当コラムでは一貫して「もうじき金は安くなる」と主張していますが、金価格は上昇中。今回は金利との関係を土台に金価格を考えます。
この記事の要約
今回の記事では金価格と金利の関係を土台に、世界経済の今後を考えながら金の展望を探る。
- 金投資の最大の弱点とは?
- 金利と金価格の歴史的な関係とは?
- 日米中の景気を取り巻く経済指標の現状と展望は?
では、見ていきましょう。
金投資の弱点としての金利

他の金融商品には配当や金利が付与されますが、金投資の致命的な欠陥は金利や配当が付かない点です。
もちろん、金利以上に価格が上昇すればメリットはあります。
現在がその状況であり、新興国の中銀が金の保有を増やすのは、こうしたメリットがあるからです。
この価格が一転下がるようになると、誰が保有するのかという話になります。
ゆえに金の下げは強烈で、逃げ場がない結果となる可能性が非常に高いのです。
先物でヘッジする方法もありますが、先物には期限があることを忘れないでください。
金利と金価格の歴史的な関係
以下のグラフは、青線が米国債10年物利回り(右軸)、緑線がドル建て金価格(左軸)の推移になります。

金利が5%を切ると金価格は大きく上昇していることがわかります。
1980年代初頭には今と同様に金高と金利高の並走状態がありました。
このような特殊な状況を除けば金と金利は反相関、すなわち金利が低下すると金価格が上昇、反対もまた同じ関係になります。
1970年後半から何が起こったのかといえば、ベトナム戦争の厭戦と実質的な敗退に伴い、予算の過大消費によるドル安からの石油ショックです。
現状と同じように恒常的なインフレが起こりました。
この時、世界経済をけん引したのは高度成長時代だった日本でした。
つまりインフレによって経済が拡大していたために金価格も上昇したのです。
ところが家計がインフレに追い付かなくなると一気に景気が悪くなり、経済も縮小した結果、金も急落しました。
金価格の今後を占う世界経済の展望は?

現在はインフレで生活はかなり苦しくなってきていますが、給与が上がる見込みがまだあるので景気も拡大している状況です。
アメリカは好調ですが物価高で消費に陰りが見え、企業の生産の前哨戦でもある設備投資が減額してきています。
企業が儲かっているのに設備投資をしないのは、景気後退を示す予兆でしょう。
物価が上がるインフレは、経済にとっては基本的に成長を促すカンフル剤になります。
しかしインフレが行き過ぎると、一般的には高過ぎて買えない状態に陥り、だんだんと経済が後退していく段階に入ります。
おそらくアメリカの景気は、近々後退期に入るでしょう。
日本はようやく企業の設備投資が回復してきており、おそらく4月以降には給与の上昇によって個人消費も回復してくると思われます。
しかし頼みの中国は、旧正月の大連休を挟んでどう転ぶかわかりません。
この記事のまとめ
以上、金価格は新値近辺で「3000ドルもあり得る」と騒がれていますが、この価格は勘違いだと考えられるということ。
経済が好調のままで進行するとは到底思えない経済指標が相次いでいるのが現実。
金投資の最大の欠点は、金利や配当が付かないこと。
金価格が一転して下がるようなことになると、強烈な下げとなり、逃げ場がなくなる可能性が高い!
今こそ要注意、という内容の記事でした。