目次
このところ、アメリカの金融不安をきっかけに米経済が景気後退期に入ったという議論が起こっています。
金やその他の貴金属、宝飾品にとってもアメリカの景気は重要なことです。
この記事の要約
今回の記事では、まず不景気の経済的根拠とは株価の減少を指す。
一般の金融アナリストの主張は、金融不安で中小零細銀行の貸し出しが細るがために、景気が後退していくというもの。
また、その理由に失業者の増加を挙げるが、これはまだ目に見えて増えていない。
実際の株価はこのところ去年の9〜11月と比較して上昇しているのだから、むしろ景気は良いという結論になる。
そして、ドルと需給、景気の動向を鑑みれば、少なくとも6月まで、ないしは5月2日のISM製造業指数が上昇するまでは金価格は高いということになる。
では、その検証を行っていきましょう。
景気後退の意味と株価

一般的に景気後退とは、ほとんどの国民に以前と比較して生活が苦しくなったという感覚が共有された時に使う言葉でしょう。
しかしこれは、ここで言う不景気(リセッション)とは違う意味です。
経済学で言えば、株価が下がることを指し、その意味はGDP(国内総生産)の低下になります。
ほとんどの人の感覚では、GDPと株価は別でしょうが、実際は「GDP=株価」です。
なぜなら、GDPと株価の統計値は一緒だからです。
GDPの統計とは経済の三主体、政府・企業・家計の分析ではなく、企業が発表する数字の集積体から国民生活を推測することで成り立っています。
GDPの7割を占めるのは個人消費と一般に言われますが、国民一人一人を短期間で分析することは困難であり、圧倒的に数が少ない企業の分析にならざるを得ないのです。
例えば、スマホの販売台数を国民一人一人に聞くより、企業のスマホの出荷台数を調査した方が圧倒的に手間暇が少なく、個別の単価平均も算出しやすいのはわかるでしょう。
そして、上場企業の業績の集合体が株価になるわけで、その株価が下がれば国家全体の景気が悪い、という意味になります。
ゆえに経済学では、不景気と株価の減少はイコールの関係にあるのです。
アメリカの金融アナリストがここのところ一斉に騒いでいる、金融不安を発端にした景気の悪化とは、「株価が下がる」という意味になります。
アメリカの景気の実態
世のほとんどの金融アナリストは、金融不安で中小零細銀行の貸し出しが細るがために、今後景気は後退していくだろうと言っています。
中小零細の金融機関が貸し出しを絞れば、儲かる見込みがないから地域経済の雇用は弱り、経済は縮小していきます。
一見正しい言説に聞こえますが、実は正しくはありません。
それを検証していきましょう。
雇用の減少とは、失業者の増加と同義です。
では、その失業者の動向、すなわち失業保険申請者数の動向はどうでしょうか。

SVB(シリコンバレー銀行)の破綻が3月10日で、その前後から失業者が増え始めています。
では、この失業者増加の原因は何でしょうか。
アメリカの景気は本当に悪くなるのか?
以下のグラフは労働参加率といい、アメリカの国民のうち何パーセントが就業、就業希望を出しているかの統計値です。

これによると、去年の12月からアメリカ人では就業者が増えていることがわかります。
アメリカの総人口が3億3000万人で、その0.1%の就業、就業希望が増えるということは、33万人増える計算になります。
つまり、就労人口が増えた分だけ失業者も増えているという予測も成り立つのです。
その証拠に、上記の労働参加率に総雇用も見ていくと、以下のようになります。

労働参加率が上昇すると総雇用も増え、さらには、

総雇用が増えると失業保険申請者数も増えるという循環が、失業者の増えた原因というのに何の違和感があるでしょうか。
アメリカの金融アナリストは景気悪化の理由に失業者の増加を挙げますが、これはまだ目に見えて増えていないことになります。
景況感指数と株価の関係
下記は、棒グラフがISM製造業指数、黒点線がダウ平均株価になります。

ISM製造業指数とは景況感指数のことで、50(左軸)を基準として好不況を示すものです。
ISM指数は株価よりも早く好不況を示し、ISM指数が下がれば株価も下がり、反対に上昇すれば株価も上昇する先行指数になります。
しかし上記のグラフでは、去年から棒線のISM指数が下がり続け、株価も下がるかと思いきや、少し下がっただけでまだ横ばい気味になっているのが確認できるでしょう。
では前の不景気の事例、つまり2020年2月のコロナショックはどうであったのかといえば、左の方に示されています。
コロナ禍によってISM指数が低下しましたが、株価は下がらず、ようやく2月になって急落しています。
金融アナリストたちは、今回もそれを踏襲すると考えているのでしょう。
不景気のはずが株価が下がらない理由

なぜ、新型コロナで経済が止まったのに株価は下がらなかったのでしょうか。
経済指標は遅れて出てくるものなので、経済が止まった結果のデータが株価に反映されなかったのが原因だと金融アナリストたちは考えているでしょう。
しかし、実際は違い、2019年に株価が下がらなかったのは、株価が上がっていなかったからになります。
急落の条件として、水が高い位置になければ下には落ちないように、株価も高い位置になかったから下がらなかったのです。
景気が悪くなっているのに、株価が下がらずに反対に上昇したのは、株価が上がっていなかったからになります。
4月25日現在のダウの状況は前年比0.53安、つまり去年よりも高くない状況では株価は下がらないわけです。
ここから金融不安によって景気が悪くなっても、株価は高い位置にないのだから下がり得ません。
ゆえに、このまま株価が前年比で30〜40%高くなったところで売られる、ということになります。
ただし、その間に自動車産業の優遇税制等を背景にISM指数が上昇してくれば、もっと株価は上昇するでしょう。
景気の良し悪しと金相場の関係
下記は青棒線がISM指数、黒点線がゴールドになります。

コロナショック前後までは、景気が悪くなると金の価格が上昇したことを確認できます。
その後は青棒線のISM指数が最高に景気が良いことを示しているのに、金は下がりません。
そして2019年後半あたりからISMが低下したので、金の価格も上昇しているのがわかるでしょう。
では、なぜこんなことが起こるのか、このグラフのISM指数をドルインデックスに置き換えると見えてきます。
緑線が金価格、青線がドルインデックスです。

青線のドルインデックスが下落すると、緑線の金価格が上昇するのがわかります。
そして、2021年くらいからドルインデックスが上昇しても金が下がりません。
反対にここ最近の金の上昇はドルインデックスの上昇によるもの、ということがわかります。
このドルの動向は、今後、債務上限問題がXデーを迎える6月までは少なくとも下落、要はドル安になります。
また、2021年の年央あたりからドルが上昇しても金の価格が下がらないのは、今までも何度も説明したように需給ということがわかるでしょう。
需要が供給を上回っているので下がらないのです。
2022年の9月くらいから株価が下がっているのですが、景気が悪くなると金の価格が上昇しているのもわかります。
現在の金高の理由と今後の展開まとめ
今の金の強気は、
【1】需給
【2】ドル安
【3】景気が悪い
を材料に上昇していることがわかります。
今後は、
【1】需要はまだ続くと思われる
【2】ドル安は債務上限が解決するまで続く
【3】株価においては景気は悪くない、しかしISMの低下を背景に景気が悪いことが支配的な見方になる
ゆえに当分の間、金の価格は上昇することになるのです。
これらの要因は白金(プラチナ)やパラジウム、ダイヤモンドでも同じです。
とりあえずは債務上限の問題が片付くか、ないしは5月2日のISM製造業指数が上昇するまでは金価格は高いという結論になります。

















