今回は、世間を賑わしている米トランプ関税の基本と金価格への影響について取り上げます。
この記事の要約
今回の記事では、前回の「今改めて金の本質的な価値を考えよう!」の内容を踏まえた上で、トランプ関税の基本と金価格への影響を解説。
- 世間で言われているようにトランプ関税は世界の貿易量や物価に影響するか?
- そもそもトランプ関税の本質とは何であるのか?
- トランプ関税が成功した場合に考えられる金価格への影響、2つのケースとは?
では、始めましょう。
関税は本当に貿易量に影響するか?
高率の関税をかけると世界貿易が衰退し、インフレになるというのが世間の認識です。
前回のトランプ政権が鉄鋼アルミなどに関税をかけた際にも盛んに言われました。
では、実際のアメリカの輸入量のデータを見てみましょう。

前トランプ政権の発足は2017年からですが、その間、輸入量は減るどころか上昇しています。
今回は全品目に高率の関税が課されますが、アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長は「対米貿易が減らないだろう」と言っています。
「極端な保護主義によって世界貿易が低調になる」と世界のメディアやIMF(国際通貨基金)、OECD(経済協力開発機構)が主張していますが、実際はそんなことにはならないというのがデータの示すところなのです。
関税はインフレを引き起こすのか?
次に輸入物価を見てみましょう。

2017年から関税を課した後、物価は上昇しています。
しかし、この輸入物価にグレーの線でCPI(インフレ率)を加えてみましょう。

輸入物価も上昇していますが、インフレ率も上昇しています。
つまり輸入物価が上昇したからインフレ率が上昇したのではなく、物価が上昇したから輸入物価も上昇したと説明した方がしっくりくるかたちです。
この点に関してFRBのパウエル議長は、「関税の付加が高率だったのは驚きだが、この関税でもアメリカに与えるインフレ率の高騰は短いスパンであろう」とコメントしています。
やはり世間のコンセンサスに反して、データからもFRBの見解からも、物価への影響はほとんどないと考えられるのです。
米貿易赤字は国家非常事態?
さて、冒頭に挙げたアメリカの輸入量の推移を見ると、バイデン政権以後に激増していることがわかるでしょう。
2020年はコロナ禍なので貿易量が停滞するのは理解できますが、問題はその後、輸入量が1.5倍にまで膨らみました。
これに対してアメリカの貿易赤字を見てみましょう。

過去最大になっています。
これは、輸出に対して輸入が上回っており、アメリカ国内から資金が流失することを意味します。
つまりこのまま貿易赤字を拡大させれば、将来的に国家予算が成り立たなくなってしまうのです。
アメリカは同盟国に対してこの貿易赤字の穴埋めに、安全保障の見返りとして米国債の購入を求めています。
ところがアメリカと対立する中国やロシア、北朝鮮などは米国債を購入する必要などありません。
結果、必然的に貿易赤字が拡大し、米国債の購入は減っていくことになります。
つまりトランプ関税は、将来的な資金の海外流失を防ぐために行われているのです。
世界経済はアメリカに依存しているわけですから、むしろ将来への保険料と捉えれば、トランプ関税の見方も変わってくるでしょう。
トランプ関税の金価格への影響

以前、現在の金価格の高騰は中国の金購入によるものだと解説しました。
中国側としては、債務が多く影響力の低下が懸念される米国債よりも、毎年上昇する金の方がよいという判断があるのでしょう。
アメリカが今回の大規模な関税によって税収を確保した場合、まずは巨額の債務が減額されます。
つまり収入増になって、毎年の恒例行事になりつつある債務上限問題が解消することでしょう。
その先に待つのはアメリカの復権です。
金が新値を更新しているのは、結局、基軸通貨であるドルを筆頭にお金の価値が低下したためであることを前回のコラムで解説しました。
トランプ関税が成功した場合、このドルの価値が上昇するでしょう。
そうなれば金は売りになります。
まだ切っていないトランプのカード

一方でトランプ政権には、まだ切っていないカードがあります。
それは就任前にウワサされた財政緩和です。
トランプ関税が成功した場合、大きく予算を拡大する可能性も否定できません。
現在はG7によってドル安が維持されていますが、さらにドル安になる可能性も高いということになります。
つまり今までは金の一方的な高さですが、トランプ関税の成否次第では相場が乱高下する可能性もあることに注意が必要です。
この記事のまとめ
以上、トランプ関税問題とはつまるところアメリカの債務問題。
そして世間では世界貿易の停滞や物価上昇を懸念する声が上がるが、過去のデータなどを踏まえると、影響はほとんどないと考えられる。
金の目先は、中国買いやドル安で買い。
しかし、このトランプ関税が成功した場合には財政緩和の可能性もあるので要注意になります。

















