目次
緊迫するウクライナ情勢、北朝鮮のミサイル発射、イランの核開発、そして40年ぶりに物価が7%も上昇するアメリカのインフレ…。
インフレや戦争に強いとされる金ですが、値段は高値安定のまま、なぜでしょうか?
インフレとはどういう現象か?

第一次大戦後のドイツや第二次大戦後の日本では、ハイパーインフレと呼ばれる現象が起こりました。
ドイツでは、注文時にスーツケース1個分のお金で買った1杯のコーヒーが、飲んでいる最中にスーツケース2個分に値上がりしてしまったという笑えない話さえあります。
では、なぜそのようなインフレが起こったのかに焦点を当てると、ドイツも日本も終戦末期に資金不足だったので戦争に負けました。
戦費を調達できない、けれども一度起こした戦争には負けたくないことから、毎年の税収以上の借金をしてしまったのです。
しかし戦争に負けた結果、国家財政は借金まみれ。
返済不能になり、いつ潰れるのかわからない国家が発行したお金を持ちたくないのは誰でも同じでしょう。
だから国民は、株や金などの資産や食料品や日常道具まで買い集めます。
そもそも敗戦直後で物資がないので、需給の関係でそれらの値段は当然上昇します。
その上、買うモノがないのにお金を持っておきたくないという需要があるので値段が高騰し、ハイパーインフレとなったのです。
潰れそうな国家の通貨を持ちたいか?

ここで大事なことは、いつ潰れるかわからない国家が発行するお金の価値がどうなるかです。
例えばアフガニスタンの通貨を持ちたいでしょうか?
もしくは昨年クーデターで軍政に戻り、経済活動が死に体になっているミャンマーの通貨を持ちたいでしょうか?
あるいはロシアに侵攻されそうなウクライナの通貨を保有したいですか?
つまり、TVのニュースだけで見てるだけで不安になるような国家のお金は下がり続けます。
なぜなら1分・1秒でも長く持っていると価値が下がるので、現金をほかの何かに交換しようとする結果、ハイパーインフレが起こるのです。
現状の円の価値はどうなっている?

現状は、コロナによる金融緩和によってお金の価値が縮小しています。
ドル円はコロナ前も今も110円前後だから変わっていないじゃないか、と思われる方もいるでしょう。
このドル円レートとはドルに対する円の価値、つまり1ドルを買うのに110円のお金が必要というレートで、そのほかの商品や金などと比較した価値ではありません。
ドルに対する円の価値は安定していても、モノを買う価値は変動している可能性があります。
日本は物価上昇率2%を掲げていますが、最近は前年比でマイナスになりそうな勢いで物価が下がっています。
これは、お金の価値が増しているという意味です。
反対にアメリカは年7%の物価上昇ということは、ドルの価値が7%減っているという意味になります。
ドルの価値とレートの矛盾

物価上昇とはインフレという意味で、ドルの価値が減っているということは金の価値が上昇していることを意味します。
つまりドルの価値は物価から見ると減っているはずなのに、昨今のドルレートは年初から現在(1/28現在)1.3%、去年と比較しても6.5%上昇しています。
これだけドルが上昇すれば通常のマーケットであれば金の価格は下がりますが、実際には横ばいです。
日本は物価がマイナスになりそうな勢いなので、円の価値が上昇していることになりますが、ドル円レートは反対に112円から115円くらいまで円安になっています。
つまり実際はドル円レートがドルに対する価値、ドルインデックスはさまざまな通貨のドルレートを100とした場合の価値を表現しただけのレートなのです。
現金と商品の相対的価値を示すデータが存在しないので、こんなおかしなことが起こっているのです。
金融緩和と2種類の現金の違い
以前、金融緩和とはお金の量を増やすことではないということを解説しました。
https://kinkaimasu.jp/lounge/2021/12/21/the_relationship_between_the_true_meaning_of_helicopter_money_and_the_gold_market/
単刀直入に金融緩和を説明すると、お金の量は増えないが、使えるお金を増やす施策になります。
つまり株式の固定株主と浮動株主の違いのようなものです。
固定株主とは、出資したオーナーや利害関係者が保有している株主のことを指し、余程のことがない限り保有株を売却しません。
ところが浮動株主とは、いつかは売却することを目的に株式を保有してます。
例えば現金や預貯金をたくさん持っている人がいますが、彼らは貯めることが目的で、何かが欲しいから現金を持っているのではありません。
そういう人が安易にお金を使うかといえば別問題です。
一方で浪費家の人は徹底的に浪費します。
このように現金にも2種類があり、こういった経済の危機には中央銀行がコントロールをして浮動する現金を多くしようという試みが金融緩和なのです。
現状の現金や金の価値はどうなのか?

