っているのです。
すなわち、銀行はお金を貸したくても貸す相手がいないのです。
ゆるふん状態でお金の使い手がいないと…

通貨発行量という基準では需給はユルユルのゆるふんですが、実際に使う人がいなければどうなるのか?
経済は皆がお金を使うから回り、反対に皆がお金を使わないと不景気に陥ります。
現状は、労働者の賃金はコロナショック以降どんどん上昇していき所得は増大し、企業は融資を受けたければ銀行が通してくれます。
にもかかわらず審査を受けない状態です。
つまり、お金がないから使わないのではなく、お金があるのに消費行動や企業においては新規事業を新設しない、最悪の経済パターンになります。
なぜ最悪なのかと言えば、不景気であれば景気が回復すれば消費は戻ってくるでしょうが、お金があるのに消費をしない場合はその理由がわからないので、企業は新製品の導入や増産をどうなれば増やしていいのかわからないからです。
この原因

この原因を推測すると、新型コロナウイルスの変異株であるデルタ株の蔓延が考えられるかも知れません。
デルタ株が怖いからなるべく外に出ない、消費を控えよう、企業は新製品や商品を増産しても売れないから増産をしないでおこうという判断なのでしょう。
ですから、不透明な状況の中で融資を受けるという猛者はなかなかいない、ゆえに民間銀行のバランスシートは拡大していくという状態なのです。
使われないからドルが高くなる

FRBがお金をばらまいているのは、お金を使ってほしいからです。
しかもそのお金のばらまきが時間の経過とともに拡大しています。
しかしそのお金は使われないのですから、内部留保や預貯金になっていきます。
すなわち今、死に金の量が増えているのです。
数値でのお金の供給量は増えていても、実際に使われるお金は減っている、すなわち実質のドルの需給はタイトになっているということなのです。
ゆえにFRBがいくらドルを供給しても、ドルは上昇するということになります。
テクニカルで見る金相場のゆくえ
金相場のゆくえは文章で説明するよりチャートを見た方が早いでしょう。
下記はドル建て金の日足で、いつものように短期線から10-15、30-35、100-150、300-350を描画しています。

10と30と100の線は集合していますが、注目すべきは最大の長期線の300-350です。
今まで等間隔に開いて上昇していましたが、間隔が狭まり、上を向いていた黄色い線が横ばいになってきています。
以前から、金が急落するときはこの300-350の線の動向と言っていた通りです。
つまり、この線が上向きから横ばいになり、等間隔に開いていた間隔が狭まって、下向きになろうとしているのです。
これが売りのシグナルになるときには、一番上の300の線がその次の310の線とデッドクロスします。
そうなってくると、金は売りのサインが長期線の上でも出てくるのです。
ほかの線は集合をしていますので、ここから上にいくのか下に行くのかを見極めればいいのです。
ファンダメンタルズで考えれれば、ドル高になっているのですから金は下方向と論じることができます。
この記事のまとめ
今回の記事では、いくらFRBが金融緩和で市場にドルを供給してもドルの価格が下がらないのは、デルタ株の蔓延を背景に消費者が消費を控える傾向にあり、ドルが死に金とっているので実質的にドルの受給がタイトな状態と同じになっているからということを説明。
また、ドル相場をテクニカル分析で見ると売りのシグナルが出る前段階のような状況で、ファンダメンタルズ的にもドル高ゆえに金は下方向。
猫の目のような金相場であるが、大事なことはドルの方向性をしっかりと見定めること!
こういう内容の記事でした。















