目次
ドル建てで2500ドルを超えた金価格。しかし、これを警戒しなければいけない理由があるのです。
この記事の要約
今回の記事では、現在の金高騰は、これから下落へと転じる徴候が多々あることを明るみにします。
- ドルと金価格の関係に生じている変化とは?
- 金価格を支える中国やインドといった新興国の金買いの現状と今後の展望は?
- 9月以降のドルと金利の展望から見える金価格下落の徴候とは?
では、見ていきましょう。
米ドルと金価格の関係に変化が?
下記は、金の価格構成要因の一つであるドルの価値を示すドルインデックス(青線)とドル建て金価格(緑線)の1年間の関係を表したグラフです。
この7月からドルインデックスが異常に下がっており、セオリーどおりなら金価格は急上昇するはずがそれほど上昇していません。
次に、青線のドルインデックス(左軸)を反転させて見てみましょう。
ドル安・金利安に金価格が反応していないことが如実に見て取れるでしょう。
背景にあるのは新興国の金買いか?
新興国の中央銀行の金買い付け、特に中国の金需要が金の需給を引き締めた結果、2024年前半までは、ドルがそれほど安くなくても金価格は高騰しました。
その中国の準備金の推移は以下のようになっています。
中国は準備金を2023年あたりから急速に増やしてきており、今までは前期よりもより多くの金を購入したために需給が引き締まっていました。
しかし、2024年4〜6月期の金買付け量は前期並みであり、今回は中国の金買いにより需給が引き締まったわけではないことがわかります。
急増するインドの準備金の影響は?
次に、ここのところ急増しているインドの準備金の推移を見てみましょう。
中国とは違い、前期と比べても量が増えているので、需給の引き締め効果がある可能性があります。
しかし右軸の買付量を見てみると、中国とインドでは雲泥の差があり、その影響力は限られたものであることがわかるでしょう。
イエレン発言と新興国の金需要
結論から言えば、新興国の金の買付量は増えないと推測されます。
世間ではFRB(連邦準備制度理事会)の利下げが取り沙汰されていますが、今年7月のG20でイエレン米財務長官が「アメリカが強いドルをコミットしている」と表明したことがその理由です。
つまり世界に向けて、今年1年間は強いドルを維持すると約束したからです。
準備金は外貨準備の資金源の一つであり、外貨準備とは、自国通貨が海外に流出した際に通貨安が見込まれるため、自国通貨を守るための保険のような資金になります。
ほとんどの国は外貨準備をドルで保有し、日本の場合ならそのドルを売って円を買い戻すかたちを取ります。
その構成要素の中に金もあるのです。
今回の場合、イエレン財務長官がドルを強くすると宣言しているので、中国やインドをはじめ新興国の外貨準備(ドル)の価値は上昇していくことを意味します。
これにより、もはや金の外貨準備を増やす必要がなくなるのです。
ドルと金利から見る9月以降の金価格の展望
下記のグラフは、ドルインデックス(青線)と米国債10年物利回り(緑線)の1年間の関係になります。
大前提としてマーケットは、前年同月同日比を基準に現在どのくらい変わったかによって推移します。
そこに需給やGDP(国内総生産)などの要因が加わるのです。
2023年の9月はドルインデックスも金利も急騰しており、これは今年もこれから金利とドルが上昇することを示します。
ドル高・金利高は金価格の下落要因です。
その上に、今まで金価格をけん引していた新興国による買付も期待できず、ETFの金買いも高金利であれば減るのがセオリーです。
もはや今後、金を買う理由などどこにもないと言えるでしょう。
円建て金価格はどうなる?
一方で円建ての金価格は、ドル高になれば基本的には円安になるので、もう一度新値を更新するかもしれません。
ただし、円建ての価格は最終的にはドル建てに合わせてくる傾向があるので、超えても一時的である可能性の方が高いということになります。
結論としてはドル建て同様、ドル安・金利安になるのを待たないと金は買えないということになるのです。
この記事のまとめ
以上、ドルインデックスが急下降中にもかかわらず、金価格はそれほど上昇していないというセオリーに反した動き。
さらにドル高・金利高が予想される中、新興国の金の買付もETFの金買いも期待できないという展望。
特に例年通り今年の10〜11月までは金利高になる見込みであることを鑑みれば、今の金の高値は下落を警戒すべき状況にあるということ。
という内容の記事でした。