冒頭で戦後ドイツのコーヒー1杯の話をしましたが、使えるお金が日を追うごとに増えるということは、現金の価値もそれに伴い下がることを意味します。
それが金融緩和の効果であり、逆に株価や金は上昇します。
この買う原資は現金を売却して、株式や金を買うという行為になるわけです。
だから金融緩和を行うと金や株は買い、になるのです。
しかし今、その前提条件が崩れています。
すなわち1月28日のFOMC(連邦公開市場委員会)でFRB(連邦準備理事会)パウエル議長は、近い将来に金融緩和をやめて金融引き締めを行うと明言しました。
その時期はどう考えても3月だろう、というのがメディアや専門家の主張です。
先の金融緩和の影響を考えると、現金を売却して株式や金などのリスク資産を購入するという行動を人々に起こさせました。
今度は金や株式を売却して現金を購入する、という行動に変化するのです。
この結果起こることは現金の値上がりであり、株式や金の値下がりなのです。
2020月2月にコロナショックが起こり、3月から世界の中央銀行は金融緩和を開始しましたが、2022年3月にはその金融緩和を止めます。
だったらまだ1月だけど、FRBが3月には始めるのだから株や金の価格がそれを受けて売られた、これが現状です。
ドルが上昇を始めたのに金が下がらないのはなぜ?
材料的には、ロシアがウクライナに侵攻しようとして石油をはじめエネルギー価格が高くなっています。
パウエル議長が金融緩和を3月には止める可能性があると言及してドルが高くなっているのに、原油やそのほかの天然ガスの価格は上昇しているのです。
原油などのエネルギー価格は、通常はドルにリンクしており、ドルの値段が上昇すればエネルギーや金価格は下がるものです。
しかしエネルギーも金の価格もさえない展開で、価格は歴史上で言えば高い部類に入っています。
つまり当コラムで言うドルが上昇すれば金の価格は下がるという法則が機能しなくなっているのです。
その要因として1番最初に挙げたのは、ビットコイン買い-金売りのストラドルの解消です。
https://kinkaimasu.jp/lounge/2022/02/04/the_stock_market_has_fallen_but_gold_has_risen_verify_this_mysterious_move/
そして2番目に挙げられるのは今回のインフレになります。
金融緩和を停止したのでドルの価値が上昇しているのに金は下がらない、これはどういうことなのかということです。
結局、エネルギーに関してはロシアやイラン、北朝鮮、台湾などで軍事的緊張が高まっていることが挙げられるでしょう。
飛行機だろうが戦車だろうが、動かすのにはエネルギーが必要で、その需要が高まることも要因でしょう。
最大の原因は需給、すなわち中国の爆買い
一番大きい原因は需給でしょう。
以前ご紹介しましたが、中国がエネルギーや穀物を買い漁っていることが問題なのです。
https://kinkaimasu.jp/lounge/2022/01/20/chinas_bombing_and_causes_behind_inflation/
これは円高当時、日本が大バブルだった際にロックフェラーセンターやコロンビア映画を買収したのと同じで、元高を背景に世界中の資産や資源を買い漁っているのです。
つまり、製品になっているエネルギーや金、出物があれば中国がすべて買い漁るので、地球上にある金や原油が品薄になる、必要な人は大金を積んでも買う、必要ではない人は買うのをあきらめるという動きが顕在化しています。
結果としてドル高でもエネルギー価格が高止まりし、それがロシアとアメリカの対立につながっているのです。
何が言いたいかといえば、金融緩和を止めても、中国の爆買いが続く限りドルが高くても商品高は続くということになります。
ただ金に関しては、有史以前から人類に使われており、実際にいくらの量の金が地球上にあるかはわからないので、ドルや金利の高低によって売買されています。
ゆえに下がりやすいのですが、エネルギーなどのように中国の爆買いによって、高騰する可能性もあるのです。
「戦争に強い金」はどうか?

次に戦争に強い金を検証してみましょう。
かつての戦争では、飛行機や戦車などの投入量が勝敗を決しました。
例えば、お給料が一般会社員並みの25万円くらいであなたは軍人になりますか?
つまり戦争には莫大な費用がかかります。
ところが広島、長崎に原爆が投下されたことを境に、現代戦争は人や戦車がいらなくなりました。
その象徴が、アルカイダ幹部の殺害に成功した無人偵察機のドローン攻撃です。
ビンラディンを殺害するのに兵士100人とドローン、どちらのコストがお得かは言うまでもないでしょう。
兵士が死亡すれば遺族保険も発生しますし、体が不自由になれば一生にわたって保証しなければなりません。
1992年の湾岸戦争でも金の価格が上昇したのは開戦初日だけ、その後やストップ安の連続で売り注文は一切入らなくなったという事態になります。
そもそも、かつてベトナム戦争によってニクソンショックや金の売買停止などの財政苦難を経験しているアメリカは、費用のかかる戦争など起こしません。
つまり戦争に強い金は、戦費が莫大だった過去の話になっているのです。
金の価格構成要因は変化したのか?
基本的な金の価格構成要因、
【1】ドル
【2】金利
【3】GDP(国内総生産)
が変わったと思いません。
ただ原油やガスのように100円売り-120円買いの板があったとしても、120円買いで買い物が出ているとそれを中国がすべて買ってしまうのです。
これはドル円ですが、ガソリン1リッター200円の売り出しがあったとしても中国は出物があればすべて買ってしまうのです。
日本人や欧米人は相場が170円程度と知っているので躊躇しているところを、中国は相場など関係なく購入するからマーケットから売り物が消える、これが今回のインフレの真相だと考えます。
金価格もそういう状態になれば際限なく上昇する可能性があり、原油やガスの価格もまだまだ上昇すると言っているのです。
この記事のまとめ

今回の記事では、「インフレに強い金」と「戦争に強い金」という2つの格言について考察。
前者については、現在のインフレの主要因は元高を背景にした中国による金やエネルギーをはじめとする資源の爆買いであり、本来ならドル高を背景に金は下がりやすいはずなのだが、需給の側面から高騰する可能性を秘めている。
後者については、動員兵力や兵器の物量によって勝敗が左右されたかつての戦争と比べ、現代戦はすなわちテクノロジー戦であり、そこまでお金がかからなくなっている。
つまり「戦争に強い金」は過去の話と言えるということ。
こういう内容の記事でした。















